大動脈弁狭窄症に対する
経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)
医療法人 徳洲会 八尾徳洲会総合病院
(大阪府 八尾市)
最終更新日:2026/06/04


- 保険診療
- 心不全
- 大動脈弁狭窄症
体がだるい、階段を上ると息切れがするといった症状は、高齢になれば誰にもあると思って放置されがち。だが心臓は、気づかないうちに悪くなっていて、突然発作に襲われる人も多い臓器だ。大動脈弁狭窄症もそんな病気の一つ。「無症状であっても、超音波検査で大動脈の弁が狭くなっているとわかることも多いのです」と話すのは心臓血管外科部長の薦岡成年先生だ。大動脈弁狭窄症の外科手術も行う一方で、カテーテルを使って新しい弁を留置する「経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)」という治療も多く手がけている。薦岡先生に、大動脈弁狭窄症とTAVIについて詳しく解説してもらった。(取材日2026年4月15日)
目次
心臓が悪いと無意識に体に負担をかけないような生活スタイルに。そのため症状を自覚していないことも
- Q大動脈弁狭窄症とはどんな病気ですか?
- A
心臓は血液を駆出するポンプですが、血液を一定方向に効率良く流しているのが弁です。心臓がぎゅっと小さくなると出口にある弁が開いて入り口の弁が閉じ、心臓が大きく膨らむと出口の弁が閉じて入り口の弁が開きます。心臓には4つの弁がありますが、左心室と大動脈の間にあるのが大動脈弁。その弁は3枚の薄い膜でできていて、動脈硬化が進むと少しずつカルシウムが沈着して固くなるため、開閉がしづらくなり、心臓から大動脈へ送る血液の出口が狭くなってしまいます。十分な圧力をかけられなくなって全身に血液が送り込めず、左心室に圧がかかりすぎて負担になってしまうのです。
- Qどういった症状がありますか?
- A

2023年11月から心臓血管外科部長を務める薦岡成年先生
大動脈弁狭窄症は、弁の動きが徐々に悪くなるため、無症状の期間が長い病気ではありますが、倦怠感、息切れ、動悸、めまいなどの症状がだんだんと現れます。悪化すると心不全の発作を起こしたり、人によっては失神や突然死に至ったりするケースも。心臓の超音波検査で弁の狭さの重症度を診断して、手術適用を決めます。無症状であっても重症とわかれば、その後の生命予後を考えて治療や手術を検討します。無症状で病気が進んでいる方は、無意識に体に負担をかけないような日常生活スタイルに変化しているために、症状を自覚していないことも多いのです。無症状でも心臓の雑音などが指摘されたら、専門の医師に診てもらうことが大事ですね。
- Qどんな治療が必要なのでしょう?
- A

ハイブリッド手術室を備え、高度で低侵襲な治療を行う
軽症であれば薬物療法を行いますが、重症の場合は新しい弁に換える必要があります。通常は胸を開け、人工心肺装置を使って外科的な手術をしますが、そういった手術が難しいご高齢の方でも受けられる新しい治療があります。TAVIといって、胸を切らずにカテーテルを使って新しい弁を入れる治療で、高齢者だけでなく併存疾患がたくさんある方なども適応する低侵襲な治療です。原則は80歳以上が対象ですが、75歳から80歳の方は患者さんの状況や希望を踏まえて検討します。年齢だけでなく、日常生活の自立度など患者さんの状態から適切に判断できるよう努めています。体への負担に配慮した治療なので、適応が拡大しつつありますね。
- QTAVIの具体的な内容を教えてください。
- A

低侵襲な治療が、これまで治療が困難だった患者の新たな選択肢に
全身麻酔をした後、足の付け根からカテーテルを入れ、カテーテルの先につけた折りたたまれた弁を大動脈まで運び、大動脈弁に留置します。ほとんどの場合足の付け根から入れますが、CTの画像によっては首の動脈や鎖骨下静脈などからの挿入を選ぶこともあります。体への傷は、カテーテルを通すための約1cmほどの切開だけですし、終了後も目が覚めたら歩くことも可能で、1週間前後で退院できます。外科的手術であれば3時間ほどかかりますが、約1時間の治療時間でかつ低侵襲。入院期間も1週間前後ですし、循環器疾患の中でも劇的な症状の改善も望める治療法なので、患者さんのメリットも多いと考えています。
- Q治療後に気をつけることはありますか?
- A

患者の将来を見越した適切な治療の提案を行っている
大動脈弁の内側に新しく人工弁を設置するため、必ずしもジャストフィットするわけではありません。脇漏れが起こり大動脈弁逆流症になるリスクもありますので、定期的な検査は大切です。動悸や息切れがなくなったからと定期受診を中断したくなる気持ちもわかりますが、お薬の服用も必要ですし、簡単な超音波検査で大動脈弁逆流症が現れていないか確認できますので、年に1、2回は検査を受けましょう。治療後の合併症では、植え込み型ペースメーカーを入れる必要が出てきたり、血管内のカルシウムが沈着して石灰化した破片が脳に届くことによる脳梗塞を発症したりするケースがありますが、いずれも治療の精度向上により年々少なくなっています。

薦岡 成年 心臓血管外科部長
2003年防衛医科大学卒業。自衛隊関連病院で経験を重ねた後に、山形県や福岡県の病院の循環器内科に勤務。2007年岸和田徳洲会病院の心臓血管外科に入職し、緊急例、待機例を問わずさまざまな心臓血管手術に携わり、2020年同院入職。専門は心臓血管外科全般。日本外科学会外科専門医、日本心臓血管外科学会心臓血管外科専門医、日本循環器学会循環器専門医。





