医療法人健栄会 三康病院
(大阪府 高槻市)
寺田 真也 院長
最終更新日:2025/03/21


人工透析のノウハウを身近な分野にも還元
泌尿器科と腎臓内科、そして人工透析という分野に特化し、高槻市内で40年以上も実績を重ねてきた「三康病院」。周辺地域の中核病院や診療所との連携体制の中で22床の病棟を用意し、外来診療から各種検査まで、誰もが気軽に利用できる病院をめざして良質な医療の提供に力を注ぐ。中でも注目は、血液透析に重要な役割を持つシャント治療と管理を専門とするバスキュラーアクセスセンターの存在。透析を知り尽くした病院ならではの強みを発揮し、他院の患者のシャント手術や手術後のフォロー、トラブル対応にも積極的に取り組んでいる。そのセンター長を務めるのは、2024年から院長を兼任する寺田真也先生。同院がこれまでに築いてきた専門性をさらにブラッシュアップするとともに、そのノウハウから派生したフットケアなどの新たな試みを時代のニーズに合わせてフィードバック。今後はより身近な存在となって、地域への貢献をさらに果たしていきたいと意気込みを語る。透析患者やその家族、一般市民に対し、どのような思いで医療を提供しているのか。現状に甘んじることなく進化を遂げようとする同院の現在の姿を追ってみた。(取材日2025年2月26日)
まずは地域における病院の位置づけをお聞かせください。

当院が開設されたのは1980年8月。それから40年以上の歴史の中で、人工透析という分野において地域への貢献を果たしてまいりました。入院施設のほか、シャント管理や治療を担うバスキュラーアクセスセンターを院内に整備し、北摂で透析といえば当院の名が挙がるほど、今では周辺の医療機関の先生方にも頼られる存在と自負しています。外来に関しては泌尿器科と腎臓内科の両軸で、平日は夜8時まで、土曜も午前は診療を行っています。大学病院などの大きな病院は予約を取るだけでも大変だと思いますが、当院は中規模ならではのフットワークの軽さが強みの一つ。CT検査や膀胱内視鏡検査、エックス線造影検査から外科的手術まで迅速に対応できる体制はもちろん、常勤医師に加えて大阪医科薬科大学の先生にも診療を担当してもらっていますから、より高度な検査や治療が必要なケースでも大学病院へスムーズにつなげることが可能となっています。
バスキュラーアクセスセンターについて教えてください。

バスキュラーアクセス(VA)とは血液透析を行う上で重要な役割となるシャントの別称で、その手術や手術後のフォロー、トラブル対応などを総合的に担うのがバスキュラーアクセスセンターです。シャント管理ができる医療施設は決して多くはなく、当院は透析を専門とする病院として、この機能を有していることに大きな意義を感じています。例えば大学病院や総合病院では担当部署が分化し、普段は透析患者さんを診ない先生がシャント手術や治療を担当することが往々にしてあるでしょう。透析患者さんは全身にさまざまな病気を抱えているケースが多いため、同じ医師が日頃から透析に関わって全身をチェックしていることがシャント管理の重要なポイントとなります。シャントが詰まったらどうしようと、患者さんは常に心配しているもの。その不安を取り除くために、私もバスキュラーアクセスの専門家の一人として信頼される診療体制を続けていきたいと考えています。
人工透析の患者さんには、どのように向き合っていますか?

世の中に、透析患者になることを望む方は1人もいないでしょう。そうならないように予防的な啓発を行い、腎臓の管理をしっかりと行っていくことも私たちの今後の課題と感じています。その上で治療が必要な患者さんにはいろんな選択肢をご提示していくわけですが、やはり患者さんの気持ちを大切にした、寄り添うような診療を提供すべきとつくづく思います。もし透析が必要になった場合もできれば前向きに、週に数回、私たちと顔を合わせることや診療を受けることを、良い意味で生活の一部と捉えていただければ幸いです。それを可能とするのが、医師を含めたスタッフとのコミュニケーションです。院内では、せめて気持ち良く快適に過ごしていただきたい。ご家族にも安心してもらいたい。そのためにはどうすればいいか、みんなで話し合いながら医療やサービスの質の向上に努めてきたのが当院の45年間だったのではないでしょうか。
近年はフットケアにも力を入れているそうですね。

透析患者さんの中には糖尿病などで足の血管が悪化して歩けなくなる方が一定数おられるため、こうした足の病変に対応するために当院がスタートしたのが外来でのフットケアです。それをさらに標準化し、今では一般の方の陥入爪や巻き爪のケア、外反母趾に対するインソールの提案にまで幅を広げています。昨年、フットケアの市民公開講座を開催したところ想像以上の反響をいただき、大勢の方が関心を持っていることがわかりました。足が痛くて歩かなくなると筋肉が衰えてフレイルに陥るという悪循環のリスクがあり、快適に歩けることには大きな意味があります。あと、足で気になることがあった場合、皮膚科へ行けばいいのか整形外科なのか、迷われることが多いと耳にします。そうした方の最初の窓口となる外来が当院にあることや、透析で知られる病院ですが透析だけではないことを、もっと多くの皆さんに知ってもらって当院を身近に感じていただきたいですね。
今後に向けたメッセージをお願いします。

人工透析の専門病院として今後取り組んでいきたいのは、在宅での腹膜透析のフォローです。腹膜透析の患者さんは施設の受け入れが難しいというのが現状で、訪問看護という形でなんとかお手伝いできないかというのが将来的な私たちの課題の一つです。こうした新たなニーズに対応するとともに、これまでに培ってきた医療の質をさらに高め、頼れる病院として地域に貢献ができるよう励んでいきたいと考えています。大学病院だけでなく、今後は地域の開業医の先生方とも関係を深め、病診一体で市民の皆さんの健康を守っていきたいですね。私が常に大切にしていることは、感謝・敬意・謙虚の3Kです。人として人に接する仕事であることを忘れずに、透析の患者さんであれ、足でお悩みの方であれ、等しく受け入れて等しく向き合うような、いつまでも皆さんの身近な存在でありたいと思います。

寺田 真也 院長
2003年島根大学医学部卒業。心臓血管外科に入局し、心臓および血管疾患の外科治療を専門に研鑽を積む。2017年三康病院に入職後、泌尿器科の医師である前々院長に師事してシャントを復習し、同院のバスキュラーアクセスセンターのセンター長に就任。2024年4月から院長を兼任し、地域へのさらなる貢献をめざして新たな分野の開拓や病診連携に取り組む。心臓血管外科学会心臓血管外科専門医、日本外科学会外科専門医。