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国立研究開発法人 国立循環器病研究センター病院

(大阪府 吹田市)

飯原 弘二 病院長

最終更新日:2020/08/20

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高難度・先駆的な循環器診療を届けるために

2019年7月、岸部駅に直結する北大阪健康医療都市(健都)へ移転オープンした「国立循環器病研究センター病院」。院内には大規模なハイブリッド手術室や広大なリハビリテーションルームが整備されるなど、診療環境の充実が図られ、「患者さんの満足度も高くなっていると感じます」と飯原弘二病院長は笑顔を見せる。また、これまでも全国からの患者を受け入れてきた同院であるが、今回の移転で交通の利便性が高まり、さらに新設されたヘリポートを通じて遠方からの急性期・重症患者の搬送が増えているという。かつて自身も同院で勤務し脳卒中診療の多施設共同研究をリードしてきた飯原病院長は、「国循」だから実現できる診療や研究開発を追求し、患者へ最善の治療を届けていきたいという。「充実の医療環境を生かし、優れた臨床・教育を行うとともに、研究でも大きな成果を上げていきたい」と意気込みを語ってくれた。(取材日2020年7月29日)

最初に、こちらの診療理念を教えてください。

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当院は、心臓血管および脳血管疾患に特化し、その原因を究明し治療法を確立するために設けられた国立高度専門医療センターの病院部門です。このような医療機関は世界的にも少なく、これまでに補助人工心臓システムや脳動脈瘤のステント治療など時代を切り開くシステムの開発・実用化に携わってきました。私自身も脳血管部門で勤務していた時期には脳神経外科診療に没頭し、また次世代の優れたリーダーを育成する仕組みづくりにも尽力してきました。そこで今回の病院長就任にあたっては、「世界に冠たるエクセレントホスピタル」をめざしたいと考えています。高度先駆的な医療の研究・開発に取り組み、高い安全性と倫理性を伴った治療として患者さんに還元すること、同時に専門性の高い循環器病医療を担う医師や研究者を育てることが目標です。また医療安全を重んじる病院文化を育み、職場としてやりがいのある環境づくりに取り組んでいます。

移転によって、特に大きく変化した点をご紹介ください。

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何よりも、建物や検査および治療機器のスケールと質が格段に向上しました。ハイブリッド手術室が4室あり、これは世界でも大きな規模に入ります。ハイブリッド手術室では外科手術とカテーテル治療を同時に行うことが可能で、心臓血管では大動脈瘤のステントグラフト内挿術や不整脈植え込みデバイス治療、脳血管では開頭手術と脳血管内治療の同時施行などに取り組んでいます。当院には、難易度の高い治療を必要とする患者さんが多数受診していますので、手術中の状況変化に応じてさまざまな治療法が選択できるハイブリッド手術室で、1回の手術を安全に配慮しながら効率よく行えることは大きなメリットです。また、屋上にはヘリポートがあり、補助人工心肺などの装置をつけた患者さんを遠方から迎えやすくなりました。新型コロナウイルスの影響はありましたが、救急搬送や手術件数も増えていますし、病室は個室が増え患者さんの満足度が高まったと感じています。

外来診療では、疾患ごとの外来を積極的に設けていますね。

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当院は心臓血管と脳血管病変のみを診療対象にしていますが、この中にはさまざまな部位やメカニズムに基づいた非常に多くの病気が含まれ、医師や研究者の専門領域も細分化しています。最先端の診療・研究を追求してきた結果ですが、当院を受診される患者さんや、患者さんを紹介したいクリニックの先生方からは、「何科を受診してよいかわからない」「紹介の際に敷居が高い」という印象にもなるようです。そこで、「弁膜症」「心筋症」「心房細動」「下肢静脈瘤」など、疾患の名前を冠した外来を設けています。例えば弁膜症の外来には、循環器と心臓血管外科の医師が所属し、患者さんの情報を共有しています。今は1つの病気でもさまざまな治療方法がありますので、複数の領域の専門家が集まって検討を行い、その患者さんに最適な治療につなげていきたいと考えています。

地域や健都内での連携について、教えてください。

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国立循環器病研究センターでは、以前から吹田市や吹田市医師会と協力し、「吹田研究」という長期の追跡調査を行ってきました。また健都内のマンションや施設と連携し、入居者の健康管理や共同研究を実施していますし、当院独自に「高度循環器ドック」と名づけた検診も行っています。循環器領域ではこれから、疾病予防が非常に重要になると考えられています。今は、心臓や脳血管の病気の多くが急性期の発作で見つかり治療されますが、本当はその前の段階で発見して治療を開始し、健康寿命延伸につなげていきたいのです。病気の予防や早期発見、あるいは発作の発症までに治療を始める「先制医療」を実現するためには、地域と連携してデータを収集し研究を行い、健診、治療、リハビリテーションといった一連の流れを構築する取り組みが欠かせません。国循の研究所などとも協力しながら、先制医療を含む予防医療の研究を進めています。

最後に、課題と展望をお聞かせください。

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現在、急性期病院の多くは厳しい経営状況にありますし、人的な資源も不足しています。その中で働き方改革を進めつつ、医療安全の意識を高め、ヒューマンエラーの防止に努めなければなりません。今回の新型コロナウイルス感染症の流行拡大では、集中治療室が稼働できなくなった病院から当院へ転院された患者さんもいました。当院の診療機能が停止すると、全国の循環器診療に大きな影響が出ますので、院内感染に十分な対策をとりながら、高度な専門性を伴う治療を継続できるよう、全職員で取り組んでいるところです。移転によって恵まれた診療環境を得た当院やこの健都は、「医療クラスター」として今後さらなる発展が期待されています。これからもわが国の循環器医療を担う病院として、最先端の診療を追求するとともに、優秀な医師を育て研究でも画期的な成果を上げていきたいですね。

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飯原 弘二 病院長

1987年京都大学医学部卒業後、脳神経外科医師として研鑽を積む。1994年より国立循環器病センター脳血管外科にて勤務、1997年にはトロント大学医学部等へ留学。2000年に帰国後は国立循環器病センター脳血管外科で脳血管障害の臨床研究に従事し、2010年には同脳血管部門長。2013年九州大学大学院医学研究院脳神経外科教授、2018年九州大学病院病院長補佐を経て2020年4月より現職。

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