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地方独立行政法人堺市立病院機構 堺市立総合医療センター

(大阪府 堺市西区)

大里 浩樹 院長

最終更新日:2021/09/07

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超高齢社会の医療ニーズに応えるために

1923年に「堺市立公民病院」として開院し、1世紀にわたり堺市民の健康を支え続けている「堺市立総合医療センター」。2012年に独立行政法人に移行して病院名を改称し、現在地に移転した2015年には、救命救急センターを併設する病院として三次救急医療機関に認定された。一般病床480床・感染症病床7床の計487床を有し、各部門が高い専門性を発揮しながらも、一人ひとりの医師が専門分野にとらわれない総合的な診療を心がけていることが特徴だ。大里浩樹院長は、これまで地域に根差した医療を提供してきた歴史と、救命救急を担う公立病院としての役割を継続しつつ、今後は時代のニーズに合わせて超高齢社会に対応することを重視。今回は、そんな大里院長の思いや病院がめざすべき方向性、若手教育などについて、詳しい話を聞いた。(取材日2021年7月29日)

病院の特徴を踏まえ、地域での役割を教えてください。

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当病院は三次救急医療を担う公立病院として救命救急センターを有し、救急・災害医療を展開していることが最大の特徴です。現在約82万人の人口を持つ堺市は、政令指定都市でありますが、2015年までは救命救急センターを併設している病院がなく、センターを設置することは堺市全体の願いでもありました。旧病院の頃から内科を中心とした救急医療に注力してきた背景もあり、現在は多数の診療科が協力して「堺市地域における”救急医療の最後の砦”」として重症患者さんを受け入れてきました。また、超高齢化が進む日本社会では、いくつもの疾患をお持ちの患者さんが非常に増え、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、認知症やフレイル、ロコモティブ症候群など老年症候群を含めた複数の病態に対するバランスのとれた治療が重視されています。高い専門性を発揮しながらも、医師一人ひとりが専門の垣根を越え、総合的な診療を行っているのも当病院の強みです。 

時代に合わせた医療を提供していきたいとお考えなのですね。

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従来は、発症、診断された病気を治療し、治療後に普段の生活に戻ることが当たり前でした。高齢化が進む中で、これまでのようにガイドラインに沿った治療するだけでは良い結果を得るとは限りません。今後重要になってくるのが、治療前に充分なリスク管理を行い、治療後に患者さんが望む生活を送れるような治療計画を立てるという視点です。医療の進歩により80歳を越えた方でも侵襲的な治療も受けられるようになってきた一方、高齢化により、合併症が起こり、入院が長期化すると、自力で歩けなかったり食事がとれなかったり、認知症が進行してしまったりと、さまざまな問題が起こります。人生を全うするためのゴールは一人ひとり異なりますから、まずはわれわれのような急性期病院が治療の全体像を捉えた計画を立て、療養型施設や地域のかかりつけクリニックと連携しながら、医療機関間のギャップを埋められるような体制を築いていきたいと考えています。

疾病予防管理センター設置への想いをお聞かせください。

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高齢の方が病気にかかると、体力やリスクなどの問題から、若年層に比べて治療の選択肢が狭まってしまいます。だからこそ病気に罹患しないよう、あるいは生活習慣病が命に関わる状況まで進行しないように、健康啓発の活動ができる拠点として「疾病予防管理センター」を設置しました。例えば糖尿病を発症している方だと、インスリンや内服薬といった本格的な治療が必要になる前に食事・運動指導をしたり、ある程度進行している方であっても、動脈硬化が進んで脳卒中や心筋梗塞を引き起こすのを防いだりと、予防医療に注力していきたいと考えています。そのための第一歩として、まずは当病院を中心に、保健センターと共同して西区の住民の方へ健康調査を行い、健康意識を向上できるような啓発活動を自治会とともに実施したいですね。ほかにも、市役所や企業などの健康組合と連携し、会社員の健康調査や特定健診の推進を図ることも視野に入れています。

若手医師の教育も熱心だと伺いました。

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当病院は昔から総合診療を重視する風土があるので、幅広く診療できる医師を育成したいと考えています。専門性ももちろん必要ですが、それだけだとどうしても患者さんと向き合う入り口が狭くなり、得意分野以外の部分を見落としてしまいがちなので、「目の前の患者さんの主治医は自分である」という姿勢を若いうちから養ってもらいたいのです。それに、医療は人と人との信頼関係があってこそ成り立つもの。まずは患者さんの訴えに耳を傾け、身体的な診察を丁寧に行うことが大切だと思い、救急の外来での勤務や地域の開業医のもとでの訪問診療を通じて、さまざまな経験を積んでもらえるような研修プログラムを用意しています。また今後は、医師が治療方針を決めるのではなく、患者さんとの共同作業で治療を進めていく時代です。技術だけでなく、人格や考え方、倫理観も欠かせませんから、コミュニケーション能力を含めてトータルに学んでもらいたいですね。

今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

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新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、公立病院としてできる限りのことに取り組んできましたが、その中で一番実感したのは「地域の医療ニーズに応えること」の重要性です。医療従事者を中心に病院の方向性を決めるのではなく、堺市民の皆さまが医療に求めていることをしっかりと見極め、要望に応えられる病院づくりをしていきたいと思っています。超高齢社会に対応できる医療体制づくりもその一つですが、日本は世界的にも高齢化が進んでいますから、予防医療に重点を置いた病院改革をしていこうと考えています。また市の医師会と病院、市役所が共同で開発した「医療情報ネットワーク」が2021年6月から運用開始し、病歴や内服薬などの記録を複数の医療機関で共有することで、シームレスな地域連携も実現しつつあります。今後も皆さまの意見を今まで以上に反映し、病院内でも多職種が同じ方向を向いた上で、時代のニーズを捉えた病院運営に努めます。

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大里 浩樹 院長

1983年大阪大学医学部卒業後、同大学付属病院にて研修。1984年より市立堺病院(現堺市立総合医療センター)にて勤務し、1988年米国ハーヴァード大学へ留学。1990年加納総合病院外科医長、1994年大阪大学医学部付属病院助手、1997年関西労災病院外科部長などを務める。2006年より市立堺病院外科部長、2012年同院診療局長、2015年同院副院長を歴任し、2020年4月より現職。

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