医療法人橘会 東住吉森本リハビリテーション病院
(大阪府 大阪市東住吉区)
服部 玲治 院長
最終更新日:2024/07/23
社会復帰を支援するリハビリテーション病院
2003年にリハビリ専門の病院として開業した「東住吉森本リハビリテーション病院」は、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカーなどさまざまな職種がそれぞれの役割を担いながら連携し、入院患者には365日、休日も途切れることなく包括的なリハビリを提供する病院である。院長を務める服部玲治先生は「病気になるまでも人生、これからも人生。リハビリとともに、これからの人生も自分らしく歩んでほしい」と話す。リハビリは身体機能の回復を図るだけにあらず、人生の回復をめざすもの。リハビリ専門病院として、リハビリに対するすべてのニーズに応えることができるように、院内だけでなく地域の医療・介護・福祉機関との連携など、患者を支えるより強固なチームづくりに邁進する服部院長に話を聞いた。 (取材日2024年6月4日)
最初に、病院の診療の特色について教えてください。
当院は2003年に開設した、リハビリ専門病院です。病床のすべてが回復期リハビリテーション病床で、脳卒中などの脳血管疾患、骨折などの運動器疾患、心筋梗塞などの心大血管疾患、手術後や肺炎後などの廃用症候群、など、リハビリを必要とする患者さんを急性期病院での治療後、早期に受け入れ、休日も途切れなく専門性の高いリハビリを集中的に行っています。できる限り早く生活の場へ復帰できるよう、患者さんに関わるすべてのスタッフが有機的に連携し、あらゆる方向から患者さんを包括的にケアできるのが当院の特徴で、入院中はもちろんのこと、地域の医療・介護機関とも綿密に連携し、退院後の生活設計においても積極的に支援しています。退院してからも実際の生活の安定化や復職などの社会復帰も支援しており、病気やケガから心身を回復させることをめざすだけでなく、再び新たな人生を歩めるように努めています。
チーム医療を実践するためのシステムを構築しているそうですね。
リハビリが一人の担当者任せにならず、さまざまな課題に対して包括的に支援が行えるよう、当院では、専門性・先進性の高いリハビリに取り組む10種類以上の研究班、摂食・栄養、排尿、認知機能、床ずれ、感染症、転倒・転落などの課題に対応する各々の病棟ケア班など、多くの分野別専門班を設置。各班のリーダーを中心にその分野の目標と計画を立て運営しています。刺激と着想の交換の場、コラボレーションやリンクの場として、リーダー同士のミーティングも開催しており、各班が抱える問題点や進捗状況を確認し合うことで、さらに高度なチーム医療を実現するべく取り組んでいます。また、「いつでも、どこでも、誰とでも」をコンセプトに、多職種が必要に応じ柔軟にあらゆる場所で話し合い、2人以上で患者さんについて話したことはすべてカンファレンスとして議事録に残すので、スタッフ全員が必要な情報と対応すべき課題を共有できています。
リハビリや専門に特化した外来の内容を教えてください。
脳血管疾患では、発症時点から直近までの脳画像を用いて脳の残存機能を評価し、リハビリ計画のアウトライン、病棟生活での関わり方、病棟での生活リハビリの方法など包括的支援の在り方まで検討。その上で担当チームや研究班がカンファレンスを行い、治療方針を立てています。先進の機器も導入しておりますので、リハビリ支援ロボットによる訓練や用途に応じた幾種もの低周波治療器を用いた電気刺激療法などが可能です。また、各種専門の外来では、脳の障害の後遺症に対するリハビリはもちろんのこと、まひした手足の硬さ・突っ張りを和らげるためのボツリヌストキシン製剤を用いた痙縮治療、食事に対する困難には嚥下造影検査で評価し訓練する摂食・嚥下療法、まひ側の上下肢用装具や義肢の作製や調整、心大血管疾患では心肺運動負荷試験装置など専門機器を活用した評価やリハビリなどを行い、患者さんそれぞれに必要な個別の治療プログラムを組んでいます。
高次脳機能障害の総合的支援にも注力されていますね。
脳卒中や事故の後遺症の一つに高次脳機能障害があり、まひなどの身体的な症状が少なくても残存するため、外見からは障害と気づかれにくく、社会的理解の不足もあり在宅復帰や社会生活に大きな影響を及ぼします。しかし残念ながら高次脳機能障害専門のリハビリを行う施設は少なく、障害支援機関との連携も不十分であり、退院後の継続したリハビリや社会復帰支援が行き届いていません。そこで、当院では高次脳機能障害に特化した外来を設けるとともに「大阪市中南部高次脳機能障がい包括ケアネットワーク」を医療と福祉で構築し、顔の見える関係性でより良い支援の実践に努めています。高次脳機能障害では、すぐ忘れてしまう、注意がそれる、簡単な段取りができない、感情のコントロールが難しいなどの症状で、本人はもちろんご家族や支援者もただただ戸惑っていることが多くあるので、高次脳機能障害について啓発していくこともわれわれの役目だと感じています。
最後に、地域へのメッセージと病院の将来の展望をお願いします。
われわれは、回復期リハビリテーション病棟としての務めと、リハビリ専門病院としての務めを追求し、「社会の公器」たり得る病院を築くことをめざしています。われわれにとってリハビリとは、単なる機能障害の改善だけでなく、日常生活動作の自立、家庭復帰、さらには社会復帰を図り、「再び人生を生きる」お手伝いをすることです。一人でも多くの方に安心して暮らしていただけるよう、高い専門性を持ち、いかに地域の皆さまのニーズに応えることができるかを考え続け、通所・訪問リハビリなどで実際の生活を支えること、後遺症に対するリハビリ・社会的支援を行うこと、そして、健康維持・増進を目的とした予防医学的リハビリにも貢献していきたいと思っています。高齢だから、病気だから、後遺症だからと諦めるのではなく、皆さんと一緒に明日を生きることをめざしていきたいです。
服部 玲治 院長
1992年関西医科大学校卒業。専門は心臓血管外科。国立循環器病センター(現・国立循環器病研究センター)、マレーシアNational Heart Instituteなどで研鑽を積む。しかし自身が頸椎の手術を受け、リハビリに励む日々を経験。リハビリの必要性と可能性を痛感し、2018年から現職。独自の組織マネジメントを構築し、リハビリ専門病院としての成長戦略を描く。