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早期手術が予後を左右する膵臓がん
黄疸や背中の痛みは受診を

医療法人社団誠高会 おおたかの森病院

(千葉県 柏市)

最終更新日:2023/10/25

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  • 保険診療
  • 膵臓がん(膵がん)
  • 糖尿病

悪性度が高く、発見が遅れれば治療ができない怖い病気という印象が強い膵臓がんだが、医療技術の進化や薬の開発で治療の選択肢が増えつつある。「おおたかの森病院」では松倉聡院長と安達哲史消化器・肝臓内科医長を筆頭に、外科と消化器・肝臓内科が強固に連携して膵臓がんの治療を積極的に行っている。ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)とPTCD(経皮経肝胆道ドレナージ)の両方で実績を持ち、手術や抗がん剤治療など幅広い治療を行う同院の取り組みについて聞いた。(取材日2023年6月20日)

黄疸、背中の痛み、糖尿病の急な悪化は膵臓がんの可能性も。早期に手術をすることで転移、再発防止を図る

Q膵臓がんを疑うべき症状にはどのようなものがありますか?

A

膵臓がんの症状を説明する松倉院長

【松倉院長】膵臓は頭側の膵頭部とおしり側の膵体尾部に分かれますが、膵頭部には胆管が通っているためがんができると黄疸や濃い色の尿が出ます。一方、膵体尾部の場合黄疸は出ず、糖尿病の人のHbA1cの値が急に上がったり背中に痛みを発症するのが特徴です。膵臓は背中側にあり、おたまじゃくしのような形で膵体尾部は2cmと細いため、がんになるとあっという間に広がり血管や神経に食い込みます。そのため背中に痛みが生じるのです。また喫煙により発症リスクが上昇するといわれていますが、それ以上にリスクが高いのが遺伝です。親や兄弟に膵臓がんの患者さんがいる人で検査の数値が悪かったり症状のある人は必ず検査を受けてください。

Qがんの進行度によって治療は違ってくるのでしょうか?

A

【松倉院長】膵臓がんの治療は進行度や血管にどこまで食い込んでいるかによって治療が変わります。ステージ1、2で切除が図れる場合は手術を行いますが、進行がんで血管まで浸潤しているときは薬でのコントロールをめざしていきます。最近は胃がんや大腸がんと同様に、ステージ2B以降あるいは血管浸潤がある場合は先に抗がん剤でがんの縮小を図ってから手術をするケースも増えてきましたが、肝臓など他の臓器に転移があれば抗がん剤治療を中心に行います。昔と比べて治療の選択肢は増え、どこまで諦めずに頑張るかも大切になってきています。当院では、外科と消化器・肝臓内科が連携して可能な限り早く手術ができるように取り組んでいます。

Q内科的な治療はどんなことを行うのですか?

A

ERCPを行う安達消化器・肝臓内科医長

【安達消化器・肝臓内科医長】膵頭部がんや胆管がんでは腫瘍が胆汁の流れを阻害するため、黄疸を発症します。黄疸を改善しないと手術ができないため、まずは迅速にERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)を用いた減黄処置を行います。これは口から内視鏡を入れて十二指腸経由で胆管にステントを留置するもので、胆汁の排出を促します。
【松倉院長】多臓器に転移がある場合は抗がん剤治療を行いますが、黄疸が出ていて肝臓に転移があるケースでは、安達先生の内視鏡治療で金属ステントを入れて胆管を広げ、黄疸を落ち着かせるための処置をした上で、抗がん剤治療を開始しています。

Q外科ではどのような治療をするのでしょうか?

A

PTCDを実施する松倉院長

【松倉院長】内視鏡的なアプローチが困難な場合は、肝臓の外から胆管にチューブを挿入し胆汁を排出するPTCD(経皮経肝胆道ドレナージ)を行います。膵臓がんも胆管がんも一刻も早く治療に結びつけることが重要で、手術までの時間が遅れれば臓器へのダメージは大きくなります。当院ではこの治療を私が担当し、安達医長との協力で一刻も早く手術ができるように努めています。また、膵臓がんは2cmを超えると進行がんとなりますが、膵臓自体が2〜3cmしかないため、すぐに周囲の組織に食い込んでいきます。肝臓に入っていく門脈という血管までがんが広がっているときは、血管の一部の壁を切って血管再建を行うことで根治をめざします。

Q術後や退院してからの生活や注意すべき点も知りたいです。

A

【松倉院長】膵頭十二指腸切除では膵臓の頭側と胃と腸をつないでいるため食べ方に注意が必要です。そこで当院では入院中に管理栄養士が栄養指導を行い、手術後1ヵ月は脂っこいものも控え、鶏肉、豚肉、牛肉の順に徐々に食べていくことをお勧めし、何を食べればよいかをアドバイスしています。食べすぎると嘔吐したり糖尿病になってしまうこともあるので、ゆっくり時間をかけて食事をするなど栄養指導での内容をご家庭でも心がけていただくことが大切です。あとは、定期的に受診していただくことと、手術後の3ヵ月は体力が落ちていて胆管炎を起こす可能性もあるため、高熱など疑われる症状が出たら早めに受診をしていただければと思います。

患者さんへのメッセージ

松倉 聡 院長

1993年東京大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院第二外科入局。肝移植をはじめ肝臓、胆道、膵臓の治療を多く経験し、1999年に国立がんセンター中央病院肝胆膵外科チーフレジデント。東京大学医学部附属病院肝胆膵・人工臓器移植外科助教を経て、2004年医療法人社団誠高会に入職し、2005年から現職。日本外科学会外科専門医、日本肝臓学会肝臓専門医。

安達 哲史 消化器・肝臓内科医長

2010年千葉大学医学部卒業。新松戸中央総合病院、彩の国東大宮メディカルセンター、東葛病院での勤務を経て2016年より現職。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、日本消化器病学会消化器病専門医。専門は早期胃・大腸がんの内視鏡治療、総胆管結石・閉塞性黄疸に対する内視鏡検査、大腸憩室出血の内視鏡的止血術、潰瘍性大腸炎の内科的治療。

【松倉院長】膵臓がんは待ったなしの病気ですが、黄疸に気づかず発見が遅れたという患者さんも多くいらっしゃいます。黄疸は膵臓がんの可能性もあれば胆石の場合もあるので、気になったときには早めに受診をしてください。膵臓がんになったからもう駄目だと思ったらそこで人生は終わってしまいます。そこからいかに頑張るか、私たちもできる限り協力しますので、なんでもご相談ください。膵臓がんは再発率がとても高い病気のため、治療をしても心配事がたくさん出てくると思います。心配は私たちに任せて、ぜひいつもどおり日常生活を過ごしていただければと思います。

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