公益財団法人唐澤記念会 大阪脳神経外科病院
(大阪府 豊中市)
谷口 理章 病院長
最終更新日:2024/07/17
脳・神経疾患の専門家が集う地域の中核病院
24時間365日体制で脳神経疾患の救急搬送を受け入れ、ハイレベルの専門的な治療を追求している「大阪脳神経外科病院」。専門性高い先進の治療や手術はもちろん、手術後の全身管理は多職種からなるチームが担当し、さまざまなケースに対して適切に対応しているのが特徴だ。また、2016年にはリハビリテーション部門を拡充し、患者の在宅復帰まで支える体制を強化。急性期から回復期に至るまで治療が途切れない体制も整えている。内視鏡のスペシャリストとして着任し、2024年に病院長に就任した谷口理章先生は「症例発表や研究活動を通して医師の教育という使命を果たしながらも、地域の皆さんの不安に寄り添える場所でありたい」と、先進の治療に取り組む一方で物忘れに特化した外来の開設や脳ドックの実施など、気軽な医療機関の顔も大切にしている。脳血管疾患に対する救急医療に加え、今後は地域の医療ニーズにさらに応えるべく、脳疾患と関連が深い「神経の病気」へも診療範囲を拡大したいと語る谷口病院長。同院ならではの診療内容やスタッフの役割、地域医療との連携などについて詳しく語ってもらった。(取材日2024年5月21日)
最初に、病院の歩みや主な取り組みについて教えてください。
当院は脳神経にまつわるさまざまな疾患の専門病院として、1985年に唐澤淳前理事長が創設し、翌年に財団法人、2013年に公益財団法人に移行して現病院名になりました。当初は、子どもでも脳血管障害を起こす「もやもや病」の手術治療に注力し、全国や海外から患者さんや医師を受け入れ、治療や教育に注力していましたが、その後は大阪大学脳神経外科と連携することで、先進的な治療法の普及や研究開発、医師教育にも取り組んでいます。同時に、脳神経疾患患者の救命・急性期治療・予防検診を重要な使命としており、豊能医療圏と大阪市北部からの救急搬送に24時間365日体制で対応しています。脳卒中、てんかんや外傷の患者さんの搬送も多く受け入れており、特に脳梗塞は発症からなるべく短時間で治療を始められるよう、夜間も3人の医師が診療にあたり、病院到着後15~30分で手術を開始できる体制を整えています。
脳神経疾患の急性期治療では、どのような点を重視していますか?
当院では脳神経疾患の治療法をこの20年間で大きく進歩しており、点滴だけで治療を行う血栓溶解療法や、主幹動脈閉塞においてカテーテルを用いる血管内治療が飛躍的に普及しています。当院でも2007年に脳血管内治療センターを開設し、脳梗塞やくも膜下出血などの脳卒中急性期治療の先進的な技術や、新たに開発された治療機器を率先して導入しています。さらに2020年には内視鏡センターも開設し、低侵襲な各種の治療技術を院内に備え、間脳下垂体外科治療や内視鏡を用いた体への負担が少ない手術に取り組んでいます。われわれがめざすべきはただ命をつなぐだけでなく、患者さんの社会復帰。目標を実現するためには1分1秒を無駄にするわけにはいきません。確実な原因疾患の治療と急性期から始めるリハビリまで迅速に対応し、その後の回復期までシームレスに対応できるような体制を構築しています。
低侵襲内視鏡手術センターについて詳しく聞かせてください。
低侵襲内視鏡手術センターでは、鼻から内視鏡を挿入して手術を行う経鼻内視鏡手術を積極的に行っています。この手術方法は、下垂体腺腫・頭蓋咽頭腫・髄膜腫といった頭蓋内の深い場所に発生する腫瘍に適しており、頭皮の切開や頭蓋骨の切除を伴わず、傷痕も鼻の中なので外からは見えません。日本ではまだ広く普及していない専門性の高い手術ではありますが、当院には経験豊富な医師が在籍しており、患者さんの一助となるべく日々の診療に従事しています。また、当院ではあらゆる脳神経外科手術に内視鏡を応用しており、通常の手術では体の負担が大きいと思われる場合に治療の選択肢として提示することも。患者さんの年齢や体力、お仕事の都合などに合わせた治療を一緒に計画していく取り組みを行っています。大学病院など他施設からの紹介やセカンドオピニオンの受け入れ、内視鏡手術の普及、治療ができる医師を育てることも、当院の重要な役割です。
脳血管内治療センターや脊椎脊髄疾患部門についても伺います。
脳血管疾患は時間が予後に大きく影響します。当院の脳血管内治療センターは血管内治療を担当する医師が5人在籍し、近隣の皆さまはもちろん、豊中など北摂エリアからも多くの患者さんを24時間受け入れることができる体制を整えています。腰痛や手足のしびれなどの神経症状を診る脊椎脊髄疾患部門では、この領域を専門とする医師が、ブロック注射から内視鏡手術まで幅広い治療を行っています。地域に密着した外科診療を行う上で欠かせない分野であり、結果が見えやすいので患者さんにも喜んでいただけると思います。さらに脳神経内科は不随意運動の診療実績が豊富です。術後サポートやリハビリにも力を入れ、医師は手術や診察に注力し、術後のケアは各専門職の経験と知識が生かされるように多職種チームで取り組んでいます。最近は一人暮らしの高齢患者さんも増えており、日常生活をスムーズに送れることを目標に機能回復をめざしたいと考えています。
今後の展望と地域の方へのメッセージをお願いします。
地域の皆さまに脳や神経の病気なら「ここ」だと思っていただける病院であること。これが、変わらない私たちの願いです。地域の方々の不安に寄り添い、痛みや苦しみを少しでも取り除けるよう、これからも院内の診療体制を維持し、救急隊や地域の医療機関との密な連携を保ちながら、ハイレベルな医療を追求していきたいと思っています。治療結果を左右する検査・治療機器の導入や専門的な研究や教育にも積極的に取り組みながら先進治療の啓発も担っていければと考えているところです。一方で、物忘れに特化した外来の開設や脳ドックの実施など「気軽に受診できる病院」の顔も大切にしていきたいですね。地域にあるからこその良さを見失わず、急性期から回復期、さらには予防の観点からも地域医療に貢献していけたらと思います。
谷口 理章 病院長
1991年大阪大学医学部を卒業後、同大学医学部附属病院や関連病院で研鑽を積み、ドイツ・マインツ大学にも留学。帰国後は神戸大学大学院医学研究科脳神経外科の准教授を務め研究や後進の育成にも注力。内視鏡のスペシャリストとして、2021年に大阪脳神経外科病院へ着任、2024年より現職。日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医。
自由診療費用の目安
自由診療とは脳ドック/4万8400円~