医療法人亀廣記念医学会 関西記念病院
(大阪府 枚方市)
北浦 祐一 院長
最終更新日:2025/09/08


多職種、地域全体リエゾンで患者を支える
1983年、枚方市に設立された「関西記念病院」。同院の基本理念は「善きことを思い善きことを行う医療」。地域に根差し、精神科医療を基本として社会福祉にも参画し、悩める多くの患者とその家族を支え、地域の人たちから頼られる存在となってきた。2025年4月に北浦祐一先生が院長に就任。「今ある精神症状だけを診ていくのではなく、患者さんが先の人生を意識することが大切」と北浦院長は話す。そのため、医師や看護師、臨床心理士をはじめとする多様な専門職種による院内のリエゾン(連携)はもちろん、地域の医療施設や関連施設など地域でのリエゾン医療の実現をめざしている。今回、北浦院長に取材し、リエゾン・コンサルテーション精神医療や、その取り組み、今後病院がめざす医療について聞いた。(取材日2025年7月22日)
北浦先生は2025年4月に院長に就任されたそうですね。

はい。前任の院長が退職されることになり、関西医科大学附属病院精神科学教室の人事により院長を拝命しました。これまで私はリエゾン・コンサルテーション精神医療を中心に診療を行ってきました。精神症状や体の病気をお持ちの方の精神症状を診ていく中で、他科の先生方や各分野の専門職と連携を取りながら行うチーム医療がすごく重要だと実感してきました。総合病院だけではなく、単科の精神科の病院である当院でも、スタッフとしっかり連携しながら患者さんを治していくというところは、場所は変わっても同じです。今回、当院院長に就任し実現したいこととしては、院内のリエゾンはもちろんですが、地域でのリエゾン医療を提供していくこと。この枚方市の周辺の地域のほかの病院や関連施設、保健所など医療に関わる方々との連携も大切にして、頼りにされる病院をめざしていきます。
リエゾン・コンサルテーションを大切にしているのはなぜですか?

個人的なきっかけとしては、学生時代に高齢の身内が病気で入院し、その時にせん妄と呼ばれる状態になったことです。当時身内がいた病院には精神科の医師がおらず、非常に苦しそうでした。そして医学生から医師になり、精神科を回っている時に、体がつらい時に精神症状が出ることを目の当たりにしたんです。その経験から、身体疾患と精神的問題とを併せ持つ患者さんを対象とするリエゾン精神医学を専門にしてきました。大切なのは、今ある精神症状だけを診るのではなく、患者さんが今後どう生きていくか、その人生を意識していくこと。医師が薬やお話をして治療していくのはもちろん大事なんですけれど、その後にサポートしてくださる方は欠かせないわけで、そういった方との連携はずっと続いていきます。リエゾンとはフランス語で連携という意味ですが、そのリエゾン=連携を意識した医療は、精神科医療にとって非常に大事だと考えています。
地域における同院の役割は何でしょうか?

まず枚方市には精神科症状で入院ができる施設はさほど多くないため、地域における精神症状でお困りの方の通院や入院を担う部分は非常に大きいと思っています。そして周辺の精神科がない病院との連携はすごくニーズもあると思うので、今後は強化していくべく関係の構築に努めている最中です。また当院は、物忘れの相談をお受けする外来を設置していますが、ここ最近は認知症の患者さんが非常に多いですね。特に認知症の中核症状だけではなく、怒りっぽくなったり、徘徊したりする周辺症状でお困りの方に対して、周辺症状を緩和したり、うまく調整したりできるように通院や入院のサポートを行っています。介護をするご家族がお疲れになっている場合も多いので、レスパイト入院ができる認知症ケア病棟も51床用意しています。精神疾患一般はもちろん、今増えている、今後確実に増えていく認知症の患者さんの治療を担っていくことも当院の役割だと考えています。
入院時からゴール設定を多職種で行っているそうですね。

特に精神科医療においては、患者さんの今後の人生を意識することが重要です。この患者さんはこうなったら退院になるとか、退院後にこういうふうになってほしいなという主治医としての思いをみんなで共有して、入院する時点で退院のゴールに向かって多職種で動いていく有機的な連携を実現したいという思いがあります。そこで院長に就任してから入院時カンファレンスを導入し、入院時の段階から目標を立てて動くようにしています。主治医の方針があまり伝わってない場合、逐一コミュニケーションを取らないといけませんが、最初から主治医の方針が目に見えていること、そして患者さんのゴールを共有しておくことで、「こういうふうに看護として動こう」「こういうふうに検査をしよう」と、各スタッフがより主体的に動くようになります。いろんな提案やアイデアも出てきやすいですし、高密度な連携が取りやすくなるので、今後も続けていきたいですね。
認知症カフェなどの取り組みも行っておられますね。

院内では、認知症でお困りの方やご家族、医療従事者の方々が集まれる「認知症カフェ」を開催しています。認知症に対する関わり方や、こういうときどうしたらいいのか、といったノウハウをざっくばらんに話せる機会を設けています。認知症カフェはソーシャルワーカーの発案で始めたのですが、ほかの取り組みもスタッフが自主的に考えて、プランを立てて実行してくれることは頼もしいですね。まだまだ精神科や心療内科は昔のイメージもあり、敷居の高さを感じている人や、足を運びづらいと感じている人も多いと思いますが、安心して通院・入院していただける病院にしていきたいですね。調子が悪くなったときに通院するのは嫌だと思うよりも、「つらいからちょっと行こうかな」と「調子が悪いからちょっと入院したい」と自主的に言ってもらえるような病院になっていけたらいいなと思います。

北浦 祐一 院長
2005年関西医科大学卒業。2005年関西医科大学卒業後臨床研修センター入局。2007年から同大学附属滝井病院(現・関西医科大学総合医療センター)精神神経科研究医員。2015年同大学附属滝井病院精神神経科病院助教、2016年同大学附属滝井病院精神神経科助教。2021年同大学総合医療センター精神神経科准教授を経て、2025年4月に関西記念病院院長に就任。日本精神神経学会精神科専門医。