医療法人協和会 協和会病院
(大阪府 吹田市)
矢野 雅彦 病院長
最終更新日:2025/10/15


地域ニーズを担う急性期ケアミックス型病院
「専門的な知識と技術の向上を図り、心を込めて安心の診療を提供します」を理念に掲げ、1988年に開院した「協和会病院」。急性期一般病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、障害者病棟合わせて301床からなる急性期ケアミックス型病院だ。吹田市内には高度急性期病床が多い半面、回復期病床が不足している現状があり、急性期から慢性期まで幅広く対応する同院は地域医療を支える存在だ。入院中やリハビリテーション中に並行して透析治療を受けることができる透析部門も特徴の一つ。将来的に箕面市立病院と統合し、船場地区への移転が決まっている同院だが、それまでの期間、急性期医療はもとより、リハビリテーションや長期入院治療まで、地域に必要とされる医療に力を注ぐ。「移転はまだ5~6年先です。それまでの間、地域の皆さんにはこれまでどおり頼っていただきたいですね」と話すのは、2024年から同院をけん引する矢野雅彦病院長。長く高度急性期医療に携わってきたからこそ、回復期・慢性期医療の重要性を改めて認識したと穏やかな口調で語る矢野病院長に、同院の特徴や地域での役割について話を聞いた。(取材日2025年07月10日)
協和会病院の地域での役割について教えてください。

当院は急性期病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、障害者病棟合わせて301床の急性期ケアミックス型病院です。全国的な傾向ではありますが、特に豊能地区は高度急性期病院が非常に多い地域である一方、急性期治療を終えた患者を受け入れる回復期病床がかなり不足しています。地域医療構想会議では、2025年の時点で回復期病床が約1400床不足していると問題になっているほどです。このような状況の中、当院は外科手術や内科的急性期治療からリハビリテーション、長期入院治療、在宅支援まで幅広く対応する病院です。急性期病院で治療後、転院先を探すことは苦労を伴いますが、当院であれば院内に回復期病床と地域包括ケア病床がありますからスムーズに移行できますし、急性期病院からも患者さんを受け入れています。また、在宅医師と連携し、自宅や施設で急変した患者さんを受け入れる後方支援病院としての役割も担っています。
透析部門を備えていることも特徴の一つと伺っています。

外来通院される方だけでなく、何らかの理由で入院の必要がある患者さんが、透析治療を並行して受けられることは大きなメリットだと思います。例えば、透析治療中の患者さんが骨折をして手術を受けたという場合、その後の回復期リハビリテーションを受けながら、透析治療も継続しなければいけません。そんな患者さんはなかなかクリニックでは対応できませんが、当院であれば入院中にリハビリテーションに取り組みながら透析治療が可能です。リハビリテーション室は十分な広さがありますし、スタッフの数も多く、適切なリハビリテーションを病態に合わせて行っています。患者さんの高齢化に伴い、併存疾患を持つ人の数が増えています。がんや重大な呼吸器疾患、認知症など、さまざまな併存疾患を診ながら、同時にリハビリテーションも必要です。そのような患者さん対応するため、当院では診療科を超えたチーム医療で取り組んでいます。
先生が病院運営で大事にされていることは何でしょう?

小さな病院ですから常勤医師のいない診療科があり、例えば泌尿器科や神経内科、呼吸器内科などは非常勤の先生に週に1~2回来ていただき対応しています。足りない部分は非常勤医師の確保も含めてバックアップし、総合的に診療できる体制づくりが必要だと考えています。また、救命救急的な治療が必要なケースに対応するため、近隣の大阪大学医学部附属病院や国立循環器病研究センターなど、高次医療を提供する病院との連携も重要です。院内においては、毎週全職員が集まる朝礼を開いているのですが、そこでは事あるごとに「順応性」「対応力」が大事だと話しています。例えば、新型コロナウイルス感染症の流行期においては、病棟の管理法も変えなくてはいけませんでした。「自分はこれ以外やりません」ではなく、幅広いことに挑戦しなければ、病院は動いていけませんし、患者さんのニーズに応えることはできません。それは、当院の在り方とも共通していますね。
将来的な移転計画があるそうですね。

まだ確定的なことは言えないのですが、5~6年先をめどに箕面市立病院と統合し船場地区に移転する予定です。ここのところ、開業医の先生方や患者さんから「今年で閉院ですか?」「来年、移転するんですか?」と聞かれることが増えているのですが、まだまだこの地でこれまでどおりの医療を提供していきますので、安心して当院を利用していただきたいと思います。特に、回復期リハビリテーションや長期入院、在宅支援など、地域に必要とされている医療の提供には、病院スタッフ一同力を入れています。例えば、急性期病院から回復期病棟へご紹介いただく場合、まだ病状が安定していない状態なら、いったん当院の急性期病棟で受け入れることが可能です。そういう柔軟性があること、必要とされたらいろいろなことに対応できることが当院の強みです。移転までの期間は、回復期を中心に地域が必要とする医療をこれまでどおりしっかり提供していきたいと考えています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

前職では吹田市民病院の理事長を務め、それ以前は大阪大学医学部附属病院に長く籍を置き、高度急性期医療の畑を歩いてきましたので、回復期、慢性期はなじみがなく、2024年に病院長として赴任した際は戸惑いました。しかし、回復期、慢性期の医療は、とても重要な患者さんの「自分の人生の決定」に関われる医療であり、とても大切であることを痛感しています。最近では、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)と呼ばれていますが、患者さんの「人生会議」に関われることに、やりがいを感じますね。また、将来的な移転を控える中、職員のモチベーションを支えまとめていくことが、今の僕の最も大事なミッションだと考えています。今後も引き続き、在宅医療を受けていて急に具合が悪くなった時や併存疾患のあるケースなど、さまざまな段階に対応できる急性期ケアミックス型病院として、外来から退院までしっかりサポートさせていただきたいと思います。

矢野 雅彦 病院長
1981年大阪大学医学部卒業後、1982年市立貝塚病院外科に入職。1990年より米国国立がん研究所にて客員研究員を務め、1992年箕面市立病院外科副部長に就任。その後、大阪大学病態制御外科准教授、大阪府立成人病センター副院長、大阪国際がんセンター副院長、市立吹田市民病院理事長を歴任。2024年より現職。日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本外科学会外科専門医。