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地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪精神医療センター

(大阪府 枚方市)

岩田 和彦 院長

最終更新日:2025/04/07

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幅広い知見を結集して心の健康を支える

「大阪精神医療センター」は、大阪府の基幹精神科病院として、大阪府民の心の健康をサポートしている。1926年に大阪府立中宮病院として設立、2006年に独法化され、2013年には施設全体をリニューアル、2026年には開院100周年を迎える長い歴史を持つ病院でもある。現在は、473床の入院設備を備える病院として、精神科救急や難治性の精神疾患の治療にも対応。受け入れ医療機関が不足している児童思春期の心の問題や多様化している依存症、認知症の診療にも率先して取り組んでいる。さらに、大阪府の災害拠点精神科病院として、自然災害、感染症パンデミックなどが起きた際に心のケアなどを行う「DPAT(ディーパット)」と呼ばれる災害派遣精神医療チームを組織できる体制も整えている。病院の基本理念である「すべての人に心の健康を」を大事にしながら、「最前線の現場で最先端の精神医療の提供に努めていきたい」と語る院長の岩田和彦先生に、地域における同院の役割、注力している診療、特徴ある研究機関「こころの科学リサーチセンター」の設立の狙いなどについても語ってもらった。(取材日2025年2月14日)

こちらの病院の役割や特徴について教えてください。

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当院は、大阪府の基幹精神科病院です。公立の総合病院や大学病院の中にも精神科は設置されていますが、公的な医療機関として精神科を専門としているのが当院の特徴です。精神科医療の前線を担う医療機関として、重症の患者さんなどを24時間365日体制で受け入れています。治療抵抗性統合失調症などの難治性精神疾患に対する専門治療にも注力しています。また、精神疾患の場合、急性期の後に慢性期が長く続く傾向があり、急性期を脱してもすぐに元の生活に戻れないことが少なくありません。このため、急性期から社会復帰まで切れ目のない医療の提供に努めています。精神科リハビリテーションとして、自立生活技能の回復や再発予防のために、ストレスへの対処法などを身につける心理社会的治療なども取り入れており、在宅生活の支援が必要とされる方には精神科訪問看護も提供しています。

現在、特に力を入れている診療はありますか?

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当院は大阪府の精神医療の最後の砦ですので、精神科救急は当院の診療の大きな柱です。府内の措置入院の依頼は以前から積極的に受け入れています。また、依存症も注力している分野です。アルコールや薬物に加え、近年ではインターネットやゲーム依存、そしてギャンブル依存も社会的に大きな問題ですね。当院では、こうした現代社会特有の依存症の診療にも注力しています。ギャンブル依存などはご自身の自覚が乏しい場合も多く、受診のハードルも高いのが特徴です。このため大学と共同でギャンブル依存度をチェックできるアプリを開発し、「おおさか依存症ポータルサイト」を通して提供しています。こうした活動を通じて、相談・受診につなげたいと考えています。また依存症は仕事や生活の維持に大きく影響するため、医師、看護師や心理士、ソーシャルワーカーなどに加え、さまざまな関係機関、司法書士や弁護士等とも連携しながら社会復帰をめざします。

子どもの心の問題や認知症にも対応されていますね。

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子どもの数は減っているのに、心の健康に問題を抱え、診察を受ける若者は増えています。近年は児童思春期のケースに対応できる施設も増えましたが、依然として数は少なく、入院治療まで行う病院がほとんどないため、当院でも遠方から患者さんが来られます。敷地内に大阪府立刀根山支援学校の分教室があり、義務教育のお子さんは入院しながら学習が継続できます。医師、看護師や心理士、保育士など多職種が関わり、一人ひとりに合わせた治療プログラムを提供していきます。一方、認知症は発症してしまうと、発病前の状態を取り戻すのがかなり難しくなるため、予防と早期発見のための取り組みをさらに充実させたいと考えています。市を挙げて認知症の早期発見に取り組んでいる枚方市と協力し、高齢者の認知機能測定を行う「シニアのための脳力チェック健診」、認知症予防介入プログラムである「こころとからだ生き生き教室」などを実施しています。

研究や人材育成にも熱心に取り組んでおられます。

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2020年春に「こころの科学リサーチセンター」を開設しました。基礎研究から専門性の高い研究、さらに医療政策の効果検証まで、精神医学に関わるさまざまなレベルの医学研究に取り組み、精神医学の発展に貢献することを目標にしたセンターです。研究のみを行う閉じられた研究所ではなく、研究成果を実際の臨床の場面に活用することを基本姿勢としており、さらに当院の臨床で実践したことをほかの病院にも展開するなど、研究から臨床へ、臨床から社会実装への橋渡しとなるような研究を行う機関をめざしています。名称を「こころの“科学”リサーチセンター」としたのは、医学・生物学分野だけではなく、脳科学や情報科学、教育学、社会福祉学、法学などさまざまな学術分野の研究者が集い、現代社会が直面する心の健康の課題に対し、各分野の英知を結集して研究・開発に取り組んでもらえる場所でありたいと考えたからです。

今後の目標を聞かせてください。

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「こころの科学リサーチセンター」では、現在、依存症、認知症に対する研究ユニットが中心ですが、今後は発達障害、災害時のメンタルヘルスなど、社会の要請に合わせたさまざまな研究課題に取り組んでいきたいですね。精神科の医師や看護師などの専門職の教育・研修にも、さらに力を入れる必要があります。診療については「最前線の現場で最先端の医療」を提供することが目標です。現実には、病院で最先端の治療を受けられる機会は少ないのですが、だからこそ当院は、精神科救急医療から依存症、認知症まで、お子さんからご高齢の方まで対応できる体制を整え、診療の中で課題となったことについてはしっかりと研究を行い、その成果を次の診療につなげていきます。そうした取り組みを重ねていくことで、最前線で最先端の治療を提供できる病院となれるよう努めていきたいと考えています。

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岩田 和彦 院長

自治医科大学卒業。大阪府立病院(現・大阪急性期・総合医療センター)で初期臨床研修の後、大阪府門真保健所、大阪府こころの健康総合センター、自治医科大学病院精神科などで精神医療・精神保健福祉業務に従事、京都大学大学院医学研究科(社会健康医学系専攻)では臨床疫学を修める。2019年より現職。保護犬を飼うなど大の犬好き。

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