社会医療法人信愛会 畷生会脳神経外科病院
(大阪府 四條畷市)
吉川 将史 理事長
最終更新日:2022/04/22
患者に合わせた医療で地域のニーズに応える
生駒山の麓に広がる四條畷市にある「社会医療法人信愛会 畷生会脳神経外科病院」。最寄りのJR学研都市線忍ケ丘駅から徒歩7分ほど、近隣の駅や市内各所を結ぶ専用送迎バスも充実するなど、こまやかな配慮がある。現在270床、うち回復期リハビリテーション病床42床という同院は、急性期から回復期、在宅支援まで、連続性のある医療を提供する総合病院として、地域住民に親しまれる存在だ。その同院を2015年から率いているのが、2代目となる吉川将史理事長。脳神経外科で外来や手術を担当しながら、理事長として院内のマネジメントや地域医療との連携に奔走している。「医師や看護師などの医療職、事務職まですべてのスタッフが個々の患者さんに寄り添い、患者さんの想いを尊重した、オーダーメイドの医療を届けたい」との展望を抱く吉川理事長に、診療の特徴や思い描く病院像について語ってもらった。(取材日2020年5月14日)
まず、こちらの病院の歴史と地域での役割を教えてください。
当院は1986年に、現在よりも四條畷駅に近い場所で開院しました。初代理事長であった父が脳神経外科の医師だったこともあり、このような病院名になっていますが、当時から地域医療を支えるという社会的なニーズがあり、脳神経外科に加え複数の診療科をもつ190床の総合病院としてスタートしました。といいますのは、人口約5.7万の四條畷市には、市立病院のような公的な病院や、同規模の総合病院がないのですね。ですから当院は、行政からの要請や地域医師会や医療機関からのさまざまな要望にも応えながら、今日の姿へと成長してきました。またこの地域は開業医院が多く一方で病床数が少ないため、当院で患者さんの急性期や回復期を担い、最終的には地域医療につなぐという役割を果たしてきました。この結果、2011年には公共性の高い医療を担っているという厳格な要件を満たし、社会医療法人となりました。
どのような理念のもとで、医療に取り組んでいますか。
「誠実と信頼の医療」が当院の理念であり、その根底にあるのは、患者さんが安心して医療を受けられるという状況です。患者さんは症状も社会的な背景も個々に異なりますし、病気に対する考え方も人それぞれです。そこで当院では、スタンダードな医療を的確に提供するのは当然として、さらに患者さんの思いに寄り添い、各患者さんが希望する最適な治療をオーダーメイドで届けたいと考えています。そのためには、医療スタッフに限らず事務職などすべてのスタッフが患者さんとしっかり向き合い、患者さんが何を欲していてどうありたいと考えているのか、その想いを正しく受け止めなければなりません。いわば、われわれが医療人、社会人として誠実であり、患者さんから信頼されてこそ成り立つ医療のスタイルであると考えています。
脳神経外科での取り組みについて、ご紹介ください。
頭蓋底⼿術で世界的に知られる福島孝徳先⽣に、当院の顧問をお願いしています。福島先⽣のオペを希望して受診する患者さんは多いですし、専⾨性の⾼い⼿術⼿技を間近でご指導いただけることが、脳神経外科のレベルアップにつながっていますね。また、2019年の4⽉からは⼤阪医科⼤学脳神経外科の教授であった⿊岩敏彦先⽣を名誉院⻑にお迎えし、脳神経外科疾患全般とともに学術⾯でも質の⾼い指導をいただいております。また当院では脳卒中ホットラインを設けており、24時間脳卒中治療に対応し、また血管内治療も積極的に行っております。脳卒中救急は治療開始までの時間も大切ですので、救急隊や開業医院の先⽣⽅と当院医師が事前に打ち合わせて患者さんを受け⼊れ、スムーズに治療を始められる環境を整えています。これにより治療成績にも良い影響が出ています。今後はさらに⾎管内治療も意欲的に取り組み、⼈材育成にも努めたいですね。
脊椎脊髄疾患でも、特色ある診療を行っているそうですね。
脊椎脊髄疾患は、多くの病院では脳神経外科か整形外科のどちらかが担当します。しかし当法⼈では以前から「脊椎脊髄センター」を設け、両科の医師がそこへ所属して専⾨性をすり合わせながら診療しています。患者さんは、幅広い視点のもとで診療を受けられます。多科で診ることで患者さんにとってよりよい治療を提供できるだけでなく、医療安全面でも大きなメリットになると考えています。当院ではなるべく診療科の垣根を取り払い気軽に相談しあうことで、どの科でも幅広い症状を診療できる⾵⼟を育みたいと考えています。一症候を多方面から診ると原因がわかりやすいし、また見落としをなくすことにも結びつきます。またドクター陣にとっても他科にすぐ相談できる環境は安心につながると思います。そのことでマンパワー不⾜も減るでしょう。さらに他の医療職や事務職なども含めたスタッフ全員で患者さんと向き合うことにより、ベストな医療を提案したいのです。
今後の展望と地域の方へのメッセージをお聞かせください。
各患者さんに最も適した治療を行うためには、患者さんご自身も病気についてよく理解し、希望を私たちに伝えてほしい。そのためにも、気になったことやわからないことはそのままにせず、医師を困らせるぐらい、どんどん質問して理解していただきたいですね。また、患者さんだけでなく、地域の医療・介護関連機関とも、治療や連携について気軽に連絡を取り合いたいと考えています。現在、当院には4名の副院長がいて、院全体で診療や経営のマネージメントに取り組む雰囲気ができつつあります。特に地域連携を担当する看護師の副院長は、訪問看護などを通じて地域とのつながりを深めてくれています。理事長である私だけでなく、多くの医師やスタッフが意見を出し合い、できることから取り組み、これまで以上に患者さんや地域に貢献できる病院をめざしたいと考えています。
吉川 将史 理事長
2013年金沢医科大学卒業。脳神経外科を専門とし、同院開設者である父・吉川幸弘前理事長の後任として2015年より理事長に就任。同院脳神経外科で日常的に診療を担いつつ、若き理事長として院内各部門の活性化や地域連携体制の拡充に取り組み、「スタッフ全員で患者と向き合い、患者に寄り添う総合病院」をめざす。