社会医療法人清恵会 清恵会病院
(大阪府 堺市堺区)
坂中 秀樹 院長
最終更新日:2025/10/24


必要とする人に専門性の高い診療を提供する
「清恵会病院」は1970年の開設以来、55年の長期にわたって地域に根差した医療を提供している。地域の救急医療の充実をめざして設立された病院らしく、救急医療に注力する一方で、高齢化社会のニーズに応えるべく地域包括ケア病棟や医療療養病棟も整備。急性期から慢性期、在宅医療・介護サービスまで幅広い医療・介護サービスを提供している。救急に強い病院として充実した設備と人員をそろえ、手術を必要とする患者にも迅速に対応。脳卒中専用電話を設け、365日24時間体制で救急隊や近隣の医療機関から脳卒中の疑いのある患者の受け入れを行っている。外来では診療科の縛りが少ないセンター・部門制を積極的に取り入れることで、所属にとらわれることなく、さまざまな専門性を持つ多職種が患者の診療にあたれるのも同院の特色だ。2025年7月に新しく院長に就任し「病院と地域医療への貢献が医師・院長としての大きなやりがい」と語る坂中秀樹先生に、同院の診療の特色や地域医療にかける思い、新院長としての展望を語ってもらった。(取材日2025年8月6日)
地域医療における病院の位置づけを教えてください。

当院の周辺エリアには、総合的な医療を提供している公的病院があります。こうした中にあって、当院では注力する分野をある程度限定した医療を提供しており、特に力を注いでいる分野の一つが救急医療です。当院が開設した当時、このエリアでは救急にしっかりと対応できる病院が不足しており、たらい回しになっている患者さんを救うべく、救急に特化した病院として開設した経緯があるからです。当時は自動車の普及に伴って交通事故も急増していたのですが、近年はシートベルトなど安全装置の普及などにより交通事故は減少して、代わりに骨粗しょう症に起因する手首や脚の骨折、転倒に伴う外傷、脳卒中などで救急搬送されるご高齢の患者さんが増えています。堺市は都市部にありながら、高齢化率が全国平均より高いため、今後、ご高齢者の救急医療のニーズはいっそう高まると考えています。
こちらの救急医療の特徴はどのようなところにありますか?

脳神経外科に注力しており、脳卒中専用電話を設け、24時間365日体制で救急隊や近隣医療機関から脳卒中の疑いのある患者さんを積極的に受け入れています。若い患者さんが骨折で救急された場合、整形外科による対応だけで済むことがほとんどです。しかし、ご高齢の患者さんの場合は、糖尿病、心疾患をはじめとする生活習慣病や何らかの全身疾患を抱えておられることが多く、ケガの治療だけでは済みません。骨折の手術をするにしても内科の医師のサポートが不可欠ですし、術後のケアについても外科以外の医師も含めたチームで対応する必要があります。このため当院では、複数の診療科がチームで治療を進められる専門医療センターや部門を複数開設しています。医師のほか、関連するさまざまな職種のスタッフがお互いの専門性を生かしながら協力し合って患者さんに対応していけるのが強みです。
外科系にも注力されていると聞きました。

はい。救急医療に力を入れる病院として外科系には力を入れており、手術室も9室備えています。救急搬送の患者さんの場合、人員や設備の関係ですぐに手術を提供することが難しい病院もありますが、当院はすぐに対応できる体制が整っているのが特徴です。手術室が満室で対応できないなどの理由で、近隣の病院から当院に患者さんが送られてくるケースも少なくありません。中でも手外科の手術は数多く扱っており、豊富な実績を持ちます。患者さんの9割は工場の機械で指を切断したなど業務上の事故で、工場の機械に手を挟まれた、業務用の包丁で指を切断してしまった患者さんなどです。切断された部分は、時間がたつと再接着が困難になるため迅速な対応が求められます。また、神経や血管などを縫合する必要があり、顕微鏡を使って血管をつなぐ処置や他部位の組織移植など、マイクロサージャリーと呼ばれる顕微鏡を使った手術を提供しています。
地域の医療機関との連携にも積極的ですね。

この辺りのエリアは、地域の医師会と基幹病院の関係が深いこともあり、病院同士の病病連携、病院とクリニックとの病診連携がかなり盛んな地域です。医師同士もお互いに顔の見える関係が築かれ、整形外科医会、内科医会、小児科医会などの活動も活発に行われているのが特徴です。地域の先生方を対象にした勉強会や懇親会も開催しており、毎回トピックを決め、スライドを使ったりしながら、病診の垣根を越えて症例などについて検討し合います。一方、地域住民の方を対象にした市民公開講座も、以前は院内の講堂を利用して月に1度は開催していました。各診療科が持ち回りで講師を務め、健康相談や看護師による血圧測定などを実施すると、100人以上の方がお越しになられました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で継続が難しくなってしまったのですが、現在少しずつ再開に向けて取り組んでおり、今後はいっそう力を入れていきたい部分でもあります。
新しく就任された院長として今後の展望をお聞かせください。

当院はもともと救急医療を主目的に設立され、かつては「堺で救急といえば清恵会病院」といわれるほどでした。今では当院以外の病院でも救急対応されるようになりましたが、当院のスローガン「いつでも、どこでも、どなたでも」を大切に、救急医療に力を入れるとともに、より充実をめざしたいと考えています。併せて、高齢化にしっかり対応できるように、高齢者救急への注力、急性期、慢性期、回復期リハビリテーション、療養期までトータルに対応できる体制の整備に努めています。また健康寿命の延伸にも貢献すべく健診センターを開設しました。総⾯積約1000平方メートルの広々とした専用のフロアでは、ゆったりと検査を受けていただけます。これからも職員一同が「人の役に立っている」という充実感を持って働ける環境を整え、地域の皆さまに「堺に清恵会病院があって良かった」と思っていただける病院でありたいと考えています。

坂中 秀樹 院長
大阪市立大学医学部卒業。同大学医学部附属病院(現・大阪公立大学医学部附属病院)、関西労災病院、大阪府済生会中津病院などを経て1999年清恵会病院へ。2011年同病院副院長、2025年7月1日より現職。整形外科医としての専門は脊椎脊髄疾患で、医師としての仕事をこよなく愛する。趣味は海釣り。釣った魚を自身でさばいて振る舞い、スタッフからも好評。母校野球部のOB会長も務め、現在も定期的にプレーする。





