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地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪母子医療センター

(大阪府 和泉市)

倉智 博久 総長

最終更新日:2023/06/19

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高度周産期小児医療からローリスク分娩まで

1981年に堺・泉州・南河内など南大阪地域の周産期を担う病院として診療を開始した「地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪母子医療センター」。1991年には小児医療部門と研究所がスタートし、1999年には総合周産期母子医療センター、2018年には小児救命救急センター、2022年7月には府内で8施設の小児中核病院の一つとなった。周産期・小児のすべての分野において大阪府の中核的な施設である同院は、343の稼働病床を有し、年間1万1818人(2021年4月~2022年3月実績)の入院患者を診療し、ハイリスク分娩や低出生体重児、小児がんを含む難治性の小児疾患など高度・専門医療に対応。一方で地域のためローリスクな分娩や幅広い小児疾患患者も積極的に受け入れている。総長の倉智博久先生は「高度専門医療だけでなく、地域の方々のニーズに合った医療提供を大切にしている」と語る。少子化の中でも分娩件数が年々増加している同院は、2029年には新しく病院の建て替えを予定。新たな形で次へとつなぐ構想に取り組む倉智総長に、同院の特徴について話を聞いた。(取材日2023年4月18日)

病院の歴史と特徴についてお聞かせください。

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当センターは、周産期医療の専門的な基幹施設として1981年に開設されました。1991年には、小児医療部門と研究所が開設され、以来妊産婦と子どもに関わる高度・先進的な医療を広域にわたり提供しています。ハイリスク妊産婦、病的新生児や超低出生体重児の出産など、ほかの医療機関や総合周産期母子医療センターで受け入れ困難な患者も多く受け入れているほか、小児がんを含む難治性の小児の内科的疾患や先天性心疾患などの新生児・小児の外科的疾患に対する高度専門医療も幅広く提供しており、規模・診療内容ともにトップクラスのものとなるよう努めています。また、大阪府のOGCS(産婦人科診療相互援助システム)、NMCS(新生児診療相互援助システム)において産科・新生児科の緊急搬送コーディネートを担い、必要な場合には当センターの医師を他病院へ派遣するなど、母子の救命に尽力しています。

高度医療だけでなく、ローリスクな分娩にも対応されているとか?

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当センターの責務は、周産期と小児の高度で新しい医療を提供することですが、一方で地域の皆さまへの医療提供も大切にしています。健康な妊婦さんも地元で安心して出産できるように環境を整え、ローリスクな分娩にも対応しているほか、飛び込み分娩や未受診妊婦も受け入れています。また、患者サービス、特に産後ケアに力を入れています。小児部門でも、一般的な小児疾患を内科・外科ともに受け入れています。小児救急医療では、2018年11月より小児救命救急センターとして3次救急を担当し、2020年12月には大阪府の二次救急告示医療機関に認定され、2022年4月からは泉州の小児救急輪番病院にも加わり一部一次救急にも対応しています。また、「にんしんSOS」、子どもの健康と環境に関する全国調査「エコチル調査」、「大阪府妊産婦こころの相談センター」などについても参画。母子保健に関する相談業務や調査、情報発信なども行っています。

こちらの病院では、無痛分娩に力を入れているそうですね。

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はい。患者さんからのリクエストや時代の要望もあり、「無痛分娩」は積極的に実施しています。無痛分娩の課題の一つは安全の担保ですが、当センターでは麻酔科が充実している強みを生かし、365日24時間体制で麻酔科医師による無痛分娩を実施しています。もう1つの課題は家族の理解です。当センターでは、2018年より「無痛分娩教室」を開始。パートナーとともに参加していただき、無痛分娩に対する正しい知識や情報、合併症をなくすために私たちがどのような取り組みを行っているかなど、詳しくお話をさせていただいています。そういった取り組みの結果、実施数は大きく増えて、現在の経腟分娩における無痛分娩の割合は44%となっています。無痛分娩を一例として取り上げましたが、当センターでは患者さんとご家族に診療について十分知っていただき、納得して医療を受けていただくことを重視しています。

医療スタッフ・指導体制・研究体制も充実していると聞きました。

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高度専門医療の提供にはチーム医療の推進が必要不可欠です。医師、看護師、メンタルケアの臨床心理士やホスピタルプレイ士、退院後のフォローアップを行う保健師やケースワーカーなど、多様な医療スタッフが一体となり子どもに寄り添った医療を提供しています。またスタッフには治療についてや子どもならではの接し方といった知識が必要です。医師のほか、看護やコメディカルの実習生も積極的に受け入れています。同じ施設内に研究所があることも強みで、病院と一体となってゲノム解析・病態解明や診断・治療法の開発に取り組み、学術的にも大きな成果を挙げるとともに、それを臨床の場に還元しています。新生児マススクリーニング検査では検査機関として大阪市を除く大阪府下の赤ちゃんの先天性疾患の早期発見早期治療に貢献しています。また、近年は重症複合免疫不全症(SCID)や脊髄性筋萎縮症(SMA)の検査・診断・治療にも対応しています。

最後に読者の方へメッセージをお願いします。

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私たちの役割の一つは周産期や小児における高度で専門的な医療を提供すること、もう一つは地域住民や地域の医療機関のニーズに応えていくことです。日本全体としては少子化傾向にあるものの、当センターの分娩件数や搬送数は増加傾向にあります。今後も周産期小児医療に対するニーズは高まると予測できることから、2029年には建て替えを完了し、新病院へと生まれ変わる予定です。新病院では、総合周産期母子医療センターおよび小児の基幹病院としての機能を維持していくことはもちろん、感染症対策や病室の個室化を進めるほか、リハビリテーションの充実を図るなど、高度専門的医療の提供に加えて、地域の皆さまがより安全安心に過ごせる空間をめざしていきます。これからも妊産婦さんやお子さん、そのご家族に寄り添ったきめ細かい対応を心がけ、未来を担う子どもたちが健やかな成長を届けられるようまい進していきたいと思います。

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倉智 博久 総長

1976年大阪大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院で研修。大阪厚生年金病院で勤務し、1984年から2年間アメリカ国立衛生研究所に留学。大阪大学と大阪府立病院で勤務。2000年山形大学医学部産婦人科教授。2014年大阪府立母子保健総合医療センター病院長、2016年4月から現職。婦人科がんや女性のヘルスケアを専門として、講演や女性医学誌などでも広く情報を発信する。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

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