国立大学法人 大阪大学医学部附属病院
(大阪府 吹田市)
野々村 祝夫 病院長
最終更新日:2025/10/31


高度な医療と、地域との親和性を併せ持つ
1993年に大阪市中之島地区から、吹田市の万博記念公園に連なる丘陵地帯に移転した「大阪大学医学部附属病院」。以来、四半世紀にわたって地域の人々に親しまれてきた。「地域に生き世界に伸びる」をモットーに、大学病院として専門的かつ安全性に配慮した医療の提供を続けながら、研究者や医療人の育成にも力を注いでいる。がん診療においては近畿医療圏の中心的役割を担い、がんゲノム医療中核拠点病院や地域がん診療連携拠点病院に指定される国際水準の医療を提供し、同時に未来の医療の基礎となる多彩な研究を展開。一方、大きな課題だった施設の老朽化に対処する再開発整備事業が進行中で、第1弾として2025年5月7日にオープンしたのが「統合診療棟」である。外来、手術室、低侵襲治療施設などの中央診療機能がここに移転するとともに、高度な先端医療を担う部署も設けられたのだ。「診療環境や規模が格段に向上し、より高水準かつ安全性に配慮した医療を提供することができるようになりました」と語る野々村祝夫病院長に、新棟の機能や特徴を中心に、「病院の今とこれから」について話を聞いた。(取材日2025年10月14日)
病院の特色や地域における役割をお聞かせください。

当院は、近畿圏の地域医療を支える中核病院として三次救急に対応し、国際水準の先進的な医療を提供しています。がん・難治性疾患の分野では、がんゲノム医療中核拠点病院、地域がん診療連携拠点病院として、ロボット支援手術など先進手術に積極的に取り組んでいます。臨床研究中核病院として研究にも重きを置き、医師主導型の治験に取り組むほか、患者包括サポートセンターでは、入退院支援を軸に外来診療予約や地域連携業務、社会復帰へ向けた医療福祉相談なども実施しています。なお、新規オープンした統合診療棟には、外来のほか手術室や低侵襲治療施設などの中央診療機能が移転しました。総合周産期母子医療センターや眼科診療部門はワンフロアに集約され、高度な先端医療を担う部署も同棟内に設けられたのです。そのため、診療環境や規模が格段に向上し、より高水準で、安全性に配慮した医療を提供することができるようになりました。
総合周産期母子医療センターがさらに充実したそうですね。

総合周産期母子医療センターでは小児科診療、産婦人科診療のほか、胎児の診断・治療なども実施し、母子を総合的に支えるシステムを構築しています。胎児に対しても適切な診断が得られる検査設備を備え、心臓血管外科や脳神経外科、小児外科などの診療科と素早く連携して、高度かつ専門性の高い治療に臨める体制を整えているのです。ハイリスク分娩ばかりでなく、ローリスク分娩や一般診療の受け入れも積極的に行っています。統合診療棟への移転に併せて、新生児集中治療室(NICU)や新生児回復室(GCU)の増床、分娩から産後の回復まで同室で過ごせるLDR室や感染症対策病室の設置など、さらに強固な体制を整えました。大学病院は敷居が高いと感じている人もいるでしょうが、新棟移転後はセミオープンシステムでの連携を開始し、退院後の医療児ケアや発達フォローも、行政やクリニックと協力してサポートするなど地域連携にも強みがあります。
アイセンターについても教えてください。

新棟移転に伴い、眼科は「アイセンター」として生まれ変わりました。外来・検査・手術・病棟・リハビリテーションを集約させ、あらゆる眼科疾患に対応できる体制を整えています。これまでも、白内障・網膜硝子体・緑内障・斜視・角膜移植など多様な手術に対応してきましたが、今後はさらなる利便性向上や手術の効率化を図るとともに、眼科専用手術室3室を備え、より多くの患者を受け入れていく予定です。糖尿病や心疾患などの持病を持つ方も、大学病院ならではの院内連携により安心して手術を受けていただけます。さらに再生医療や網膜の手術といった高度眼科医療も積極的に展開しています。科学や技術の進歩でより低侵襲な手術をめざせるようになった反面、治療は複雑化してきています。当院では眼科と各内科系診療科が情報共有し、強固な体制で対応しています。また、地域の開業医とも協力して患者さんを支える「顔の見える関係づくり」を実行しています。
医療安全管理にも早くから取り組んでこられたとお聞きしました。

当院では、医療安全の重要性に早くから目を向けてきました。事故につながりかねない出来事を自主的に報告・共有する「電子化インシデントレポートシステム」の開発や、医療の安全と質向上のために従来のシステムの改善や職員の教育に取り組む「中央クオリティマネジメント部」の設置などです。また「レジリエンス・エンジニアリング」という、変化する環境下でいかに柔軟に対応できるかを主眼にした新しい安全管理手法も導入しています。さらに新たにスタートした「患者包括サポートセンター」では、統合診療棟に充実した設備を備え、医師・看護師・医療ソーシャルワーカー・公認心理師・管理栄養士ら多職種が連携し、オーダーメイドの支援体制を構築しています。スタッフ全員が「患者さんのために」という思いを持ち、職種にとらわれない意見を出し合う風通しの良い環境が高い信頼を獲得するアプローチにつながっていると思います。
今後の展望と地域の人たちに向けメッセージをお願いします。

「統合診療棟」という立派な施設が完成しましたが、それを生かすのは「人」です。新しい環境下でも引き続き、高度かつ先進的な「未来の医療」を届けるには、世界に通用する優れた医療人の育成が不可欠だと思います。その取り組みとして、キャリアを積みながらスキルを磨けるシステムや、高度化する医療機器開発に対応できる人材育成のための医工連携を進めています。また、先進の医療や研究開発を担う高機能病院として発展するとともに、当院らしい地域との親和性で成果を還元することも重要です。地域医療機関との連携をさらに深め、病院公開イベントや医療情報の発信なども拡充し、身近に感じてもらえる病院でありたいと考えています。「Futurability 待ち遠しくなる未来へ」という理念を職員一人ひとりが胸に秘め、医療安全管理を含めた当院ならではの高度医療を今後も追求し、患者さんに納得・満足いただけるよう努めてまいります。

野々村 祝夫 病院長
1986年大阪大学医学部卒業、1990年同大学大学院博士課程修了。1991年にはアメリカ国立衛生研究所へ留学。2010年大阪大学医学部泌尿器科教授に就任、同大学医学部附属病院副院長を経て2024年4月より現職。統合診療棟開設に向け院内の機運醸成や経営改善に取り組む。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医。





