公益財団法人日産厚生会 佐倉厚生園病院
(千葉県 佐倉市)
長尾 建樹 病院長
最終更新日:2024/11/15
できるだけ早い在宅・社会復帰をめざして
佐倉駅から車で5分、なだらかな丘の上に立つ「佐倉厚生園病院」。1942年に当時流行していた結核の療養所として設立し、後に高齢者の診療やリハビリテーションに注力するなどの変遷をたどってきた同院。慢性期の療養病棟と回復期リハビリテーション病棟を備えるほか、介護老人保健施設を併設し、特別養護老人ホームや有料老人ホームとも連携している。診療内容は内科を中心に、代謝・内分泌内科、脳神経内科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、血液内科、脳神経外科、リハビリテーション科と幅広い。中でも、できるだけ早期の社会復帰、在宅復帰をめざしたリハビリテーションに力を入れている。「当院のスタッフは、患者さんにできるだけ早くご自宅へ帰ってもらおう、という高い意識を持って取り組んでいます」と話す長尾建樹病院長。診療の特徴や地域での役割などについて聞いた。(取材日2024年9月24日)
こちらは長い歴史があると伺いました。
当院は1942年に結核患者の療養所「佐倉日産厚生園」として設立されたのが始まりです。当時、国内では結核がまん延していて患者を隔離、療養する施設が重要だったのです。戦後、1946年には一般向けの病院となり名称も「佐倉厚生園」に改められました。時代が変化するにつれて結核治療の需要も落ち着いてきたことから1960年代以降は生活習慣病などの慢性疾患の診療に力を入れるほか、早い時期から脳血管障害の患者さんのリハビリテーションに取り組んできました。超高齢社会に対応すべく、2000年には介護保険適用の療養型病床を開設し、2009年には結核病棟の閉鎖や新館改装などを行い回復期リハビリテーション病棟を設置、現在は療養型病床136床、回復期リハビリテーション病床45床になっています。また、すぐそばには介護老人保健施設「佐倉ホワイエ」が併設されています。
特に力を入れている分野について教えてください。
回復期の患者さんに向けたリハビリテーションです。脳梗塞や脳出血など脳血管疾患の患者さん、大腿骨など骨折の患者さんなどが中心で、廃用症候群のリハビテーションも行っています。廃用症候群とは長期間寝たきりや安静生活を続けることで、身体機能が著しく低下して日常生活に支障を来してしまう症状を指し、リハビリテーションが非常に重要です。また、慢性期の療養病棟の患者さんにもリハビリテーションを提供しています。当院には理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がおり、リハビリテーション担当の遠山和博診療部長と私、看護師らと連携しながらリハビリテーションを提供します。規模の割に言語聴覚士が多いのが特徴で、言語療法室も2室設置しています。脳血管障害による失語症など言語障害をお持ちの方や、うまく飲み込めないといった摂食嚥下障害の方に機能回復目的の訓練を行います。外来診療では生活習慣病の治療、管理に力を入れています。
病院長として心を砕いていることはどんなことですか。
ここをついのすみかにしない、患者さんをできるだけ早く家に帰す、そのことを最も重視しています。より良い状態でできるだけ早くご自宅や社会に戻ってもらう、あるいは社会に近い場所に戻ってもらうこと。リハビリテーションの提供をはじめ、スタッフ全員が患者さんを早く帰そう、という高い意識を持って取り組んでいます。管理者目線で考えると、一般的に回復期病棟のベッドが空いてしまうと不安になりがちなのですが、もしベッドが空くようであればその分ベッド数を減らせば良いのではないか、と考えています。当院の回復期病棟のベッドが空けば、それだけ急性期病院からの患者さんを多く受け入れられます。急性期病院のベッドが空けば、その病院で救急患者さんをより受け入れやすくなるでしょう。つまり、地域の救急医療を守ることにもつながるわけです。
その意味で地域医療の中で重要な役割を担っているのですね。
当院は急性期病院で治療や手術を受けた方が退院後、すぐには自宅に戻れない、もう少し治療やリハビリテーションが必要というときに来ていただく、自宅に戻るまでのつなぎのような場所です。あるいは在宅で療養している方が体調不良となったが、さほど重症ではない、第3次救急医療機関に入院するまでではない、という場合、しばらく療養して体調が回復へ向かったらまた自宅に戻ってもらう、そんな位置づけです。今、国が進めている地域包括ケアシステムの中では回復期、慢性期、在宅医療を担っています。当院の周辺には東邦大学医療センター佐倉病院をはじめ、大きな医療機関が複数ありますので、それらの病院と連携しながら患者さんたちの早期の在宅復帰をサポ―トすることが大切です。また、訪問看護や訪問リハビリテーションも行っていますので、訪問診療を行っている地域の先生方とも協力しながら在宅で療養されている方々をしっかり支えていきたいですね。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いいたします。
今後は外来の専門性を高めていきたいと考えています。当院には血液内科があり、白血病など血液疾患のある方に脳卒中や骨折などが起きてしまった場合も、血液疾患を管理しながらリハビリテーションを行えることが一つの特徴であり強みです。また、脳神経外科では脊髄疾患などにも対応できる点も強みです。このように基礎疾患のある方に対しても、それぞれ専門性を持って対応できるということを発信していきたいですね。地域の方々には当院の特徴をよく理解した上でご利用いただきたいと思います。よほど重篤な症状でなければ大規模病院に行かなくても当院で診られますし、どの診療科でも初期診療は適切に行います。これからも回復期医療やリハビリテーション、慢性期医療、在宅医療などを通じて、他の医療機関との適切な機能分化を図りながら地域医療に貢献していきたいと思います。また、健康診断や人間ドックなども各種対応していますのでぜひご利用ください。
長尾 建樹 病院長
1980年東邦大学医学部卒業。東邦大学医学部医学科脳神経外科学講座教授、東邦大学医療センター佐倉病院救急センター部長、同病院病院長を経て2022年から現職。専門は機能的脳神経外科、リハビリテーション。患者がより良い状態でより早く社会復帰、在宅復帰できる医療の提供に努めている。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医。
自由診療費用の目安
自由診療とは人間ドック/4万4000円~