医療法人社団東光会 戸田中央リハビリテーション病院
(埼玉県 戸田市)
西野 誠一 院長
最終更新日:2021/09/27
リハビリテーションで在宅復帰を支援
2019年に移転し、従来の約2倍の床面積となった「戸田中央リハビリテーション病院」。広々とした院内をフルに使って、患者は生き生きとリハビリテーションに取り組んでいる。「21時間リハ」を掲げる同院では、日常生活におけるすべての動作をリハビリと捉えて積極的に患者と関わるのが特徴だ。「大切なのは、退院後の暮らし。身支度をする、食堂へ行ってご飯を食べる、廊下を歩いて移動する、そうした一つ一つの行動がリハビリにつながることを患者さん自身に意識してもらい、主体的に取り組んでもらえるような声かけをしています」と西野誠一院長。回復期専門のリハビリテーション病院だからこそできる、集中的かつ専門的なサポートの成果は、希望に満ちた患者の笑顔を見れば明らかと言えるだろう。(取材日2021年6月4日)
2019年に移転したそうですね。
2002年4月に129床で開院した当院は、2019年11月をもって現在の場所へ移転しました。開院当初は回復期と慢性期のリハビリテーションに取り組んでいましたが、2006年からは全床が回復期病床となり、回復期に特化した専門病院として質の高いリハビリの提供をめざしています。また、移転に伴って129床から200床に増床したほか、床面積を旧病院の2倍に拡張。各フロアに100平方メートル超のリハビリテーション室と言語聴覚室、ADL(日常生活動作)の訓練スペースを設置し、廊下も規定以上の幅を取ってリハビリに活用できるようになりました。1階には一際大きなリハビリテーションセンターがあり、豊富な運動器具、手押し車やつえなどを使って、多様なリハビリを提供することができます。
特に注力されている点について教えてください。
私の専門は摂食・嚥下障害で、人間の基本的な欲求であり楽しみである「食べる」動作を守るための検査とリハビリは以前から注力しているところですね。多職種によるチームを結成し、入院中の患者さんについては毎週欠かさずカンファレンスを行って、積極的な嚥下内視鏡検査とリハビリにつなげています。また、脳卒中を中心とした急性期後の歩行訓練において、早期から装具を使った歩行訓練を行っていることも特徴の一つです。リハビリが必要になったとき、「もう一度歩けるようになりたい」とおっしゃる患者さんはとても多いんですよ。30分以上歩けるようになるか、トイレまで自力で行けるようになるか、回復の程度は症状によって異なりますが、早期に訓練を開始することが鍵となるケースは少なくありません。金曜午後には装具の外来を開設していますので、お気軽にご相談いただければと思います。
1日3時間のリハビリ以外の時間も重視されていると伺いました。
院内では専門の医師が科学的根拠に基づいたリハビリテーションを提供しますが、ほとんどの患者さんは70~80%の動きの中で生活に戻っていかなくてはなりません。少しでも回復を早め、退院してからの日々を前向きに捉えていただくには、入院中の生活のすべてがリハビリにつながるという意識をもって過ごしていただくことが大切です。そこで、当院では「21時間リハ」を掲げ、所定の3時間以外の21時間もリハビリと捉えて患者さんと関わるようにしてきました。例えば、「レクリエーションの部屋へ行きませんか」「食堂へ行きましょう」と患者さんを誘えば、身支度をして廊下を歩き、部屋でおしゃべりするといった一通りの動作の訓練になりますよね。そうした声がけを積極的に行い、患者さん自身の主体性を引き出すようにしています。
在宅復帰のサポートについてはいかがですか。
入院から退院まで、あらゆる相談に一貫して対応する施設を作り、支援を強化しました。これまでどおり家庭環境など個別の事情を踏まえた介護の在り方についてアドバイスするほか、当院の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がご自宅に伺う訪問リハビリテーションにも力を入れて、切れ目のないサポートをめざしています。今後は通所リハビリテーションの展開も予定しており、医療保険から介護保険への切り替えによって手薄になるリハビリに厚みを持たせていきたいですね。また、退院した患者さんを当院で雇用する形での就労支援も行っています。患者さんの自立支援になることはもちろん、入院していたときの本音を伺って改善につなげられるなど、当院にもメリットがあるんですよ。今のところ2人の雇用ですが、これからもできるだけ多くの方の受け皿となって、相互にメリットのある関係を少しずつ増やしていきたいですね。
今後の展望と患者さんへのメッセージをお聞かせいただけますか。
回復期リハビリテーションに特化した専門病院であり、医師をはじめすべてのスタッフが豊富な専門的知見に基づいた医療とリハビリテーションを提供している点が当院の最大の強みです。これまで行ってきたような、日常生活性を上げる「一斉規律訓練」、遊びとリハビリを兼ねた30分ほどのリクリエーション「遊びリ(あそびり)」といった独自の施策を含め、生活に直結するリハビリテーションを正しく継続しながら、回復期から在宅生活期へとスムーズにつなげられるよう努めてまいります。入院診療の基本である「食べる」「飲む」「歩く」の機能回復と強化は特に精力的にめざしていますので、回復期リハビリテーション病院の選択肢の一つとして当院をお考えいただければ幸いです。
西野 誠一 院長
大学病院時代の非常勤を経て、2012年から戸田リハビリテーション病院リハビリテーション科専門の常勤医師に。同院副院長を務めたのち、2021年より現職。大学時代に事故に遭い、大腿骨を骨折した際にリハビリにふれたことが専門領域を選ぶきっかけに。人間の本能である「食べる、飲む」機能を損なう患者を減らしたいと、摂食嚥下障害とそのリハビリテーションに注力する。