今村 道雄 院長

広島バスの安芸高校入り口停留所より広島駅方向へ徒歩5分。「山崎病院」は広島市東区上温品にある。同院は地域で入院設備を備える病院が求められていた1980年に設立。当初は一般病棟のみだったが、現在では地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、医療療養病棟を有し、病院内に介護医療院も併設。患者の状態に適した医療・介護を提供するための環境が構築されている。同院の大きな特徴は、ケアミックス型病院として急性期の入院治療から在宅復帰、退院後の生活支援まで一貫した医療と介護サービスを提供していること。「脳卒中や骨折などはもちろん、呼吸器疾患や循環器疾患など重症度の高い患者さんや合併症を持つ方にも対応し、心臓リハビリテーションも実施しています」と話すのは、大学病院で約20年間、主に肝臓領域の研究に注力する傍ら、同院で肝臓専門の外来診療も行ってきたという今村道雄院長だ。2023年4月の院長就任以来、より患者との距離を近く感じられるようになったと目を細める今村院長に、同院の歴史や診療の強みなどについて語ってもらった。（取材日2024年3月1日）※病院名の「崎」は山へんに立・可が正式な漢字です。

当院は1980年にこの地で開設されました。この地域には入院設備を備えた病院がなく、「地域住民に役立てる病院でありたい」という開設者の思いとともに、地域の方々のニーズに応えるかたちで少しずつ規模を広げていきました。開設当初は一般病棟のみでしたが、現在ではこれに加え、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、医療療養病棟を有しており、さらに病院内に介護医療院を併設。そのため、患者さんの状態に合わせた適切な医療・介護を提供することができるようになっています。また、介護老人保健施設、介護つき有料老人ホーム、居宅介護支援事業所も併設し、内科診療やリハビリテーションに加えて介護保険サービスの提供も可能になっています。この辺りは高齢者が多い地域でもありますので、地域のクリニックとの連携はもちろん、多職種連携を密に行い、多様なニーズに対応できる体制を整えております。

当院の大きな特徴は、ケアミックス型病院として急性期の入院治療から在宅復帰、退院後の生活支援まで一貫した医療と介護サービスの提供が可能であることです。消化器内科医7人、循環器内科医3人が在勤し、呼吸器内科医、脳神経内科医らとともに、内科全般の診療を行っています。急性期病院や近隣クリニックからの紹介入院、高齢者施設からの受け入れも積極的に行っており、また急な事情で在宅での介護が困難になった場合は、レスパイトケアとして早期受け入れを心がけています。食事が取れない、認知症が進行してしまったなどといった事情から、ご自宅での生活や介護が難しい場合は、患者さんやご家族と相談し、施設への入所や当院での長期療養など、患者さんにとって最も良いと思われる方法を提案させていただきます。地域の患者さんやご家族が、病気や介護でお困りになった際、できるだけお役に立てる病院でありたいと考えています。

当院は回復期リハビリテーション病棟を有しており、数多くのスタッフが対応にあたっています。リハビリテーション専従の医師および広島大学病院リハビリテーション科からの支援により、365日リハビリテーションを提供しています。脳卒中や骨折後の方はもちろん、呼吸器疾患や循環器疾患など重症度の高い方や合併症を有する方にも対応しており、心臓リハビリテーションも行っています。脳卒中の後遺症による痙縮症状に対しては、ボツリヌス毒素製剤を用いた治療を取り入れています。脳卒中や脊髄損傷などにより損なわれた上下肢運動機能に対する機能的電気刺激療法など先進的な治療も導入しています。嚥下障害については、嚥下造影あるいは嚥下内視鏡検査により評価し、各患者さんに適した嚥下リハビリテーションを行っています。退院後は、訪問リハビリテーションや通所リハビリテーションに移行し、機能をできるだけ維持できるように努めています。

在宅医療を希望される方も多く、また在宅医療のニーズも多様化しています。当院では通所リハビリテーション施設や訪問看護ステーションなども併設しております。かなり大きな規模になりますが、各部門の責任者とリアルタイムで連携を取れる体制を構築しており、そのため、迅速な対応が可能です。ご本人やご家族、クリニックからのご要望も増えていますし、地域の皆さんが医療で困ることがないよう、できる限りの対応をし、またお看取りにも対応させていただいています。私は昨年院長に就任しましたが、これまで20年間にわたり当院で診療をしており、地域の医療や介護に対するニーズの変化も肌で感じてきました。高齢者は合併症のある方も少なくありません。そのような場合も全身管理を行いながらリハビリテーションまで提供できる環境が整っているのは当院の強みと考えています。地域の方も心強く感じてくださっているのではないでしょうか。

当地区では、高齢者の割合が30％を超えており、一人暮らしや高齢者のみの世帯も多く、その数は今後も増加していくことが予想されています。このような状況で、地域における当院の役割はますます重要になっていくものと思われます。地域の医療ニーズに応え、地域の方々が健康上困ったことがあった際、しっかりとサポートし、皆さんから「山崎病院があって良かった」と言っていただけるような診療を常に心がけ、「地域に根差した医療と福祉」を実践していきたいと考えています。また医療は日々進歩しています。当院もスタッフ一同、常に最新の知識や技術を学びながら、より質の高い医療と福祉を皆さんに提供できるようにしていきたいと考えています。