医療法人社団おると会 浜脇整形外科病院
(広島県 広島市中区)
大石 陽介 院長
最終更新日:2023/03/14
急性期から回復期まで忠恕の心で対応
1978年に整形外科専門の病院として開院した「浜脇整形外科病院」。脊椎・関節・外傷の3つの専門分野を柱に、外来から救急まで幅広い領域をカバーしている。非常勤を含めて11人の整形外科医師が在籍しており、それぞれの専門性や豊富なリソースを生かすことで、同一の医師が一人ひとりの患者ニーズに合わせて診療、手術、リハビリテーションを一貫して対応。退院後のケアまでを一手に引き受ける。またナビゲーションシステムによる人工関節手術、内視鏡下での腰椎椎間板ヘルニア手術など、さまざまな技術を活用した診療にも取り組んでいるほか、リハビリについては浜脇整形外科リハビリセンターとの連携にも注力。患者の待ち時間軽減を図りながら、効率的な医療提供のための体制づくりを進めている。「当院に来てもらった患者さんは一生診ていくつもりで診療している。そのためにも質の高い医療を提供し続けていきたい」と話す大石陽介院長に、病院の歴史や理念、診療の特徴などについて詳しく話を聞いた。(取材日2023年2月10日)
まずは病院の歴史について教えてください。
当院は浜脇純一会長が、1978年にこの場所で開業されたのが始まりです。徳島大学医学部を卒業され、地域医療への想いが強かったことから、大学には残らずに開業されたと伺っています。当初は医師も2人程度で病床も40ほどでした。浜脇先生がカナダに留学された際、脊椎や各関節、手など専門性によって細分化された診療体制に感銘を受けられたことがきっかけとなり、病院の規模を拡大させると同時に専門性を高めていきました。現在では整形外科の医師11人、内科の医師1人、麻酔科の医師4人が在籍しています。開業から地域医療への貢献を掲げており、質の高い医療をアクセス良く提供するというのが私たちの役割。専門性の高い医療を受けようと思えば、やはり大学病院という選択になりますが、紹介状も必要ですし受診のハードルは低くはありません。ですから一般的な病院であっても専門的な医療を届けるというのが、私たちの使命だと考えています。
理念として忠恕(ちゅうじょ)の心を掲げていらっしゃいますね。
忠恕とは、良心に忠実であること、思いやりが深いことを意味します。その上で質の高い医療を提供し地域医療に貢献することが、私たちの理念になっています。患者さんにとって良い医療とは、迅速に病気を診断しできる限り早く治療を始めること。それを実現するためには、設備の充実とレベルの高い人材が必要不可欠です。例えばMRIは2台備えていて、急な検査にも対応できるようにしています。また機能を分化することで、スタッフや患者さんの利便性の向上を図っています。当院では入院や手術、救急を担当し、外来での診療やリハビリが必要な場合は、近くにある浜脇整形外科リハビリセンターが担当。外来の患者さんが受診している時に救急車が入ってくると診療が止まってしまいますし、落ち着いて受診することもできませんよね。そういったさまざまな姿勢にこそ、私たちの忠恕の心が宿っているのではないかと考えています。
現在はどのような患者さんが多いのでしょうか?
最も多いのは高齢者の変形性疾患です。腰だったら脊柱管狭窄症やヘルニア、膝や肩、股関節だったら変形性関節症、若い世代ではスポーツ障害、交通事故による骨折やけがなどの外傷が中心となっています。特に高齢者では骨粗しょう症に伴った大腿骨頸部骨折や圧迫骨折が圧倒的に多くなりますが、寝たきりの原因となることもあるので要注意です。エリア的には病院の近隣住民はもちろん、広島県内、島根、山口などからも来ていただいています。手術を伴う患者さんの中には全身疾患を持つ高齢の方も多いため、整形外科専門病院ですが内科の医師を配置。多様な合併症に備える必要がありますし、入院中の全身管理も必要ですからね。しかし心臓に重篤な病気を抱えているなど、手術に大きな危険が伴う際については大学病院などと連携して治療を行っています。診療においては脊椎、関節、外傷が3つの柱ですから、なるべく当院で完結できるように人材を充実させています。
診療の特徴についても教えていただけますか?
脊椎に関しては内視鏡を使った低侵襲な手術から、背骨の変形を矯正する手術まで、患者さんのニーズに応じてさまざまな症例に対応することが可能です。内視鏡下の椎間板摘出術は侵襲が少ないため、早期の社会復帰につながります。関節ではナビゲーションシステムを活用した低侵襲な人工関節手術に注力。これは人工関節を正確な位置や角度に設置するためのもので、切開箇所の縮小ができるほか、術後の脱臼予防やゆるみ、摩耗などの合併症を減らし動作制限の軽減をめざすことができます。外傷については高齢の方の骨折などが多く、早期対応が予後に影響するため、なるべく早い処置を心がけています。いずれにしても機能回復までが私たちの役割だと考えていますから、しっかりとリハビリを行い最後までフォローしていくというのは大きな特徴だと思います。
最後に今後の展望を含めてメッセージをお願いします。
けがを負ってしまった場合、治療や回復することはもちろん必要ですが、それ以上に大切なのが予防の視点です。特に高齢の方は骨折が寝たきりに直結してしまいますし、日本人は再骨折の割合が高く予後も悪くなっていくため、病気を防ぐという意識は高めていかなければなりません。ですから勉強会の開催など健康維持のための活動も積極的に推進していきたいと思います。基本的に一度でも診療を受けていただいた患者さんとは、一生お付き合いしていきたいというのが私のモットーです。可能な限り質の高い医療を提供しながら、受診いただいた方たちの健康を責任持ってサポートしていきたいと考えています。それは自分の学びにもつながります。例えば手術をした患者さんがその後どういう問題を抱えていくかなど、実際に対応していかなければわかりませんよね。ですから今後も患者さんと長く付き合いながら、一生を支えられる医療をめざしていきます。
大石 陽介 院長
1985年産業医科大学卒業。同大学整形外科教室に入局し、同教室助手、珪肺労災病院整形外科部長などを務める。アメリカ・カリフォルニア大学アーバイン校リーブアーバインリサーチセンター留学を経て、2003年に浜脇整形外科病院整形外科部長に就任。2013年より現職。