社会医療法人きっこう会 多根記念眼科病院
(大阪府 大阪市西区)
川村 肇 院長
最終更新日:2025/12/11


白内障手術と眼科救急疾患に強い専門病院
1988年に開設され、大阪を拠点に関西一円の眼科医療を支えてきた「多根記念眼科病院」。白内障をはじめ、網膜剥離や急性緑内障発作などの眼科救急疾患まで幅広く対応し、緊急手術が可能な体制を整えているのが特徴だ。白内障手術では多焦点眼内レンズや乱視矯正といった高度なニーズにも応え、涙道疾患の手術にも多く携わる。設備面では常に先進機器の導入を心がけるとともに、経験豊富な視能訓練士、看護師をはじめとしたスタッフの存在が診療の質の向上につながっている。また地域連携にも注力し、紹介患者のスムーズな受け入れや治療後の逆紹介を徹底している。さらに年1回、地域医療機関とのフォーラムを開催し、顔の見える関係を築いてきた。2025年5月に院長に就任した川村肇先生は「手術件数だけを追うのではなく、一人ひとりによりクオリティーの高い治療を提供し続けたい」と語る。開設以来受け継がれてきた「迅速かつ適切な眼科急性期医療」を基盤に、地域の目の健康を守る存在であり続ける同院について、川村院長に話を聞いた。(取材日2025年9月19日)
病院の成り立ちや地域での役割をお聞かせください。

当院は1988年、初代院長に大阪大学名誉教授・水川孝先生を迎えて開設されました。医療法人きつこう会(現・社会医療法人きつこう会)初代理事長の多根要之助が「日本の高齢化に伴い白内障などの眼科疾患が増える」と予見し、欧米型の眼科専門病院を構想したのが始まりです。当時は眼科専門病院が少なく、「眼科の急性期医療に迅速かつ適切に対応する」という使命のもと、救急対応が可能な基幹病院としてスタートしました。以来、白内障や網膜硝子体疾患、急性緑内障発作などに幅広く対応しています。手術も数多く担い、京阪神地域にとどまらず三重県や滋賀県などからもご紹介をいただいています。開設以来、場所を変えることなく現在もこの地で診療を続け、58床の病床を有しています。地域の皆さまの「見える」を守るため、そして一人ひとりに合ったQuality of Visionを提供するために、職員一同日々努力を重ねています。
注力している診療について教えてください。

眼科の救急疾患への対応に注力しています。網膜剥離や急性緑内障発作といった失明につながる病気に対して、できる限り当日、遅くとも一両日中に手術できる体制を整えています。こうした迅速な対応こそ大きな役割だと考えています。白内障手術についても、一般的な症例は地域のクリニックで行われますが、外傷性や進行例、難症例については多くのご紹介をいただいています。単焦点に加え多焦点眼内レンズや乱視矯正など、ライフスタイルに合わせた「見え方」の提供にも尽力しています。さらに涙道手術にも力を入れ、遠方から来院される方も少なくありません。2024年度(2024年4月1日~2025年3月31日)の手術件数は計3,676件でした。内訳は白内障1,958件、網膜硝子体812件、涙道438件、緑内障86件、その他の手術が382件です。眼瞼や斜視を含め幅広い症例に対応し、地域に根差した総合的な眼科医療を実践しています。
設備面や体制面の充実も図られているそうですね。

眼科専門病院として手術や検査に必要な環境を整えております。手術室は3室あり、全身麻酔下での緊急手術にも対応可能です。麻酔科には常勤医が在籍し、白内障や網膜硝子体手術をはじめとした幅広い症例に対し、安全性を重視した周術期管理を実現しています。また精度の高い治療には先進設備だけでなく、検査を担うスタッフの力も欠かせません。特に視能訓練士は、精密な度数合わせや乱視矯正など、術後の見え方を大きく左右する検査を丁寧に担当しています。近年ニーズが高まる多焦点眼内レンズにおいても、患者さんの生活スタイルや希望を細かくヒアリングし、医師と連携しながら適切な選択を支えてくれています。さらに院内では多職種が参加する合同勉強会を定期開催し、医師・看護師・薬剤師・視能訓練士らが最新の知識や課題を共有。小規模ながら風通しの良い体制を築き、迅速かつ質の高い医療を提供できるよう努めています。
地域連携については、どのように取り組まれていますか?

地域の皆さんが安心して医療を受けられるよう、診療所や病院の先生方と連携しながら診療を進めています。地域連携室を通じて紹介患者さんの予約を事前に受けつけ、待ち時間の短縮に努めています。緊急性の高い眼科疾患は専門性に基づいた体制でしっかり対応し、病状が落ち着いた患者さんについては、かかりつけ医へ逆紹介を行い、安心して生活の場へ戻れるよう支援しています。こうした紹介・逆紹介の仕組みを整えることで、地域全体で患者さんを支える体制を築いています。実際に、白内障や網膜疾患を中心に毎年たくさんのご紹介を受け、大阪府外からもたくさんの患者さんに来院いただいています。また、年1回「多根眼科フォーラム」を開催し地域の先生方と意見交換を行い、顔の見える関係づくりにも努めています。今後も地域の医療機関と協力しながら、患者さんにとって最良の医療を提供できるよう取り組んでまいります。
今後の展望や地域の皆さんへのメッセージをお願いします。

私たちは眼科専門病院として、網膜剥離や急性緑内障発作といった一刻を争う疾患から、白内障や緑内障、さらには斜視や涙道に至る幅広い疾患に対し、質の高い医療を提供することを使命としています。地域の先生方としっかり連携し、患者さんが必要な時に必要な医療を安心して受けていただける体制を整えておりますので、どうぞお気軽にご相談いただけたらと思います。また、大学から数多くの若手の先生を受け入れ、次世代の眼科医師の育成にも力を注いでいます。私自身10年以上この病院で診療を続けてきましたが、看護師をはじめとしたスタッフの連携が非常に良く、特に緊急手術の際にはチーム全体が一丸となって動く体制に心強さを感じています。今後も、これまで培ってきた経験と体制を生かし、さらにクオリティーの高い医療を提供し、地域の皆さんの大切な目の健康を守るために、私たちはこれからも全力で取り組み続けてまいります。

川村 肇 院長
1992年大阪大学医学部を卒業。2000年米国ミシガン大学ケロッグアイセンターへ留学、2006年医学博士号(大阪大学)を取得。2015年に多根記念眼科病院に着任し、2025年より現職。専門は網膜硝子体疾患および白内障手術。日本眼科学会眼科専門医として、専門性の高いチーム医療を実践し、地域医療の発展に尽力。患者にわかりやすく丁寧な説明を心がけ、現在も数多くの手術に精力的に取り組んでいる。





