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内視鏡検査でがんの早期発見を
低侵襲の内視鏡的粘膜下層剥離術

大森赤十字病院

(東京都 大田区)

最終更新日:2022/09/12

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  • 保険診療
  • 胃がん
  • 食道がん
  • 大腸がん

2人に1人ががんになるともといわれる中、がんは早期の発見であれば治ることも見込める病気という認識が高まっている。中でも罹患者数の多い消化器がんの発見に有用とされるのが、胃や大腸の内視鏡検査だ。内視鏡検査で見つかった早期のがんは、条件をクリアすれば開腹手術をすることなく内視鏡下で治療することもできるという。その代表的な治療法である内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)だ。内視鏡の専門技術と豊富な治療経験が重要とされるESDに、一般的な症例から困難な症例まで広く対応している「大森赤十字病院」。消化器内科部長兼内視鏡部部長の千葉秀幸先生に、内視鏡検査の重要性とESDの概要について聞いた。(取材日2022年6月29日)

まずは内視鏡検査の受診を。早期の胃がんや大腸がんの多くは体への負担の少ない内視鏡下治療の対象に

Q内視鏡検査はつらいと聞きますが受けたほうがよいのでしょうか?

A

消化器内科部長兼内視鏡部部長の千葉秀幸先生

つらい、痛いというイメージが先行する内視鏡検査の苦痛をいかに少なくし、検査のハードルを下げるかということは内視鏡診療を行うすべての医師に共通する想いでしょう。今やがんは初期に見つかれば治ることが見込める病気ですが、検査を受けないことで病気の発見が遅れてしまうと適切な治療へと進めることが困難です。当院では鎮静剤を使い眠っているような状態で検査を行うなど工夫することで苦痛の少ない内視鏡検査をめざしており、最近ではクリニックでも同じような方法で検査するところが増えています。かかりつけクリニックでも当院のような病院でも構わないので、区の検診なども上手に活用し、まずは検査を受けていただきたいと思います。

Q検査によって早期にがんを発見することが重要なのですね。

A

がんの早期発見、早期治療による治癒率向上をめざしている

内視鏡治療は侵襲が小さく、治療した後も、これまでと生活を大きく変えなくても良いことがメリットの1つですが、この治療の対象になるのは基本的には早期に見つかった場合のみです。また、内視鏡検査をすると、ピロリ菌の有無やお酒やタバコの摂取による食道の状態などから、大まかではありますが、将来的に発症しそうな病気を予測することもできます。その結果を診て、通常であれば1年後に検査をするところ3ヵ月後の検査をご提案するなど、将来を見据えて今後の計画を立てることができます。当院では内視鏡を専門にする医師が内視鏡の結果全般に目を通し、気になることには迅速に対応するなど、がんの早期発見と正確な診断に尽力しています。

Q検査で病気が見つかった後の流れも知りたいです。

A

胃内視鏡や大腸内視鏡検査で、前がん病変を含めたがんを強く疑う病変を認めた場合には、拡大内視鏡や超音波内視鏡といったより精密な内視鏡カメラで病気を調べていきます。早期がんは基本的には治すことをめざします。それを低侵襲で治療するのが内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)ですが、内視鏡下でがんを取る=必ずしもがんが治るというわけではありません。内視鏡治療で完治が望めるのは、基本的には転移のないもので、臓器内にとどまらないものや今後転移リスクのあるものは対象外です。

Q消化器であればどの臓器のがんでもESDを行えますか?

A

ESDは開腹手術と比べて患者への負担が少ないという

咽頭がん、食道がん、胃がん、十二指腸がん、大腸がん、直腸がんが対象になります。基本的には転移のリスクが極めて低い粘膜内がんであれば、がんのサイズには制限のない臓器が多いです。しかしそこに潰瘍があるかやがんの質によって適用になるかどうかが変わってきます。当院では日本消化器内視鏡学会などの定めるガイドラインを基準にした絶対適用はもちろん、条件つき適用となる症例についても、患者さんの状態や年齢を鑑みて、患者さんやその家族とも相談した上でESDを行うことがあります。例えば、一見すると手術適応と考えられる症例でも、条件を満たせば胃全摘を避けられる可能性があれば、ESDをチャレンジする場合もあります。

QESDのメリットとデメリットを教えてください。

A

患部以外の病気も診る、全人的な視点での治療を心がけている

ESDは、入院期間も7日ほどと短く、また治療後1週間ほどの生活制限の後は通常どおりの生活を送れるのがメリットです。当院では安定した術後のマネジメントに力を入れて取り組み、医師や看護師によるチームで一人ひとりの患者さんをサポートしています。一方で、知っておくべき合併症もあります。治療後の出血(吐血など)、臓器に穴があくこと、広範囲の切除では胃や食道などが狭くなること(狭窄)が起こる場合があります。合併症が起こらないようにする内視鏡技術はもとより、万が一起こった場合の適切なマネジメントには、経験の豊富さも重要となります。

Q貴院のESDの強みはどういったことでしょうか?

A

専門の医師たちが高度なチーム医療に取り組んでいる

今は標準的な症例に対するESDが行える施設も増えていますが、当院では、切除術を行うのが大変というハイリスクな症例にも責任を持って治療にあたっています。これこそが僕らの真骨頂だと自負しており、全国の医療機関から患者さんをご紹介いただいています。当院では一般的には開腹手術になることが多いようながんのESDにも対応しており、技術的な理由でお断りすることは基本的にはありません。“その患者さんに最適な医療を提供したい”を共通のポリシーとし、専門的な知識・技術を持つ専属チームが、全症例に対しカンファレンスを行い、治療中や治療後の注意点などを共有するようにしていることが当院の大きな強みだと思います。

患者さんへのメッセージ

千葉 秀幸 消化器内科部長

2004年金沢大学医学部卒業。専門は消化器一般、特に消化管内視鏡の診断・治療。医学博士。日本内科学会認定総合内科専門医、日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医、日本消化器病学会認定消化器病専門医。横浜市立大学医学部非常勤講師。

がんの早期発見、治療に全力を尽くすことをモットーに、数多くの症例に対応してきました。僕たちが最後の砦になれればと思っているので、発見された早期のがんがその病院、クリニックで治療可能か判断が難しい、または治療自体が難しい場合には、セカンドオピニオンとしていつでもご相談ください。僕自身は困難な症例に対するESDも多く行っていますが、医師である以上は、目の前の早期のがんだけではなく、ほかの臓器のがんや、全身疾患を含めた総合的診療で患者さんのより良い生活をサポートしていきたいと考えています。“大森日赤の内視鏡グループに任せておけば大丈夫”と地域の先生や患者さんが思ってくださればそれが一番うれしいです。

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