医療法人社団三医会 鶴川記念病院
(東京都 町田市)
舩津 到 病院長
最終更新日:2023/04/18
地域が求める多機能な慢性期医療を目標に
2010年に新築移転により誕生した「鶴川記念病院」は、地域に根差した医療・介護サービスを提供する医療法人社団三医会が持つ医療施設の一つ。同法人の訪問看護ステーション、デイサービス施設、鶴川リハビリテーション病院とともに、住み慣れた地域で最期まで自分らしく暮らすための医療・介護の担い手となっている。同院への入院は、中長期にわたるリハビリテーションが見込まれる患者、在宅療養中に容体が急変した患者が多くを占め、「入院の希望はできる限り断らない」ことをモットーとしている。さらに舩津到病院長は「新型コロナウイルスの感染拡大に際しては、早い時期から発熱症状に対応する外来を開設し、地域におけるワクチン接種の拠点となりました。地域に必要な医療を適宜提供することも当院の重要な役割と考えています」と話す。その背景には患者一人ひとりのことを考えて行動する、同院の姿勢があるのだという。そうした病院の理念や、在宅療養患者の支援に力を入れ、重度の患者のリハビリテーションにも取り組む診療の特徴について、舩津病院長に詳しく聞いた。(取材日2023年3月1日)
病院の特徴や地域での役割を教えてください。
当院は高齢の方をはじめ、緩やかに病気が進行する慢性期の患者さんを中心に診る病院です。特徴の一つは病床180床のうち20床ある地域包括ケア病床が、在宅療養の患者さんに緊急治療が必要なときの入院先となっている点です。治療を終え、リハビリテーションにより回復できたら、また自宅での療養にお戻りになれます。また、障害者病床100床と医療療養病床60床は、自宅や施設への復帰を目標に治療と中長期のリハビリテーションを希望される患者さんを受け入れています。加えて、在宅療養支援も重視し、当院で外来・入院の診療を担当する医師が自宅に訪問診療に伺うほか、在宅療養支援病院として24時間365日の往診・電話対応が可能な体制を整えました。同じ医療法人に訪問看護ステーション、デイサービス施設もあり、町田市東部および近隣地域での医療・介護の担い手となっています。
自宅への復帰を重視されるのはなぜでしょうか?
病院でずっと過ごされたい患者さんは多くないはずで、「可能なら自宅に戻りたい」というのが本来の希望だと考えるからです。当院はそのご希望をかなえるため、在宅療養の患者さんの入院治療と在宅復帰のサポートに力を入れています。病院からご紹介の患者さん、緊急治療が必要な在宅の患者さんをできる限り受け入れ、入院して数日以内には医師、看護師、リハビリテーションスタッフ、薬剤師などが症例検討会を開いて、退院されるまでの治療やリハビリテーションの流れを設定します。退院前には、当院の「ひまわり総合支援室」に在籍する医療ソーシャルワーカーおよび看護師が患者さんやご家族と面談を行います。社会福祉制度の利用や退院後に必要な医療措置などをご説明して、安心して自宅にお戻りいただけるよう支援しています。当院で訪問診療に伺っている患者さんなら、入院時も同じ医師が診ることもでき、退院後のサポートもスムーズだと思います。
自宅に戻るにはリハビリテーションも重要になりますね。
リハビリテーション専門職の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が患者さんの回復を支援する当院は、ご紹介元の医療機関から「リハビリテーションに力を入れる病院」と認めていただけているようです。特に当院には中長期の入院に向く病床があり、重い症状の方でも時間をかけたリハビリテーションが可能です。さらに、入院した患者さんの楽しみを増やし、栄養摂取にも役立つよう、栄養科が食材や調理法にこだわった食事をご提供します。多くの方に食事をしていただくためにリハビリテーション科と連携し、VF検査(嚥下造影検査)で患者さんの嚥下機能を調べ、安全に食べるための機能訓練、補助具の考案なども行います。食の字は「人を良くする」と書きますし、退院の支援にも役立つのではないでしょうか。
病院や先生自身の診療に対する考えをお聞かせください。
当院の診療に対する理念は「あなたとつくる(創る)医療」で、5つある行動規範はすべて「あなた」、つまり「患者さん」を基準に行動するよう定めています。その一つに「『あなた』にとって一番良いことか?と問い続けます」とあるように、職員が「患者さんにとって良い病院とは何か?」を考え、自発的に行動することが大切と考えています。これは、先進的な医療ばかり追求するのではなく、患者さん一人ひとりに適した医療を受けていただくという当院の姿勢や、私の座右の銘「己の欲せざるところ人に施すなかれ」にもつながるものです。また、必要な医療はすぐ提供しようという意味でもあり、例えば新型コロナウイルスの感染拡大時は早い時期から発熱症状を診る外来を開設し、ワクチン接種の拠点にもなりました。今ワクチンを受けられたら、発熱して受診できれば地域の人も安心できるはずだと考え、すぐに発熱の外来とワクチン接種に取り組もうと思いました。
今後はどのような展望を持たれていますか?
複数の病気が合併・併存する慢性期の患者さんを診るため、当院の医師で対応できる診療範囲を広げたいですね。とはいえ、いたずらに診療科を増やすつもりはありません。例えば訪問診療に伺った内科の医師が泌尿器科や整形外科の診断・簡単な処置も行うなど、必要な医療をまとめて提供する多機能な慢性期医療で、地域医療・在宅医療の質を向上させたいと考えています。さらに、地域の皆さんの健康寿命を延ばし、住み慣れた地域で最期まで暮らしていただけるよう、街づくり・地域づくりにも加わっていくことも大切でしょう。前述した当院の栄養科による食の公開講座、あるいはリハビリテーション科の医師やスタッフのよる健康維持のセミナーのような取り組みを今後さらに拡大したいですね。
舩津 到 病院長
1987年聖マリアンナ医科大学卒業。1997年医療法人社団三医会鶴川記念病院に入職。その後、医長、副院長を経て、2009年に病院長に就任。専門は内科全般。日本内科学会総合内科専門医。