社会医療法人 生長会 ベルピアノ病院
(大阪府 堺市西区)
倉都 滋之 院長
最終更新日:2023/06/26
充実した多職種支援でスムーズな在宅復帰へ
堺市西区菱木にある「ベルピアノ病院」。特別養護老人ホームやサービスつき高齢者向け住宅などで構成された複合型施設「ベルアンサンブル」の中核として、改称・移転から12年にわたり回復期療養型医療を提供する。急性期病院での治療を終えた患者に対する回復期医療や在宅復帰支援へのニーズは高まる一方で、同院でもリハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、医療療養病棟の合計192床で多数の患者を受け入れる。充実した看護やリハビリテーションに加え、医療福祉の面でも手厚いサポートを実施し「多くの患者さんやご家族が、想像以上にスムーズな在宅復帰ができるよう支援しています」と倉都滋之院長。さらに地域の在宅医療でも新たな役割を担いつつある同院の取り組みや今後の展望について、倉都院長に話を聞いた。(取材日2023年5月29日)
貴院の診療内容や特徴を教えてください。
当院は回復期リハビリテーション病棟48床、地域包括ケア病棟48床、医療療養病棟96床の計192床をもち、回復期医療や、医療的な支援が必要な患者さんへ療養・治療を提供する病院です。現在、急性期病院では平均在院日数の短縮化が進んでいますが、高齢患者さんを中心に、もう少し療養してから、あるいはリハビリテーションで筋力や身体機能を戻してから自宅へ戻りたいという要望は多く、当院のような回復期療養型病院のニーズは今後さらに高まると考えています。また、当院は特別養護老人ホームやサービスつき高齢者向け住宅と連なる複合施設の中にあり、訪問看護ステーションや地域連携・在宅療養支援センターも併設されています。これらの施設は日々のミーティングや感染対策など医療安全の面からも日常的に連携しており、患者さんや利用者さんがどの施設を利用されても、一体感のある温かな雰囲気の中で安心して過ごしていただけることが特色です。
リハビリテーションが充実していると伺いました。
理学療法士が約40人、作業療法士が約20人、また言語聴覚士が約10人という規模で、お子さんの吃音から脳血管疾患や骨折で治療をされたご高齢の患者さんまで、入院患者さんはもちろん外来・通所・訪問まで、幅広いニーズに応じたリハビリを丁寧に実施しています。リハビリテーション室の中には畳やキッチンを配置し、高さや手すりの位置を変えてご自宅での生活をシミュレーションできるスペースがあり、キッチンでは調理訓練も行えます。また退院前にはリハビリスタッフやソーシャルワーカーが患者さんと一緒にご自宅へ伺って、実際にどのような場で生活をされるのかを確認して、手すりの設置など暮らしやすい環境づくりのアドバイスを行いますし、ご家族にも患者さんの回復状況などをお伝えできる機会になっています。また短時間利用のためのリハビリ室も別のフロアにあり、フィットネスクラブのように運動器具を使ったリハビリが可能です。
在宅復帰される入院患者さんが非常に多いのだとか。
入院患者さんの病状や生活背景には大きな個人差がありますが、看護師やリハビリスタッフが患者さんの回復をこまやかに支えます。また各患者さんには担当のソーシャルワーカーがつき、退院後の生活に向けて福祉の面からも手厚くサポート。このため、当院では回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟の患者さんはもちろんのこと、より医療的な支援が必要な医療療養病棟の患者さんでも在宅復帰率が高いことが特徴です。医療療養病棟では中心静脈栄養や人工呼吸器、がんの末期など高度な医療支援が必要な患者さんも多いのですが、ご希望があれば在宅療養へ移行できるよう、各職種が必要なリハビリや環境調整を全力で行って、退院への道筋を整えます。退院後も、当院からの訪問診療や、地域で在宅医療を担う開業医の先生方との連携が増えていて、症状悪化などの緊急時やレスパイト目的での入院にも対応しています。
さまざまな職種のスタッフが患者さんを支えているのですね。
私は以前、当法人グループのベルランド総合病院で整形外科の急性期医療に長く携わっていましたので、2022年にこちらへ入職してからは回復期病院での多職種の役割やチーム医療の重要性を、改めて強く実感しているところです。特にリハビリスタッフや看護師は、各患者さんのことをお人柄を含めてよく理解し、寄り添ってくれています。また新型コロナウイルス感染症では当院もさまざまな影響を受けましたが、その経験を通じて施設内の連携体制が格段に向上し、各職種も感染症対策としてそれぞれが何をすべきなのか知識と技術を高め、頼もしさが増しています。当院には若いスタッフも多いのですが、各部門では各自の業務に関する実習や研修がベテランスタッフのもとで活発に行われ、資格取得を希望される方には病院が後押しして外部での講習にも参加してもらえます。職種や部門の分け隔てなく雰囲気の良いチームとして患者さんを支える、これも当院の強みです。
今後の展望と地域の方へのメッセージをお願いします。
急性期病院から当院への転院を希望される患者さんが増えていて、ベッドが空くまでお待ちいただくケースも多くなっています。今でも回復期リハビリテーション病棟の在院日数は全国平均よりかなり短いのですが、当院のテーマ「帰ろう、住み慣れた街、住み慣れた家へ」をかなえるために、可能な方にはより短期間でご自宅に戻っていただける取り組みが重要だと考えています。特にご家族の不安を解消するために、退院前のご家庭訪問や、感染症流行下ではできなかった病院での面会を再開し、患者さんの回復を実感していただきたいです。またスタッフとご家族の間にも信頼関係ができれば、アドバイスも伝わりやすいですし、困ったことがあればまた当院を頼っていただけるでしょう。「ときどき入院、ほぼ在宅」という回復期病院のスタイルを実践すべく、生活支援や家族支援を含めた退院支援の質を高め、スムーズで安心できる在宅復帰をより多くの方に提供したいです。
倉都 滋之 院長
1985年徳島大学医学部卒業後、大阪大学医学部整形外科学教室入局。1991年からは大阪大学大学院医学系研究科病態病理学講座で研究に携わり、その後は同整形外科学教室の関連病院で臨床に従事。1998年より呉医療センター・中国がんセンター整形外科部長。2010年にベルランド総合病院へ入職し整形外科部長、副院長を務め、2022年よりベルピアノ病院院長代行、2023年より現職。専門は骨軟部腫瘍。