医療法人社団嬉泉会 大島記念嬉泉病院
(千葉県 船橋市)
勝然 秀一 病院長
最終更新日:2023/06/23
透析を中心に、地域に貢献することをめざす
三咲駅から徒歩約7分のところにあるのが「大島記念嬉泉病院」だ。透析医療を中心に内科系の一般外来診療やリハビリテーション、健康診断、予防接種などに取り組むことで、地域の健康増進に貢献することをめざしている同院。透析医療では、東葛南部地域の透析医療の中心的な存在として慢性腎臓病の初期段階の診断と治療から、透析の導入と維持透析、合併症の治療まで幅広く診療。同時に、透析患者に配慮した弁当の提供や自宅への送迎など、重症を含む透析患者のニーズに手厚く応えることに努めている。そんな同院の院長で、「当院は透析医療を中心とした病院ですが、同時に外来診療や健康診断、予防接種などでも貢献して、地域の皆さまの健康管理にも携わっていきたいと考えています」と話す勝然秀一(かつしか・しゅういち)先生に、同院のことや地域医療にかける思いなどを聞いた。(取材日2023年4月5日)
まずは、病院を紹介していただけますか?
当院は1991年に透析専門のクリニックとして立ち上がり、1995年に病院になりました。現在は35床の入院施設と56床の透析ベッドがあり、透析医療を中心に診療しています。外来での透析と、急性期病院での治療が終わったけど自宅に戻るのは難しいなど、何かしらの理由で入院やリハビリテーションが必要な患者さんのお預かりなど東葛南部地域の透析医療を担ってきました。また、地域にお住まいの方々のかかりつけの病院ということで、内科を中心とした一般診療のほか、船橋市特定健診をはじめとする各種健康診断や予防接種、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種や発熱を専門に診る外来、感染した透析患者さんの受け入れなど、地域貢献にも力を入れています。大島記念という院名の由来ですが、日本における血液透析機の普及に尽力された大島研三先生にちなんで名づけられました。
透析医療への取り組みについて、もう少し詳しく教えてください。
当院では、慢性腎臓病で透析に入る前の保存期の患者さんのケアから、透析のためのシャント造設や長期留置カテーテルを入れるなど透析の導入、定期的な外来での透析や入院透析まで対応しています。さらに、シャントが詰まった際には風船を膨らませて詰まりの除去を図る治療を行うなど、トラブルの対応にも対応しています。透析患者さんは消化管のトラブルが多いので、その際の内視鏡検査や治療も可能です。骨粗しょう症による骨折や、糖尿病だと血管の障害が多いので心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患、肺炎をはじめとする感染症も多いですが、当院には、循環器内科を専門とする私や、腎臓や消化器、感染症を専門とする医師がいるほか、非常勤で血管外科や形成外科の医師に来てもらうなどして、透析患者さんのケアをトータルに対応することをめざしています。ただ、心臓の手術をはじめ当院では対応できないような場合には、連携している施設にお願いしています。
透析患者さんのサポートも手厚いそうですね。
そうですね。例えば、糖尿病網膜症で視力が失明寸前の方や下肢を切断して歩けなくなってしまった方など、手厚くサポートしなくてはいけない患者さんが当院は比較的多いんです。そういった方が通院できるように、送迎車で自宅までお迎えに行き、病院に着いたら車いすで透析室までお連れして、帰りも自宅までお送りしています。もう一つ特徴的なのは、透析患者さん向けに栄養面に配慮したお弁当です。透析患者さんは高齢で一人暮らしの方も多いですし、透析中の食事はカリウムを抜いたり、リンの量を計算したりなど、準備が大変なんです。当院には以前レストランがあったのですが、今はそこで食事を作っていた調理師が、栄養面に配慮しながらもとてもおいしいお弁当を作ってくれているんですよ。
病院を運営する上で心がけていることはありますか?
当院は「常に向上心をもって謙虚に、そして誠実に患者および家族に信頼される、安全で質の高い医療を提供します」を理念としています。加えて私のモットーは、穏やかな顔つきと優しい言葉遣いを意味する「和顔愛語」、明るく朗らかで広い心を意味する「明朗闊達」、力の限りを尽くして仕事に励むことを意味する「精励恪勤」です。つまり、患者さんに信頼される言動や気がめいっている患者さんに明るく接すること、懸命に働くことなどを実践して病院を明るくする。そうすることが患者さんにも良い影響を与えるのではないかと考えています。また、私自身はスタッフとあまり垣根を作らないことも意識しています。スタッフが違うと思いながらも言われたとおりにしているのは良くないと思いますし、「先生、それは間違えていますよ」と言えるような雰囲気がないと医療事故にもつながります。ですから、コミュニケーションが取りやすい雰囲気は大切だと思っています。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
透析病院は、施設や設備だけでなく働いている人間が非常に重要です。そのため、人を育てることができる基盤を作りたいと思っています。診察や検査、透析をしながら、患者さんの希望にいかに応えていくのか。教科書に載っていることはもちろん大切ですが、実際の患者さんからの言葉や症状から教えられることはとても多いので、そういうことにちゃんと耳を傾けられるような人。同時に、プロフェッショナルとして知識や技能を常に磨く努力を怠らない人材を育てていきたい。そうすることで、透析病院として患者さんに長く、安心して、信頼してもらえるような病院にしていきたいと考えています。そして、当院は透析医療を中心とした病院ですが、同時に外来診療や健康診断、予防接種などでも貢献して、地域の皆さまの健康管理にも携わっていきたいと考えています。この地域の健康増進の一助になれたら幸いだと思っていますので、今後もよろしくお願いいたします。
勝然 秀一 病院長
1982年防衛医科大学校卒業。海上自衛隊幹部候補生学校、自衛隊中央病院や国家公務員共済組合連合会三宿病院などでの勤務を経て2016年より同院へ入職。2017年より現職。日本循環器学会循環器専門医、日本内科学会総合内科専門医。