独立行政法人国立病院機構 京都医療センター
(京都府 京都市伏見区)
小池 薫 院長
最終更新日:2024/06/20
豊かな人財で地域医療を支え続ける
「独立行政法人国立病院機構 京都医療センター」は、1908年設立の「京都えいじゅ衛戎病院」を前身とし、2004年より独立行政法人化して病院名を変更した。京都市南にある市内最大の人口である伏見区のおおむね中央に位置し、診療圏は京都市、向日市、長岡京市、大山崎町の2次医療圏にとどまらず、京都府南部地域から大阪府北部および滋賀県南部をはじめ他府県に及ぶ。病床数600床と38の診療科を有し、3次救急に対応する医療機関として急性期を支えるのはもちろんのこと、がん診療連携拠点病院として専門性の高いがん治療にも力を注いでおり、緩和ケア病棟や患者支援部門も開設。また、地域医療支援病院として地域の病院やクリニックとの連携体制を強化したシームレスな治療の実現をめざしている。2020年4月に院長に就任した小池薫先生は、救急医学を専門とし、東北大学や京都大学などの救急医療立ち上げに携わってきたエキスパート。その経験から「当院独自の強みを生かしつつ、地域患者のニーズに合った診療やサービスを拡充させて、これからも長く愛される病院にしていきたい」と語る。(取材日2021年4月13日/再取材日2023年3月23日)
貴院の地域における位置づけと役割について教えてください。
当院は、京都府で3次救急医療を担う病院の一つです。救命救急医療はもちろん、がん診療にも力を注いでおり、2007年には地域がん診療連携拠点病院に指定されました。独立行政法人国立病院機構政策医療ネットワークの中では、内分泌・代謝性疾患の高度専門医療施設、成育医療の基幹医療施設、がん、循環器、腎及び感覚器疾患の専門医療施設を持つ病院としての役割を果たしています。政策医療としてはエイズ治療拠点病院として位置づけられています。前身となった「京都えいじゅ衛戎病院」は明治時代、1908年の設立で、実に100年以上という長きにわたって地域に根づいてきました。古くから日本の中でも人材が多く集まって研究が行われ、教育の場としても歴史があります。地域の中核病院として、いざという時に救いの手を差し伸べることができるよう、できる限り総合的な診療をめざして体制を整えています。
2020年に院長へ就任された先生のご経歴から教えてください。
そもそも私の専門は、がん治療なんです。外科医師として内科分野や手術、研究と幅広く診療を行っていましたが、ある時、先輩医師の勧めで救急医療に携わったことをきっかけに、専門を救急医療へとシフトしました。その後は、1994年に日本医科大学千葉北総病院高度救命救急センター、2001年東北大学附属病院の高度救命救急センター、2006年京都大学附属病院の救急医療の立ち上げなどに携わってきました。当初、がんを専門とする外科医師をめざそうと思ったのも、ある部位のエキスパートとなることよりも、総合的に患者さんを診ていける医師になりたいと思ったからです。救急医療では、さまざまな病気やケガの患者さんが搬送されてきます。自分の得意分野である救急医療とがん診療の経験を生かしながら、可能な限り病気を総合的に見つめ、患者さんが身近に感じてくれるような病院を構築していきたいと思っています。
貴院で特に力を入れている診療は何でしょうか?
救急とがん診療です。とりわけ救急がメインですから、特殊な疾患や合併症を患った重症の患者さんの診療も受け入れできるよう600床の病床と38の診療科をそろえて、幅広い疾患やケガに対応しています。がん診療においては2007年に地域がん診療連携拠点病院に指定されており、京都府下の病院でも数少ない緩和ケア病棟を開設しています。また、一方で、状態が良くなった方には地域の病院に戻っていただいたり、引き続き当院に通院していただいたりと、個々の生活に合わせた対応ができるよう患者支援センターも常設し、地域包括ケアシステムの充実も図っています。2020年から高度がん医療セクションを立ち上げ、2021年からはさらに、地域連携連携室、患者支援センターなどが連携することで、緩和ケアを含めた組織立ったがん診療を発展させていこうと動いています。すべての患者さんにしっかりと寄り添っていくことをスローガンにしています。
貴院の強みは何だと思われますか?
マンパワーですね。全国的に医師不足がいわれていますが、これほど数やクオリティーに恵まれている病院はなかなかないと自負しています。特に救命救急センターの医師は、十数人おり、充実しているといえます。血液内科や乳腺外科の医師も2021年から増えましたので、今まで以上に専門的な診療の受け入れが行えるようになりました。逆に弱みはというと、伝統ある組織にありがちな保守的で柔軟性が少ないところでしょうか。しかし、このたびの新型コロナウイルス対応以降、今までの価値観を改め、前向きに取り込もうとする気風が生まれました。例えば、以前は救急車で運ばれてきた患者さんの状態が落ち着いても、そのまま救急の医師が診療を行うといったことが起きていました。しかし、それではいざという時の救急分野のマンパワーが生かされません。ですが、現在は内科や外科にスムーズに引き継がれるよう見直され、病院内の連携がしっかりと取られています。
今後の展望と読者の方へメッセージをお願いします。
ここ数年で病院の気質や体制が変わりました。仲間意識が高まり、より効率的になったと思います。病院のことをもっと知ってもらおうと、ロゴマークの制作や診療科紹介の動画制作も積極的に行ってきました。今後もさらに連携を強化していって、病院システム全体の能率を上げていきたいと考えています。そのためにも、職員の満足度・サービス・働き方改革の推進は欠かせません。それは同時に、患者さんへのサービスや満足度を上げていくことにもつながると思うからです。当院では患者さんにアンケートを行っています。その不満項目に上がることが多いトイレの一部を改装したり、採血やエックス線など、待ち時間の短縮に努めています。また、昨年春からは、より快適に入院生活を送っていただけるよう特別個室を設けました。今後も皆さんの声を拾い上げながら、職員が一丸となって地域の健康のため頑張ってまいります。常に前進し続けていけるよう、ご支援ください。
小池 薫 院長
1981年慶應義塾大学医学部卒業。米コロラド大学、日本医科大学救急医学教室、東北大学救急医学分野助教授、京都大学初期診療・救急医学分野教授などを経て、2020年から3次救急を担う京都医療センターの院長に就任。救急医学のスペシャリストであり、日本医科大学千葉北総病院や東北大学病院、京都大学医学部附属病院などの数多くの病院で救急医療の立ち上げに携わってきた。医学博士、薬学博士。