医療法人春秋会 城山病院
(大阪府 羽曳野市)
黒岩 敏彦 理事長
最終更新日:2025/09/29


南河内地域における急性期医療の中核を担う
古墳や大学のキャンパスも点在する羽曳野市の中央部にある「城山病院」。1978年の開業から今日まで、救急診療や外科系に力を入れる病院として、南河内医療圏に住む人たちの健康を守ってきた。特に充実した診療体制を誇る脳神経外科では現在、脳血管障害治療や定位放射線治療機器による治療をはじめ、脳ドックやAIの画像解析ソフトを活用した認知症リスクの予測も開始。脳ドックではアミロイドPET-CT検査が行えるため、新規抗認知症薬の導入が可能だ。また脊椎領域や人工関節領域では、先進かつ高度な技術を駆使した低侵襲な手術に努め、豊富な診療実績を残している。2024年から理事長を務める黒岩敏彦先生は、若い頃に同院で脳神経外科手術に携わった経験も持つドクター。現在は外科系診療のさらなるレベルアップに加え、地域の高齢者医療に対応すべく内科診療の拡充、そしてがんの遺伝子パネル検査や遺伝子カウンセリングなど次世代の医療にも意欲的に取り組むとともに、医療ツーリズムにも力を入れている。取材では、診療の特色や医療環境の変化を踏まえた今後の展望についても語ってもらった。(取材日2025年8月4日)
最初に、御院の歴史や地域とのつながりをご紹介ください。

当院は、和歌山医科大学出身の産婦人科と外科の医師のご夫妻、さらに大阪医科大学脳神経外科の教授が協力し、現在の病院から少し離れた場所で1978年に開業しました。このため開業時から脳神経外科、外科、内科があり、その後数年で整形外科やICUも開設するなど、外科領域や神経系、救急診療を中心に発展してきました。私は1979年に大阪医科大学を卒業して脳神経外科へ進んだので、新米医師時代には先輩医師に連れられ、手術をしにここまでよく来たものです。2006年には今の場所へ新築移転し、脳血管内治療や心臓血管外科治療なども開始しました。この地域は丘陵地帯に住宅街が広がり、当院の目の前には大阪はびきの医療センターがあり、当院にはない小児科や産婦人科の診療をされています。地域の方には「急な体調不良があっても、この羽曳が丘に来ればどちらかの病院で対応してもらえる」と頼っていただければうれしいですね。
南河内地域の急性期医療において、重要な役割を担っています。

歴史的な経緯もあり、外科系の救急医療には特に力を入れています。救命総合医療センターでは救急医療を専門とする医師が診療にあたりますし、夜間でも神経系、循環器系、消化器系、整形外科など外科系の医師と、一般内科の医師を含めた4~5人が宿直に入り、救急の医師と連携していますので幅広い症状に迅速に対応できます。そのため南河内地域はもちろんのこと、奈良県からも多数の救急搬送を受け入れています。また高度急性期医療を滞りなく提供するために手術室6室を設け、手術支援ロボット、ナビゲーションシステムを利用した頭部や脊椎に対する先進の手術機器、そして定位放射線治療機器やPET-CT、3テスラのMRI、MDCT、CTなど新鋭の検査機器を導入しています。これら診療環境の充実もあり脳神経系や消化器、泌尿器、心臓血管、さらに低侵襲脊椎手術や人工関節・膝関節再建などで先進の治療が可能になっています。
脳疾患領域では、認知症の診療に力を入れていると伺いました。

そうですね。また、当院ではAIでMRI画像を解析し、脳萎縮の場所と程度から認知症リスクを予測することにも力を入れています。顕著な萎縮や臨床症状が見られるようであれば、アミロイドPET-CTでアルツハイマー型認知症の原因物質と考えられるアミロイドβが脳内にどの程度蓄積しているかを詳しく調べ、適応があればレカネマブやドナネマブなど新規抗認知症薬を用いた治療を始めることも可能です。認知症は患者さんの関心が高い領域ですので、多忙な方でも検査を受けやすいようにさまざまなコースを用意しています。ほかにも脳疾患では、以前から定位放射線治療機器を用いた「切開しない」脳腫瘍の治療に注力しており、近畿の広域から患者さんのご紹介があります。また、顔面けいれんや三叉神経痛には定位放射線治療機器や神経血管減圧術による治療を実施していますし、今後は特発性正常圧水頭症の治療にも力を入れたいと考えています。
運動器や消化器、心臓血管領域などの強みもご紹介ください。

整形外科領域では、脊椎と膝関節に特化した部門があります。低侵襲脊椎センターは、従来の手術よりも小さな切開と局所麻酔による内視鏡手術が特色です。術後3時間程度で歩行が見込め、日帰り手術も可能ですので、長期入院が難しい患者さんにも適しています。また人工関節・膝関節機能再建センターではナビゲーション手術などを導入し、患者さんのニーズに応える多彩な治療を安全性に配慮しながら行える環境を整備。また外科系領域で2022年12月に導入した手術支援ロボットは、直腸や結腸などの消化器がんや前立腺がんを中心に手術数が順調に増加。どの領域でも手術後の患者さんではリハビリテーションが必要となるため、院内には回復期リハビリテーション病床もあり、急性期からリハビリテーション、回復期まで多職種で切れ目なく連携し、在宅復帰をサポートしています。
地域との連携や、今後の展望についてお聞かせください。

患者さんの入退院支援や地域との連携を担うクオリティマネジメントセンターという部署があり、地域の医療機関や先生方と日々顔の見える関係づくりに努めています。地域の医療従事者が参加できる勉強会も、盛んに行っています。また年に2~3回程度は裏庭で「桜祭り」など地域の方に来ていただけるイベントを開催。医療連携、地域連携には非常に力を入れています。ですので地域の高齢化を踏まえ、今後は内科系の診療体制をもう少し充実させていきたいと考えています。さらに、より長期的には人口減少の時代へと向かっていますので、病院として生き残るために、海外からの医療ツーリズムの受け入れや、がん遺伝子検査、さらに検査結果を踏まえた遺伝カウンセリングなどにも取り組み始めました。充実した検査・治療環境を維持しつつ、将来的な医療ニーズも注視しながら、地域の急性期医療をリードし信頼される病院であり続けたいですね。

黒岩 敏彦 理事長
1979年大阪医科大学を卒業後、同大学脳神経外科へ。米国アルバートアインシュタイン医科大学モンテフィオーレ病院留学、大阪府三島救命救急センターなどを経て2000年より大阪医科大学脳神経外科学教授、2012年より大阪医科薬科大学病院病院長、関西BNCT共同医療センターの設立にも尽力。2019年より畷生会脳神経外科病院名誉院長、城山病院顧問などを務め、2024年4月より現職。大阪医科薬科大学名誉教授。
自由診療費用の目安
自由診療とは脳ドック/1万8000円~





