医療法人徳洲会 湘南厚木病院
(神奈川県 厚木市)
守矢 英和 院長
最終更新日:2025/04/10


患者のための医療の提供をめざす
厚木市温水において、地域密着型の医療の提供をめざしているのが「湘南厚木病院」だ。徳洲会の理念である「生命を安心して預けられる病院」をめざし、「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療が受けられる社会」を実現させるべく、「すべては患者さんのために」をモットーに医療に向き合っている同院。重症外傷を含む救急医療に24時間365日体制で対応しているほか、予防医療にも力を入れている。そんな同院の院長に2024年12月に就任し、「これからは情報発信を強化し、地域の皆さんとの関係をより深めていきたいですね」と話す守矢英和先生に、診療の取り組みや地域医療にかける意気込みなどを聞いた。(取材日2025年2月28日)
力を入れて取り組んでいることは何ですか?

当院は徳洲会グループの方針のもと救急医療を第一に掲げています。厚木市では救急が輪番制になっていますが、当院では24時間365日体制で救急患者さんを受け入れることをめざしています。放射線技師や臨床検査技師が常時待機し、CTやMRI、超音波などの検査をはじめ、カテーテル治療や内視鏡検査、緊急手術にも迅速に対応できる体制を整えています。また、「外傷センター」を設置していることも大きな特徴です。重症の開放骨折や四肢外傷、多発外傷などの高度な治療に対応できる病院は関東圏でも限られていますが、当院はそのうちの一つです。特に、近隣には高速道路や交通量の多い国道があるため、交通事故を含む外傷救急については、今後も重点的に取り組んでいきます。さらに、心臓血管疾患にも対応できる厚木市内では数少ない病院として、大動脈解離をはじめとする重症疾患の救急患者さんも積極的に受け入れています。
ほかに注力していることはありますか?

健康なうちから病気を防ぐ「予防医療」にも力を入れていきたいと考えています。具体的には、森貴久名誉院長が専門の脳卒中。私が専門とする腎臓・高血圧、さらに心臓血管の分野において、生活習慣病に対する食事指導に近いですが、早期から介入することで、患者さんが重大な病気にならないようにすること。加えて人間ドックです。基本コースに加え、脳検査などのオプションも充実させており、当院では地域でも数少ないアルツハイマー型認知症の「アミロイドPET検査」を実施可能です。適応があれば、「レカネマブ製剤」を保険診療で行えます。また、がんの早期発見を目的としたPET-CTにも対応しており、より精度の高い検査を受けられます。さらに、厚木市など市町村の特定健診や企業健診も行っており、バス健診も実施しています。救急医療などの急性期医療とは対極にある分野ですが、病気の予防と早期発見に向けて、今後も積極的に取り組んでいきます。
先生が専門の腎臓内科の取り組みも教えてください。

私が常勤になったこともあり、腎臓疾患とそれに関連する高血圧の診療にも力を入れています。特に、慢性腎臓病(CKD)は「国民病」とも呼ばれるほど患者数が多いことがわかっています。厚木市にも腎臓疾患を専門とする病院や診療所は少なくありませんが、未診断のまま潜在している患者さんも多いと考えています。そうした患者さんを一人でも多く早期に発見し、適切な治療を提供することをめざしています。かつては糖尿病による腎機能の悪化が多かったですが、近年では高血圧が原因となるケースが増加しています。また、これまで腎臓病は「治らない」「食事療法しかない」というイメージが強くありました。しかし、近年では腎機能を保護する薬も登場し、治療の選択肢が広がっています。そのため、しっかりと状態を評価し、適切な投薬で高血圧を治療したり、腎機能を保護したりすることで、将来的に人工透析が必要となる患者さんを減らしていきたいですね。
病院を運営する上で心がけていることはありますか?

最も重視しているのは、「すべては患者さんのために」という考え方です。医療の現場では多くの判断が求められますが、迷ったときは常に「自分の家族だったら、どうしてほしいか」という視点で考えれば、私たちがしなければならないことは、自然と決まってくると思います。それが、患者さんにとって最善の選択につながるのではないでしょうか。もう一つは、「何でも言い合える組織に」することです。医療現場ではスタッフ同士のコミュニケーションが不可欠で、自由に意見を交換できる環境が、より良い医療の提供につながると考えています。職場の雰囲気が閉鎖的だと、良いアイデアも出ませんし、問題点も見逃してしまいます。心理的安全性を確保し、誰もが自由に発言できる風通しの良い職場をめざしていますし、スタッフが気兼ねなく提案できる環境を整えることで、医療の質の向上だけでなく、医療安全の強化にもつながると考えています。
最後に今後の展望をお願いします。

まず、地域との関係強化です。病院で患者さんを待つだけでなく、積極的に外に出て、地域の皆さんとのコミュニケーションを深めていきたいと考えています。そのための課題として、情報発信の強化が挙げられます。従来の紙媒体に加え、近年では高齢者でもSNSを利用する機会が増えているため、デジタルツールを活用し、より多くの方に医療情報を届けること。同時に、当院のことや得意分野についても広く知っていただくことをめざしています。その一環として、市民公開講座も積極的に開催していく予定です。また、地域の開業の先生方との連携も、深めていくことをめざしています。そして、今年の秋には開院から20年を迎えます。節目の年でもあるため、記念イベントの開催を計画しています。具体的な内容はこれから決定しますが、職員と地域の皆さんがともに楽しめる催しを企画し、これをきっかけに病院としてさらに成長していきたいと考えています。

守矢 英和 院長
1994年防衛医科大学校卒業。湘南鎌倉総合病院にて腎臓内科医員、同医長を務めた後、総合内科部長、内科部長、腎免疫血管内科部長、血液浄化部長、腎臓病総合医療センター部長、兼内科統括部長、兼総合内科主任部長、兼副院長を歴任。さらに、副院長・腎臓病総合医療センター主任部長を経て、2024年より現職。日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医。
自由診療費用の目安
自由診療とは人間ドック(男性)/5万1200円、人間ドック(女性)/5万6000円、脳ドック(スタンダード)/3万3000円