医療法人徳洲会 和泉市立総合医療センター
(大阪府 和泉市)
松下 晴彦 病院長
最終更新日:2026/02/05


救急と専門医療の両輪で地域を守る中核病院
1963年に公立和泉病院分院として発足。その後、和泉市立病院を経て、2018年の移転を機に現名称となった「和泉市立総合医療センター」。泉州二次医療圏の二次救急を担い、幅広い診療科で専門性の高い医療を提供する地域の中核病院だ。地域がん診療連携拠点病院、がんゲノム医療連携病院、地域医療支援病院、難病診療連携拠点病院など、多彩な機能を備え、和泉市をはじめ和歌山県に近い8市3町の医療を支えている。「高いレベルの救急医療と専門医療の両立を図りつつ、身近で通いやすい病院をめざしています」と話すのは、2019年から同院を統括する松下晴彦病院長。その姿勢には、「市民のための病院である」という公立病院としての揺るぎない使命感がにじむ。同院では現在、「がん」「難病」「呼吸器」の3分野に注力。2026年4月に完成予定の増改築中の新棟には、これら3分野の専門に特化した外来部門に加え、従来のワンフロア型ではない個室スタイルのICU(集中治療室)22床も整備される。地域で完結できる高度医療の実現に挑み続ける同院。その特徴や今後の展望について松下病院長に話を聞いた。(取材日2025年11月14日)
こちらの特徴、地域における役割を教えてください。

当院は「市民のための病院」として設立された経緯から、和泉市民を診る立場で日常診療に取り組み、救急医療・小児医療・災害医療の拠点としての役割も担っています。中でも診療の柱となっているのが、救急医療と専門医療です。泉州地域には高度医療を担う大学病院や中核病院がないため、当院は300床規模でありながら、スタッフの教育や維持が難しい高度医療にも挑んでいます。「地域の患者さんは、この地域で診る」ことが基本姿勢ですが、地域で完結するのは難しいのが現状です。ただ、がんやリウマチなどは当院で専門的な治療が可能です。がん治療に関しては、初代総長が近畿大学病院腫瘍内科の教授、現総長もがん治療に精通した近畿大学病院呼吸器外科の教授であった背景から「がん治療で地域に貢献したい」という強い思いがあります。その意識を全職員が共有し、地域がん診療連携拠点病院、がんゲノム医療連携病院として地域のがん医療を支えています。
外来がん診療にも力を入れているそうですね。

血液疾患を含め、当院ではがんの外来診療に力を入れています。10年ほど前まで、がん治療の中心は入院でした。しかし入院治療には、働きながら治療を受けられないという大きな課題があります。血液疾患や肺がんなど、がんの治療には費用がかかり、高額療養費制度を利用しても月々の負担が数万円に上ることもあります。治療の進歩で患者さんの寿命が延びている今こそ、「働きながら治療を受けられること」が非常に重要です。そのため、当院では点滴を週に1~2回行いながら、仕事を継続していくなどの「両立支援」を実現するため、来年4月に完成する新棟では、外来化学療法室を従来の17床から30床に拡充します。両立支援は、当院が診療の柱として掲げる「がん医療」「難病医療」「呼吸器医療」に共通する重要なキーワードです。化学療法をはじめとした専門医療を提供しながら、患者さんの生活を支えることが当院の役割だと考えています。
注力されている診療や分野についてお聞かせください。

当院は難病診療連携拠点病院として、パーキンソン病やALSなどの神経筋疾患、風邪などの感染後に発症することがあるギラン・バレー症候群などの難病診療を担っています。またリウマチに代表される膠原病領域も症例数が多いため、リウマチ・膠原病内科部門が中心となり、専門的な診療を積極的に進めています。内科系の高度専門医療としては、血液内科も重要な柱です。血液疾患の治療にはクリーンルームが必要となります。当院では、個室のクリーンルーム5床と、4床を1室とする大部屋のクリーンルームを2室、合計13床のクリーンルームを備えて骨髄移植に取り組み、地域で完結できる治療体制を整えています。また外科領域では、低侵襲のロボット支援手術を前立腺、胃、腎臓、腸、婦人科、肺など多岐にわたる手術で導入しています。このことは患者さんの負担軽減に加え、若手医師の技術向上・モチベーションにもつながっています。
地域連携への取り組みについて伺います。

旧病院から改名した7年前、病院名を地域に知っていただくため、医師会や歯科医師会、薬剤師会、自治体や市民代表の方々にご参加いただきシンポジウムを開催しました。以降、毎年テーマを変えて続けており、昨年は当院が市民病院として力を入れたいアドバンス・ケア・プランニング(ACP:人生会議)を取り上げました。シンポジウムではさまざまな課題が出されましたが、ACPも両立支援と同様、病院だけでなく地域医療・在宅医療・介護分野に携わる方々と協力して継続的に取り組むことが重要であると認識されました。ただシンポジウムだけでは普及に限界があると考え、今年は「和泉市民健康まつり」でACPをテーマにした劇を上演。和泉市長をはじめ、医師会長や歯科医師会長にも出演していただき、30分の劇を2回公演するというなかなか大変な取り組みでした。こうした活動や入院患者さんへの説明を通して、ACPを広く伝えていきたいと考えています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

2026年4月に完成予定の増築棟には、先ほどお話しした「がん」「難病」「呼吸器」の外来部門を集約し、がん化学療法のための点滴室も拡充します。またICUは従来のワンフロア型ではなく、個室14床を増床し、ICU22床中16床が個室となります。ICUに入られる患者さんは高齢者も多く、広く無機質な空間がせん妄の一因といわれています。個室化によりこうしたリスクを減らしていくだけでなく、パンデミック時に感染以外の患者さんに対応しやすい利点があります。高度な医療を提供しながらも、ご家族が寄り添え、患者さんの気持ちが安定する「癒やされるICU」をめざしています。当院は高度医療を担う一方で、誰もが相談しやすい「敷居の高くない病院」でありたいと考えています。そのためには、地域の皆さまの応援が不可欠です。今後も地域に愛される病院として、さまざまなかたちで還元しながら「市民のための病院」であり続けたいと思います。

松下 晴彦 病院長
1984年大阪市立大学医学部卒業後、同大学の第1内科臨床研修医として研鑽を積む。大阪府立羽曳野病院(現・大阪はびきの医療センター)、大阪市立大学医学部第1内科臨床研究医を経て、1991年和泉市立病院(現・和泉市立総合医療センター)に入職。内科部長、副院長、病院長代行を歴任し、2019年より現職。日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医。





