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東京女子医科大学病院

(東京都 新宿区)

西村 勝治 病院長

最終更新日:2026/01/07

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過去と決別し、人間中心の医療で未来を創る

「人間中心」。「東京女子医科大学病院」が新たに掲げた5つのバリュー(行動指針)の1つ目に来る言葉だ。「患者」でも「職員」でもなく「人間」。職員全員から募ったパブリックコメントを通じて選ばれたその言葉からは、過去の経験と向き合った上で同院に残ることを選択し、あるべき病院の姿を模索し続ける医療者たちの真っすぐな思いが伝わってくる。医療は助けを求める人間を救うためにあり、病院は医療者がその使命を果たすための場所だ。では、どのようにその場所をつくっていくべきか。高度な医療で日本の医療をけん引してきた東京女子医科大学病院が歴史に恥じぬ誇りと信頼を取り戻すために、目を背けず、ごまかさず、諦めず、改革の旗を振る西村勝治病院長に話を聞いた。(取材日2025年11月27日)

「新生東京女子医科大学病院」として再スタートを切られました。

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2度の医療事故からの信頼回復と経営再建をめざしていた当院は、創業家一族の一強体制によるガバナンス不全によって再び社会的信用を失いました。私は精神科医師・教授として医療の前線に立っていましたが、当時の専横的な体制が教職員の心理的安全性を脅かしていたことは事実です。現場の医療者は矜持を持って患者さんと向き合っていたものの、残念ながら自由に意見を発信できる風土ではなく、現場と経営は乖離していきました。その結果、心あるたくさんの教職員、そして、過去の出来事を受けて当院を信じてくださっていた多くの患者さんが当院から離れていったのです。2024年8月に第三者委員会による調査報告が公表され、法人体制を一新する中で病院長に就任した際、まずやるべきは「病院のあるべき姿」を全員の共通認識にすることだと考えました。新たな理念のもとで生まれ変わるという決意を込めて「新生」と銘打ち、再スタートを切っています。

具体的には、どんな取り組みから着手したのでしょう。

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働く人すべてが同じ思いを持ち、取るべき行動を正しく選択できるよう、病院としての使命や価値観、体現したい病院像を言語化することから始めました。しかし、決定済みのミッションやバリューをトップダウンで伝えても、現場の心を動かすことはできません。ガバナンス不全の根本にあった権威主義的な風土を残すことにもつながります。そこで、教職員から意見を集め、一人ひとりの思いをミッション・ビジョン・バリューに落とし込んでいきました。そうしてつくり上げたのが、「社会から信頼される高度な医療を提供する大学病院として、人々の生命と健康を守ります」という理念です。私たちは今、この理念のもとで「高水準の医療安全と最新の医療を追求し、患者さん一人ひとりに最善の医療を実践することをめざします」とビジョンを掲げ、「人間中心」「高潔」「責任」「共創」「革新」という5つの行動指針に沿った再生の道を粛々と歩んでいます。

「人間中心」から、患者さんや職員への思いが伝わってきます。

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患者さんの利益を最優先し、安心・安全な医療を提供することは、働きがいのある環境の構築と表裏一体です。そこで、「患者中心」ではなく「人間中心」とし、患者さんが私たちに求めることは何かをじっくりと考えました。その一つが、紹介患者さんの受付時間延長です。これまで11時だった受付時間を14時に変更し、担当診療科が対応できない場合は総合診療部門、それも難しい場合は救命救急センターというように受け皿を連鎖させることでお断り率をゼロに近づけました。さらに、難度の高い手術にも対応できるよう、集中治療体制も再構築しています。また、救急医療においても、「SET(セカンド・エマージェンシー・チーム)」という二次救急対応チームを立ち上げ、受け入れから入院までをスムーズに行える体制を整えました。これにより、救急応需率が大幅に改善し、かかりつけ患者さんのウォークインを含めて「断らない医療」につながりつつあります。

地域に向けたイベントも開催されたそうですね。

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行動指針の「共創」を体現する取り組みとして「健康フェスタ」を開催しました。地域の中学校のブラスバンド演奏、病院のお仕事体験、医療機器体験といったさまざまな企画を通じて健康意識の向上を図るとともに、当院の存在と働く人たちの姿を広く知っていただきたいとの思いで開催したものです。当日は、多くの方に足を運んでいただきました。冒頭のあいさつで私が新院長であると知り、「先生、女子医大を頼みます」「ずっと通っていますから」と声をかけてくださる地域の方がたくさんいらして、胸が熱くなりました。会場を見渡すと、職員も本当に生き生きと、笑顔で皆さんとお話ししていて……。いろいろあっても、当院を頼りにして、ここで良い医療を受けたいと思ってくださる方がいる。ここで役割を果たしたいと思ってくれる職員がいる。この病院を必ず立て直さなければならない、と決意した瞬間でした。

今後に期待しています。最後に展望をお聞かせください。

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もともとの強みであった臓器別・疾患別の治療体制についても、横串をしっかり入れた新たな体制を模索しています。診療科を越えた連携を行うことは、優れた医師やメディカルスタッフの育成や、重い病気を持つお子さんの成長過程を総合的に支援できるなど、多くのメリットがあります。看護師を筆頭に職員の採用状況も復調しつつありますので、原点に立ち返って本質的な制度を展開していきたいですね。また私自身、これまで精神科のリエゾンチームとして、身体疾患で治療中の患者さんが抱える心の問題を診療科を越えた多職種でサポートする中で、当院で働く人の根底に共通してある温かさや思いやりに何度もふれてきました。「患者さんの気持ちを受け止め、支える」という姿勢は、高度な医療を行う大学病院だからこそ持ち続けるべきものです。患者さんが希望を持って治療に取り組めるよう、技術と心を尽くす病院でありたいと思っています。

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西村 勝治 病院長

1986年熊本大学卒業。コンサルテーション・リエゾン精神医学が専門。東京女子医科大学で精神科医師・教授を務め、2024年12月に同院病院長に就任した。患者の全人的な苦痛に多職種連携で寄り添うリエゾンチームを率いてきた経験から、「現場で働く人の医療への情熱と患者さんへの思いやりこそが、当院の最大の特徴」と話し、思い入れのある同院が本来の姿を取り戻すために力を尽くす。

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