公益財団法人日本生命済生会 日本生命病院
(大阪府 大阪市西区)
立花 功 院長
最終更新日:2021/06/21
職員一丸となって「済生利民」を実践する
大阪西部地域の基幹病院として親しまれる「日本生命病院」。その歴史は古く1924年、疾病や障害に苦しむ人々を救済する「日本生命済生会」が設立されたことに始まる。それから西区新町、立売堀へと移転し、2018年、西区江之子島へ新築、移転。「日本生命病院」と名称も改めた。病院の基本理念は「済生利民」。生命と生活を救い、人の役に立つという使命のもと、児童養護施設の子どもや母子家庭の母親を対象とした健康診断、地域福祉に関する研究誌の刊行など、社会貢献も活発に行ってきた。350床の中規模病院でありながら、27の診療科と9つの診療部門を有するほか、院内に予防医学センター、訪問看護ステーションを設置し、予防・治療・在宅まで一貫した医療サービスを提供。2018年からは「アート(技)と医療(サイエンス)の融合」をサブコンセプトとして、地域とのつながりを大事にした魅力的なホスピタル空間の創設を実現している。そんな「日本生命病院」に、2021年4月、新院長として就任した立花 功先生に「済生利民」の実践から病院の将来像までを聞いた。
(取材日2021年5月26日)
病院の成り立ちと理念について、まず伺います。
当院は、生命保険会社が財団法人「日本生命済生会」を1924年に設立したことに始まります。当初は健康相談や巡回診察を行っていたようですが、1931年に、適塾で知られる緒方洪庵のご次男が設立された緒方病院を継承する形で「日生病院」を開院しました。その後、地域のニーズに応じて診療科を増やし、増床、移転を行いまして、2018年4月、この西区江之子島へ新築・移転し、病院名も「日本生命病院」と改めました。理念は、当会設立時から「済生利民」を謳っています。これは生活と命を助けて、人々のお役に立つという考えで、皆さまの医療のためにこの病院がずっとあるということを意味します。企業によって設立された病院ではありますが、設立時から従業員・職員のためではなく、地域の皆さまの健康を守ること、即ち地域・社会に対して貢献することを大目的として医療活動を行ってまいりました。
「済生利民」は、どのような形で実践されているのですか?
理念というのは、われわれが何のために頑張っているのか、と考える時の道標になるものではないかと思います。そこをめざして次に進むべき方向を見つけてゆくことになります。新型コロナウイルス感染症に対しても、公益財団法人として、また地域医療支援病院として、できる限りの対応を行うという高い使命感で、早い段階から感染者の入院受入れを決めました。それは利益や利潤の追求ではなく、「済生利民」を実践してきた歴史も踏まえながら、地域のために取り組んでいくという姿勢の現れであったように思います。
特色のある医療についても教えてください。
当院は350床の中規模病院ですが、急性期医療に取り組む27の診療科と組織横断的な9つの診療部門を置き、予防・治療・在宅まで一貫した総合的な医療サービスの提供をコンセプトとしています。院内にある予防医学センターは、移転の際にスペースを1.5倍に広げ、多様なメニューを組み立てられる人間ドックを実現。脳機能センターと連携し、認知症の予防・診断に役立つアミロイドPET検査も始めました。訪問看護ステーションでは、当院をはじめ、他医療機関や居宅介護支援事業所等と連携し、在宅ケアの提供を積極的に行っています。産婦人科は、以前からスタッフが充実しており、特に良性腫瘍に対する内視鏡手術を多く実施。7階を女性専用病棟として整え、安心して療養、出産に臨んでいただける体制を敷いています。また皮膚科領域では、乾癬センターを立ち上げ、国内トップレベルの診療をめざし、難治性疾患である乾癬の治験を多数行っています。
「アートと医療の融合」というテーマも展開されていまね。
「アート&ライフ」という、大阪府がこの土地で推進していた街づくり計画を引き継ぎ、病院独自の形にしたものです。「病院を、皆さんが集い、地域とのつながりを拡げる場所に」との思いから「アートと医療の融合」というサブコンセプトを掲げました。「心の癒やしプログラム」など6つのプログラムで構成。さまざまな取り組みや、職員によるイベントを行っています。1階敷地内に設置した回遊式イングリッシュガーデン、独立した入り口のある全長42mのコリドーは地域の皆さまに開放しておりますし、病院内には風景画を中心に約120の絵画を展示。現在は新型コロナウイルスの影響で見合わせていますが、年に数回、市民健康セミナーや夏休み子ども医療体験、手作りコンサートなどを開催して「医療・健康寿命延伸」に努めるほか、コリドーではベーカリーカフェレストランが営業しております。
先生ご自身のことと、病院の将来についてお聞かせください。
私は研修医の頃に、肺のエックス線やCT画像を見てどう診断を進めてゆくかをディスカッションするところが、非常に面白く感じて呼吸器内科の道へ進みました。今でも肺の陰影を見て「こういう病気じゃないか」と診断をつけられた時には、とてもやりがいを感じます。前院長である笠山名誉院長もそうであったように、私も外来での診療を大切にしています。患者さんを診察することは医師としての基本ですし、現場との接点を持つことで職員が考えていることも理解しやすいからです。将来に向けては、自分で考えて判断できる、自立した医療人をぜひ育てたいですね。若い人の「こうしたい」を積極的に受け入れて進んでゆけば、彼らのモチベーションが上がって病院が発展するでしょうし、私も院長冥利に尽きます。これからの社会に合った「済生利民」を推し進めつつ、若い人のいろいろなアイデアを生かしてゆきたいと思っています。
立花 功 院長
1986年大阪大学医学部卒業後、大阪大学医学部附属病院および日生病院で臨床研修。1995年米国ハーバード大学医学部ダナ・ファーバー癌研究所に留学。1998年より大阪大学医学部第三内科、同医学部附属病院呼吸器内科病院教授、同大学院医学系研究科呼吸器・免疫アレルギー内科学准教授を務める。2013年日生病院副院長兼総合内科部長を経て、2021年より現職。大阪大学医学部臨床教授。専門は呼吸器内科。