特定医療法人ダイワ会 大和中央病院
(大阪府 大阪市西成区)
西尾 祥史 院長
最終更新日:2024/07/25
整形外科を主軸に多職種連携で包括サポート
大阪市西成区で整形外科を柱に急性期医療を支える「特定医療法人ダイワ会 大和中央病院」。膝や股関節の人工関節手術をはじめ、運動器のケガや疾患、脊椎疾患、リウマチなど幅広く診療し、高齢者の年齢による悩みに対応する。院長を務める西尾祥史先生は膝・股関節の人工関節手術が専門で、数多くの執刀をしてきた。二次骨折予防にも注力し、骨粗しょう症リエゾンチームを発足。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士などの専門スタッフとともに、リハビリテーションや治療サポートにも力を尽くす。また高齢者医療では複数疾患に対応することが重要として、高血圧や糖尿病、物忘れ、風邪症状などにも親身に診療を行ってきた。その結果、今では高齢者ばかりでなく家族で診療に訪れる人も増え、地域になくてはならない病院となっている。「ただ医療を提供するのではなく、患者本位の医療を提供することが大切です。待合室ではデジタルサイネージを利用して医療情報を発信し、予約にこだわらず診療を受けつけるなど、敷居の低い身近な病院をめざしています」と語る西尾院長に同院について話を聞いた。(取材日2024年5月23日)
病院の成り立ちや基本理念についてお話しください。
当病院は、1969年に西成区花園北2丁目に「医療法人 大和ファミリー会」の「大和中央病院」として開設しました。その後、1994年法人名を「医療法人ダイワ会」へ変更し、2002年西成区長橋1丁目に「医療法人ダイワ会 大和中央病院」として新築移転いたしました。現在は病床数165床、うち一般135床、療養30床の中規模病院として、地域における急性期から慢性期までの疾患に対応しています。診療科は内科や外科のほか、整形外科、リハビリテーション科、放射線科、循環器内科、精神科などがあり、院内では180人ほどのスタッフが働いています。「優しさと思いやりの心をもって、いつでも、誰にでも、最高の医療を提供できるよう努力する病院」を基本理念に掲げ、常に患者さんに寄り添った診療とは何かを追求し、地域のニーズを受けて進化し続けることを大切にしながら診療を続けています。
地域における病院の位置づけと役割についてもお聞かせください。
西成区は大阪市の中でも高齢者の多い地域です。「高齢者の健康寿命に寄与できる病院」を目標に、基幹病院やクリニックにはない、迅速な手術や身近な外来診療で、地域にお住まいの方はもちろん、開業医の先生方にも頼りにされる病院をめざしています。例えば、完全予約制の診療にこだわらず、急な患者さんの診療にも快く応じたり、当院で手術を受けていない患者さんにもリハビリテーションだけ提供したりと、柔軟な対応で受診へのハードルを下げて医療環境を整えているのもその一つです。また医療だけを提供するのではなく、患者さんの生活背景や家庭環境まで考慮し、しっかりコミュニケーションを取った上で治療方針を決めることも大切にしています。ご家族が遠方にいる場合にはこちらから手術の同意をいただくなど、手厚いサポートと下町ならではの寄り添った診療で、「行って良かった」「選んで良かった」と思っていただける医療を心がけています。
特に力を入れている診療分野は何でしょうか?
当病院では、四肢の骨折、関節・筋肉・神経といった運動器疾患など幅広い整形外科診療に対応しています。中でも主軸は膝や股関節などの人工関節手術です。院内にはMRIやCTなどの検査機器のほか、手術室が2つあり、効率良く数多くの手術に対応しています。人工関節手術の専門知識を持つ人材の育成にも力を注ぎ、大学病院で行っているような専門性の高い治療を当院で実施しています。また骨粗しょう症評価を行い、二次性骨折予防に注力すると同時に、リハビリテーションや管理栄養士による栄養指導など、多職種による骨粗しょう症リエゾンサービスに取り組んでいます。またご高齢患者さんは複数の疾患でお悩みの方も多いことから、内科、循環器内科や物忘れ、リウマチ膠原病内科を専門とする医師と連携し、高血圧などの生活習慣病、泌尿器の悩み、食欲低下、肺炎などの治療にも尽力し、総合的に患者さんの生活を支援しています。
病病連携や病診連携の取り組みにも注力されています。
当病院は兵庫医科大学病院や関西医科大学附属病院との結びつきが強く、循環器内科や物忘れの診療などで医師の派遣を受け、大学病院で受けるレベルの専門性の高い治療を提供しています。これまでは複雑な手術は大きな病院をご紹介することもありましたが、近年は幅広い診療をカバーできる体制が整ってきています。最近では兵庫医科大学病院から脊椎を専門とする医師に来てもらい、首や腰部の脊柱管狭窄症などの脊椎疾患も手術できるようになりました。身近な病院で高度な治療を受けられることは、地域の方にも大きな安心につながるのではないでしょうか。また一方で臨床実習、公衆衛生学実習、地域医療実習、看護実習の受け入れをして、後進の育成やマンパワーの充実も図っています。さらに、退院後の生活についても地域医療連携室を設けて、地域の医療機関・介護・福祉・行政との架け橋となり、患者さんが安心して暮らせるようにサポートも行っています。
今後の展望と地域の方へのメッセージをお願いします。
日本はこれから、団塊世代が全員75歳以上となり、全国民の3人に1人が65歳以上の超高齢者大国となる見込みです。また高齢者の一人暮らし、夫婦ともに高齢という世帯も増加しています。このような社会の中で、高齢者がいつまでも元気でいられる、万が一病気やケガになったとしても早期に社会復帰や自宅復帰ができる医療を提供することが私たちの使命です。当病院では関節の老化や転倒骨折、認知症、肺炎、尿路感染などが健康寿命の鍵となっていると考え、整形外科診療と同時に総合的診療を重要視しています。また一度でもご縁のあった患者さんは、地域のかかりつけの先生とともに、ずっと寄り添っていくことも信条にしています。一般的に退院したら術後管理がほとんどないケースもありますが、治療後1年間に計5回の受診をお願いしているのも当院ならではの特徴です。生き生きとした暮らしを守るため、これからも皆さんの健康を支えていきたいと思います。
西尾 祥史 院長
2003年兵庫医科大学医学部卒業後、同大学整形外科に入局。主に人工関節を専門とし、大学教員として研究や臨床を重ねる。兵庫県立塚口病院整形外科医長、カルフォルニア大学サンフランスシスコ校整形外科リサーチフェロー、宝塚市立病院整形外科主任医長などを経て、2018年より大和中央病院へ。2022年より現職。地域住民の健康寿命に寄与できる病院づくりをめざしている。日本整形外科学会整形外科専門医。医学博士。