医療法人大慶会 星光病院
(大阪府 寝屋川市)
川上 勝弘 院長
最終更新日:2024/03/14
腰の内視鏡手術を軸に、急性期医療を担う
二次救急告示医療機関の指定を受け、約半世紀にわたり救急医療を担い続けてきた「星光病院」。現在は24時間365日体制で救急搬送に対応しつつ、日中は外来診療も実施する。多くの患者を受け入れるため院内トリアージを随時実施し、緊急度や重症度に応じた適切な治療が行えるように努めている。さらに数年前には腰椎・脊椎疾患に対する内視鏡手術を導入し、体の負担が軽く早期の回復がめざせる治療にも力を入れてきた。長らく同院で勤務し4年前に院長となった川上勝弘先生は、救急診療や脳・脊椎疾患のエキスパート。現在も自ら内視鏡手術に携わり、近隣の大学病院と連携して後進の育成にも情熱を注ぐ。「強みである内視鏡治療や救急診療を軸に、寝屋川の急性期医療の一端を支える病院でありたいですね」と語る川上院長に、同院の診療の特色や地域医療に対する考え、医師としての思いなどを聞いた。(取材日2024年1月25日)
病院の歩みや、地域医療における役割をご紹介ください。
当院は1974年に開院しました。寝屋川市にはその当時も今も、規模の大きい病院があまりありません。ですから、市内にあるいくつかの私立病院が、それぞれ強みとする領域で救急診療を担わざるを得ないという実情があります。私自身は守口市にある関西医科大学附属滝井病院(現・関西医科大学総合医療センター)で救急科や脳神経外科で勤務した後、今から30年ほど前にこちらへ入職。ですから当院でも、救急医療や脳外科、さらに脳と近い領域である耳鼻咽喉科の疾患を中心に、診療を行ってきました。現在も24時間体制で救急診療を実施していて、2023年12月1日~12月31日の救急搬送は444件。事故やケガによる整形外科疾患、頭部や脳外科疾患、そして腰の救急が多いですね。なお近年では、豊富な診療経験をもつ脳神経外科の医師が新たに加わったこともあり、私自身は脊椎疾患を中心に対応し、腰の救急診療や、内視鏡手術に力を入れています。
腰椎の内視鏡手術について、詳しく教えてください。
以前から腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊椎管狭窄症などに対して、切開しての顕微鏡手術は行っていましたが、やはり痛みが強いですし、回復まで非常に時間がかかります。一方、内視鏡手術はごく小さな傷口から内視鏡と鉗子が通るチューブを入れ、患部を生理食塩水でクリアに保ちながら手術を行います。傷口が小さいので患者さんの負担が軽く、多くの場合は4~5日程度で退院、短期間で日常生活に戻れるのですね。そこで、当院では2019年に内視鏡手術を導入。関西医科大学総合医療センターの脳神経外科と連携しながら診療体制を整えて、多数の手術に対応してきました。当初は患部が1椎間の場合が主な手術適応でしたが、患部が複数ある多根性障害と呼ばれる状態に対しても、内視鏡手術を行える場合が増えています。市内だけでなく京阪本線沿線からの紹介も非常に多いです。
腰の救急診療にも力を入れているそうですね。
救急搬送される腰の痛みでは、約半数がご高齢の方の圧迫骨折です。非常に痛いですし、動けず2週間も寝ていたら寝たきりのリスクが高まるので、なるべく早く治療したいのです。当院では経皮的椎体形成術という手術を行います。これも内視鏡と同じように背中にごく小さな傷口をつくり、そこから風船のついた針を入れて膨らませ、できた空洞に骨セメントを入れ、骨折した骨の内部を満たします。そうすることで折れてグラグラしていた骨の固定が望め、早い段階での痛みの軽減も期待できます。さらに、術後の急性期リハビリテーションでは、振動ヘッドつき空気圧式マッサージ器など先進の機器も活用しながら、残った痛みや動きにくさの改善をめざします。また当院は急性期病院ですので、必要に応じて、回復期リハビリテーションに力を入れる近隣病院への転院もサポートします。
日々の診療や病院運営で、先生が大事にされていることは?
当院を受診された患者さんとは何かご縁があっての出会いだと思っていますので、「私がいる限り、一生診ていきますよ」という強い信念で向き合っています。ケガや急病に見舞われた患者さんやご家族は混乱されますし、思わぬ言動をとってしまうこともあります。これは医療現場に限ったことではなく、今は社会全体が、言いたいことを強く言う傾向にあるような気がします。このような場合、私は患者さんにとって何がより良いのかを考え、本音で向き合い、時には厳しい言葉でお話しすることも。これは「あなたのことは最期まで診ますから」という責任感に基づいて、素の人間関係を大事にしたいと考えているからです。時にはスタッフや看護師に迷惑をかけてしまうこともありますが(笑)、小さな病院で頑張ってくれているスタッフとともに地域の救急診療を担い続けるためにも、さまざまな場面に医療者としての責任感をもって対応したいと考えています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
近年の取り組みによって、「内視鏡手術や腰の救急では星光病院」と知られるようになりました。今後も診療技術や診療体制をさらに充実させ、この領域では地域の方が遠くまで足を運ぶことなく、当院で十分な治療を受けてもらえるようにしていきたいですね。そのためにも、私自身が内視鏡に関してさらに専門性を高めるため準備を進めていますし、大学と連携して若い医師の指導にもいっそう力を入れています。そして病院としての未来像ですが、スタッフには朝礼などで「星の光ではなく、LEDをめざそう」と話しています。小さな規模の医療機関かもしれませんが、得意分野で質の高い診療を責任をもって提供し、病院として輝き続けられれば、寝屋川の人が安心して暮らすための1つの支えにはなれるはずです。これからも地域の中での役割を大事にしながら、責任感のある医療を提供していきたいですね。
川上 勝弘 院長
関西医科大学卒業。同大学附属滝井病院で救急医療や脳神経外科の診療に従事した後、39歳で星光病院へ入職。救急、耳鼻咽喉科疾患、脳神経外科という3つの専門を生かしながら同院の診療をけん引し、2019年より院長に就任。現在も自ら内視鏡手術をほぼ毎日担当し、真摯に患者やスタッフと向き合う。長年続けてきた趣味のマラソンは、現在も42.195キロをめざす実力派。