国家公務員共済組合連合会 広島記念病院
(広島県 広島市中区)
宮本 勝也 病院長
最終更新日:2024/04/02


消化器疾患を専門とした「断らない医療」
広島駅から広島電鉄に乗り、原爆ドームや平和公園からほど近い本川町で下車し徒歩1分の場所にある「広島記念病院」。1947年に開業し、長年消化器疾患、中でも胃がん、大腸がん治療などを得意とする病院として市民にも広く知られている。2024年4月からは腹腔鏡手術の支援ロボットを導入し、ますます消化器治療の強みを深めている。そんな同院のモットーは、「断らない」「小回り」「高度」な医療の「3K」だという。「進行大腸がんの方の外科初診から手術までにかかる平均的な日数は9日。がんと聞くと患者さんやそのご家族はどうしても不安になるもの。『できる限り早く安心できるように』という意識が全スタッフにあるからこそ実現できるスピード感なんです」と穏やかな笑顔で話すのは、自身も多くの大腸がん、胃がんなどの手術に携わってきた宮本勝也病院長。より高度な手術を実践する消化器センター、中四国地方から幅広い患者が訪れる腹水治療センターの設置、そして地域の病院・クリニックとの連携体制などについて宮本病院長に詳しい話を聞いた。(取材日2024年2月15日)
消化器疾患の治療を強みとされているそうですね。

当院には長年そういう気質があり、地域のクリニックの先生方から「大腸がんの疑いがある患者さんがいるのでぜひ」といったご紹介も多くあります。腹腔鏡手術はその黎明期から採用しており、2024年4月からは新たに腹腔鏡手術の支援ロボットを導入し、泌尿器科や消化器疾患の手術に広く活用していきます。ロボットの強みは人間では難しい作業を代わりに行ってくれること。例えば人間の手は360度回転することはできませんが、ロボットであればそれが可能です。それにより人間の手では難しかった縫合がより適切に行えることが期待できたり、また3Dでの立体的で広く明るい視野も得られますから、より患者さんが安心して手術を受けられる環境にグレードアップできると考えています。またそれに合わせ広島大学から泌尿器科に2人の先生に常勤医師としておいでいただき、消化器疾患の手術の際にも科を超えた協力体制を実現できるようになりました。
消化器センターの役割についてお聞かせください。

「広島における消化器疾患のリーディングホスピタル」であることが当院のめざす姿のひとつ。2016年に開設した消化器センターでは「3K」の中でも特に「高度な医療」を象徴するセンターです。消化器センターでは外科・内科の先生方のみならず、病理の医師、放射線科の医師もカンファレンスに加わっていただき、その患者さんにとってベストな方法は何かという点についてより多角的な意見を出し合い、CTやMRIなどの高度な検査も取り入れながらディスカッションを行います。そのため患者さんやそのご家族の安心にもつなげられているようです。また「患者さんの思いに寄り添いたい」という考えが医師、看護師をはじめとした全スタッフに伝統的に受け継がれています。また当院では対応が難しい心筋梗塞などが疑われる場合はすぐにしかるべき病院へとご紹介する体制も整えています。
腹水治療センターについてお聞かせください。

腹水の原因は大きく分けて、がんの腹膜播種や腹膜炎などが原因で起こる場合、そして肝硬変などによる門脈圧亢進や低タンパクなどで血管内の浸透圧が低下し、血管に水分を保持できなくなった場合の2つにわけられます。腹水は通常誰にでもあるものですが、がんや肝硬変などが進行し、利尿剤では腹水を処理できないようになると、おなかにたまったままになり、そのおなかの張りで食事が思うようにとれなくなるなど、患者さんのQOLに大きく影響を与えてしまいます。そこで2泊3日の短期入院のあいだに腹水をろ過・濃縮して体に戻し、できる限り通常の状態に近づけるような治療を行うのがこの腹水治療センターです。治療は2週間に1回までという制約はありますが、中四国地方エリアから広く患者さんやそのご家族が足を運ばれています。
地域の病院・クリニックとの連携をさらに深めておられるとか。

広島市民病院が広島市の救急対応の窓口としてあり、その中でも虫垂炎や急性胆のう炎などの消化器疾患は当院へ依頼されることも非常に多くあります。ほかにも広島市内には広島大学病院や広島赤十字・原爆病院などがありますが、それぞれの強みを生かしながらスピード感をもって対応する体制が根づいてきました。また地域連携の強化として2023年より専門の連携コーディネーターを配置し、地域のクリニックへと毎日足を運び、当院が受け入れた患者さんのその後のご様子や、クリニックからの「こんな患者さんは送っていいのか?」「こういう検査はできるのか?」といった、これまでならば埋もれてしまっていたような細かな質問などにも詳しくお応えできる体制を作っています。名ばかりの連携ではなく、足を運んで地域現場の生の声を聞き、それらに当院側もお応えしていく必要があると考えており、その成果は着実にあらわれていると実感しています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

手術支援ロボットは、当院がめざす「高度な医療」において欠かせない存在となるでしょう。患者さんやそのご家族が安心できる医療を提供すると同時に、若い先生方の研鑽の場となってくれることも期待しています。加えて地域連携の体制もさらに充実させ、患者さんが安心して地域のクリニック、そして当院を頼れるように各所と関係性を深めていくつもりです。また市民の皆さんにはぜひ健康診断を受けていただきたいですね。健康診断は名前のとおり健康のバロメーターです。ご自身の状態を知り、疾患の早期発見・早期治療につなげてほしいと強く思います。その中でおなかの疾患が見つかったり、気になる症状がある場合はぜひ消化器疾患を専門とする当院を頼ってください。今後も広島における消化器疾患の治療に貢献していきます。当院のモットーは「断らない医療」。お困りごとや相談ごとがあれば遠慮なく当院にご連絡下さい。

宮本 勝也 病院長
広島大学医学部卒業後、1984年に広島大学第一外科に入局。県立広島病院小児外科を経て、1994年より広島記念病院に勤務し、2015年より現職。2024年からは腹腔鏡手術における手術支援ロボットも導入し、高度で安全性に配慮した医療を市民に届けるため、日々地域連携などにも奔走している。日本外科学会外科専門医。