東京女子医科大学附属八千代医療センター
(千葉県 八千代市)
片桐 聡 病院長
最終更新日:2025/08/13


東葛南部地域における医療の中核を担う
千葉県八千代市において、地域に根差した医療と大学病院ならではの先進的な医療の両方に取り組んでいるのが、「東京女子医科大学附属八千代医療センター」だ。東葛南部地域における医療の中核を担う同院では、40を超える幅広い診療科を備え専門的な医療を提供。また、救命救急センターでは命の危機にある救急患者を積極的に受け入れているほか、総合周産期母子医療センターも運用しハイリスク妊娠・出産にも対応するなど、成人医療や小児・周産期医療における千葉県の拠点病院となっている。そんな同院の病院長を2025年4月から務め、「地域医療と大学病院の両方の強みを生かし、誰一人取り残さない医療を地域の皆さんに提供し続けることが私たちの責務です」と話す片桐聡先生に、同院の役割やこれからについて話を聞いた。(取材日2025年7月1日)
最初に病院の成り立ちや役割を教えてもらえますか?

当院は2006年、八千代市や八千代市医師会などからの強い要望を受けて開院しました。当時、八千代市は重症患者さんに対応する体制が十分ではなく、隣接する千葉市や船橋市、時には浦安市などまで救急搬送せざるを得ない状況にありました。また、当時の八千代市は高齢化が進む一方で、子育て世代を中心とした若い住民も急増していて、人口構造は二極化が進んでいました。そうした背景から、「地域の医療ニーズにしっかり応えられる拠点を」という声が高まり、10万を超える市民の請願書が提出されたことが、開院の大きな後押しとなりました。当院の理念は、東京女子医科大学の「至誠と愛」に基づいています。「至誠」とは、相手と真摯に向き合うこと。「愛」とは、相手を思いやる心、やさしさ、そして寄り添う姿勢を指します。私たちは、患者さん一人ひとりの生き方や背景に心を寄せ、最適な医療を届けることこそが、この理念を実践する姿だと考えています。
診療における特徴はどのようなところでしょうか?

東葛南部地域の中心的な医療機関として地域医療を担うと同時に、大学病院として先端の医療の提供に努めているのが、大きな特徴です。19年前に八千代市の強い要請を受けて設立された際、特に求められたのが小児医療と周産期医療、救命救急の充実で、現在もこれらの分野に重点を置いています。全病床のおよそ3分の1にあたる150床を小児・周産期医療に充てて、母体胎児集中治療室(MFICU)6床、新生児集中治療室(NICU)21床、継続保育室(GCU)16床も運用。リスクの高い妊婦さんの救急搬送を24時間365日体制で受け入れて、母体と胎児、新生児を守ることをめざしています。また、千葉県の小児三次救急の指定も受け、小児集中治療室(PICU)も10床用意して、より重篤な小児患者さんも積極的に受け入れています。小児救急医療センターと総合周産期母子医療センターを併設しているのは、全国的にも珍しい体制です。
他に力を入れていることはありますか?

救命救急センターでは、脳卒中や心臓疾患をはじめとする病気や外傷などで、命の危機にある患者さんを中心に受け入れています。屋上にはヘリポートがあり直接、6床ある専用の集中治療室(ICU)に運べるようになっています。ほかに、冠疾患集中治療室(CCU)は12床、脳卒中ケアユニット(SCU)が6床あり、各専門の診療科とも連携したチーム医療で対応しています。また、腎移植にも力を入れており、県内でもたいへん多くの実績があります。今後は腎移植支援室を新設し、ドナー提供を含めた移植医療の体制強化を進める方針です。消化器外科では、食道がん、胃がん、大腸がん、肝胆膵がんまで網羅し、ロボット支援下手術を積極的に行っています。大腸がんの手術件数は多く、腹腔鏡下手術が9割以上を占め、その半分以上をロボットを用いて行っています。肝胆膵領域についても専門の医師を迎え、治療を完結できる体制を整えています。
地域医療連携への取り組みはいかがでしょうか?

これからの地域医療では、1つの病院だけですべてを完結させるのは現実的ではありません。だからこそ、例えば脳神経外科ならあそこの病院、循環器疾患ならこちらの病院、リハビリテーションならどこというように、近隣の基幹病院や回復期リハビリテーション病院などといかに役割分担して連携し、急性期から回復期まで患者さんが途切れなく治療を受けられる仕組みをつくっていくことが大切だと考えています。もう一つ、地域の開業医の先生方との連携も重要です。病院長になってからいくつかのクリニックにあいさつに伺いましたが、当院が最も求められているのは、クリニックで対応が難しい緊急などの患者さんを、迅速に引き受けることした。ですから職員には、地域の開業の先生からの依頼は、電話で些末なことを確認しなくても良いから、できるだけすぐに受け入れるよう話しています。そうして信頼関係を構築していくことが、重要だと考えています。
今後の抱負と読者へのメッセージをお願いします。

質の高い医療を提供し続けるためには、経営の安定が欠かせません。利益なくして良い医療はできないという考え方は、現場のスタッフにも理解してほしいと思っています。ただし、人員を減らしてコストを削るのではなく、無駄な検査や薬の使い方を見直すことで、必要なところにきちんと資源を回す。それが結果として患者さんへのサービス向上にもつながります。そして、地域医療と大学病院の両方の強みを生かし、「誰一人取り残さない医療」を地域の皆さんに提供し続けることが私たちの責務です。地域の皆さんが困ったとき、安心して頼れる病院であり続けたいと思っています。東京女子医科大学は、さまざまな問題が発生し、皆さまにはご心配やご迷惑をおかけしました。昨年12月に体制が一新され、当院を含む関連3病院の病院長も全員交代するなど、新しいスタートを切っています。皆さまには、安心して当院をご利用いただきたいと思います。

片桐 聡 病院長
1990年聖マリアンナ医科大学卒業後、東京女子医科大学消化器外科入局。2015年より同院。消化器外科臨床教授、診療科長、副院長などを経て、2025年より現職。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本超音波医学会超音波専門医、日本肝臓学会肝臓専門医。専門分野は肝胆膵外科を中心とした消化器外科と、超音波診断学。





