医療法人緑栄会 三愛記念病院
(千葉県 千葉市中央区)
入江 康文 院長
最終更新日:2025/01/09
あふれる患者を救う地域の透析医療拠点へ
2020年にJR中央・総武線の千葉駅で下車して徒歩1分ほどの場所に新築移転した「三愛記念病院」は、前身のクリニック時代から数えると約半世紀の歴史を持つ腎臓病の専門病院だ。2017年に40周年を迎えた同院では、移転に伴い診療科を増やすなど、設備面をはじめ地域住民の健康のために絶えず進化を続けている。常勤5人を含む30人以上の医師が、それぞれの専門領域で透析患者の合併症治療などを担当。リニューアル後は透析のほか、複数の診療科を備え、手術から外来まで幅広く対応している。また、きびきびと動く看護師たちの表情は明るく、入江康文院長はその日の人工透析に訪れた患者たちとすれ違うたび、いかにも旧知の間柄といった感じで気軽にあいさつを交わしている。通院が30年を超える人も珍しくない透析医療は、医療施設と患者の長い付き合いとなる。それを快適なものにしている秘密は何なのか、院長に開業から現在に至るまでの歩みを含め、たっぷりと語ってもらった。
(取材日2016年5月24日/情報更新日2024年10月18日)
開業した動機や、人工透析を専門とした理由を教えてください。
人工透析の医師として千葉市内の公立の病院に勤務していたとき、透析の設備や人員の不足から、腎不全の患者さんを助けられない状況が続いていました。焦りを感じた私は、同じ問題意識を共有する仲間とともに、開業を決断。病院名の「三愛」は、開業に関わった私を含む3人の医師にちなんでいます。たくさんの患者さんを預かる現場では、医師が1人だともしもの場合に対応不能に陥るケースが予想されます。そんな事態を防ぐために、3人の医師を表す言葉として選びました。私が鹿児島大の医学部を卒業した1968年当時、尿毒症といえばほとんど手立てがない病気でした。そんな中、初期の人工透析装置が使われだしたことを知り、大きな可能性を感じて飛びついたのです。設備も医師の数もわずかだった頃から半世紀近くがたち、透析医療は目覚ましい進歩を遂げました。治療を経て20年、30年と過ごしている人たちを見ると、感慨を覚えずにはいられません。
病院の歴史とリニューアル後の特徴についてお聞きします。
1977年の春、当院の前身である有床診療所の栄町クリニックが誕生しました。その後より多くの透析患者を受け入れるため、1983年に三愛記念クリニックと改称して移転、1996年に50床の病院となり、さらに2020年に現在の病院が完成し、新たな設備とともに診療体制を強化しました。リニューアル後は療養病床120床を含む180床の入院設備のほか、循環器内科や心臓血管外科、皮膚科、消化器内科や消化器外科をはじめ整形外科など13の診療科を標榜し、地域医療のニーズに応えられるように取り組んでいます。現在は腎臓疾患や人工透析はもちろん、腹腔鏡手術や心臓血管手術といった急性期医療から療養病棟での入院まで幅広く対応できています。また診療科が充実したことで透析患者の合併症への対応も幅広く行えるようになりました。外来もさまざまな分野の医師が勤めているため、透析をはじめとする腎臓分野以外でも安心して来院いただけます。
合併症への対応にも力を入れているそうですね。
腎不全の患者さんに対する医療の中心は、週3回ほどの人工透析です。透析が命をつなぐことに直結するのは間違いないのですが、だからといって、透析を続けているだけで長生きできるわけではありません。あくまで私のイメージですが、人工透析装置が透析患者の延命に関与している割合は20%ぐらいだと思います。そして残る80%を占めるのは、脳梗塞、心筋梗塞や糖尿病など合併症のリスク管理です。リスク管理に大事なのは、スピーディーな血液や心臓の検査と、合併症が疑われた際の速やかな対処の2点。そこで当院では、病院と検査機関のコンピューターをオンラインで結ぶシステムを早くから導入し、透析時に採血して調べた結果が、翌日の朝には届くようになりました。こうしたシステムは今でこそ珍しくなくなりましたが、われわれが開発に携わった仕組みを土台としたコンピューターソフトは、今でも検査機関で実際に使用されているようです。
ほかの病院や診療所との連携についてはいかがでしょう。
当院は、母体である医療法人緑栄会が所有する2施設、同じ千葉市内の三愛記念そがクリニック、市原市の三愛記念市原クリニックと連携を図っています。地域の患者さんが安心して過ごせるよう、例えば、クリニックの透析患者さんが夜間に具合が悪くなったり入院が必要になったりした場合に当院で受け入れています。もちろん当法人の系列以外の、近隣の医療施設とも良好な関係を築いておりますので紹介等もスムーズに行えます。
最後に、読者に向けてメッセージをいただけますか?
透析医療とは本来、腎臓の病気を根本から治すものではなく、延命治療です。こんなふうに言うとがっかりされる方もいるかもしれませんが、考えてみてください。毎日のご飯だって、生きるためにどうしても必要なこと、つまり延命治療のようなものなんですね。透析を始めることでそれまでどおりの生活を続けることは難しくなるかもしれませんが、きちんと定期的に通院し、食事その他の自己管理もしっかり行えば、仕事だって泊まりの旅行だって立派にできます。事実、そんな努力を重ねて、腎不全や合併症と上手に付き合っている患者さんがたくさんいます。どうか、腎臓の病気に直面しても将来をあまり悲観せず、「一流の患者」となって人生を謳歌してください。医療者として私たちも全力で応援させていただきます。
入江 康文 院長
1968年鹿児島大学医学部卒業。千葉市内の病院などで人工透析の医師として勤務し、1977年より現職。国内における透析医療の重要性を感じ、より多くの透析患者を救うための技術習得に尽力。開業後は病院規模の拡大をはじめとした設備や各種システムの充実に取り組み、「安全性と合理性」をテーマとした病院運営に力を注ぐ。