社会医療法人 さいたま市民医療センター
(埼玉県 さいたま市西区)
塩谷 猛 院長
最終更新日:2025/10/07


ここに来れば安心と思ってもらえる病院に
「さいたま市民医療センター」は、内科や外科、小児科などの幅広い診療科と回復期リハビリテーション病床を含む340床を備える総合病院。運営は地域の4つの医師会が担っており、地域における医療の最後の砦をめざすという意識が強い。地域のクリニック等からの紹介依頼は原則断らない姿勢を貫き、住民が安心してこの地域で暮らせる一助となっている。2025年4月に院長に就任した塩谷猛(しおや・たけし)院長は、昨年秋に中堅職員とともに「こころにゆとり 踏み出せ一歩!」というスローガンを策定。忙しい日々の中でも挑戦する気持ちを忘れず、小さな一歩を積み重ねることの大切さを共有している。頼りになる「優しいお父さん」のような雰囲気を持ち、歴代院長や幹部、職員の努力によって築かれてきた病院の良き伝統を受け継ぎながら、さらなる成長と変革に挑む塩谷院長に話を聞いた。(取材日2025年8月26日)
病院の概要について伺います。

当センターは2009年に公設民営の病院として誕生しました。さいたま市が建設し、大宮・浦和・与野・岩槻の4つの医師会が共同で運営していますので、民間病院でありながら、とても公的な性格が強い存在です。ですから地域の開業医の先生からのご紹介は「まず受け入れる」という姿勢で臨んでいます。ご紹介くださる先生方からも、「いつでも受けてくれるので安心できる」と言っていただくことも多いです。当センターでの治療にめどがつけば、またかかりつけの医療機関にて、患者さんの安心できる環境でフォロー・療養できるように、逆紹介させていただいています。紹介患者の受け入れ状況については随時地域医療連携室に確認して問題がないか状況判断するようにしています。当センターは地域医療支援病院として地域とともにある病院であり続けることが使命でもあります。地域の方々から、ここに来れば安心、と思ってもらえるような存在でありたいですね。
診療面での特徴を教えてください。

当センターの内科では高い専門性を有しながらも、すべての医師が総合的な診療を実践し、幅広い疾患に対応しています。内科部長は「総合診療が横糸、専門性が縦糸」と表現し、各医師が専門領域を持ちながらも「人」を診る全人的な医療を心がけています。特に高齢の患者さんには複数の疾患を抱える方も多く、社会的背景にも配慮しながら多職種と連携し寄り添う医療を提供しています。また増加傾向にある脳卒中疾患には、脳神経外科と内科が連携して対応しており、脳卒中ケアユニットの増床も行いました。これにより、救急医療体制のさらなる充実を図っていきたいと考えています。循環器疾患にはハイケアユニットを備え、カテーテル治療に24時間体制で取り組んでいます。消化器外科では365日緊急手術が可能な体制を維持し、小児科では食物アレルギーに積極的に取り組み、経口負荷試験も安全に配慮して実施しています。
がん診療やリハビリテーションにも注力されていますね。

はい。がん診療では手術・化学療法・緩和ケアを含めた包括的な治療を提供しています。痛みなどの緩和ケアには、医師だけでなく、緩和ケアに精通した薬剤師や看護師からなる緩和ケアチームが患者さんお一人お一人と対話をし、こまやかな調整をしながら対応しています。医師には話しにくいことも丁寧に聞き取ってくれますので、患者さんも安心してケアを受けていただけているようです。リハビリテーションについては、当センターには回復期リハビリテーション病棟もありますし、退院後のケアも訪問リハビリテーションも行いながら対応しています。また今年度からは地域リハビリテーション推進室を設立し、地域に出ていって体操の指導などのリハビリテーションの啓発活動や、行政との調整など多岐にわたる活動をしています。今後も、急性期から回復期、そして社会復帰や退院後の生活まで、一貫したフォローに力を注いでまいります。
地域の救急医療や災害医療の要の存在でもありますね?

救急医療も当センターの使命の一つです。当院は二次救急医療に対応しており、総合診療部門を中心に各診療科の協力のもと、多くの救急搬送を受け入れています。また、小児救急医療にも力を入れており、さいたま市内では多数の患者さんに対応しています。そして当センターは災害拠点病院でもあり、災害時には地域医療の要として機能する責務があります。DMAT(災害派遣医療チーム)も編成していますし、新型コロナウイルスの感染拡大を機に小さな出張病院のような医療用トレーラーを2台導入しました。敷地内にありますので、ご来院の際はご覧ください。
地域の方々へのメッセージをお願いします。

私たちは地域に頼られる病院であり続けたいと思っています。患者さんにここに来れば安心だと思っていただけるような病院ですね。それとともに職員が安心して意見を言い、挑戦できる職場にしていきたいと思っています。どんなに医療技術が進んでも、医療は人が提供するものです。患者さんにはもちろんですが、仲間にも温かな気持ちで接することが、良いチームワークをつくり、良い医療の提供につながります。幸いなことに垣根の低さ、なんでも相談し合える雰囲気は当センターの特徴の一つになっています。「地域とともにある病院」として、「患者さんに選ばれる病院」として、当センターの理念である「市民の健康と命を守る」ために地域の医療機関との連携もスムーズに行いながら、一人でも多くの患者さんを受け入れ、安心して気持ち良く利用していただける病院にするために、さらに精進し続けたいと思っています。

塩谷 猛 院長
1988年日本医科大学医学部卒業、1995年同大学大学院医学研究科修了。2009年よりさいたま市民医療センターの外科にて診療。2025年4月院長就任。生粋のさいたまっ子で、生まれ育った地に医療で、「地元に恩返しできることが喜び」と話す。勤務日は朝7時頃からスタッフと言葉を交わしながら全フロア巡回。院長室のドアは常にオープンにし、スタッフがいつでも話しかけやすい雰囲気をつくっている。





