地方独立行政法人京都市立病院機構 京都市立病院
(京都府 京都市中京区)
清水 恒広 院長
最終更新日:2025/06/18


市民の病院として高度で安心感を伴う医療を
下京区を東西に走る五条通に面した「京都市立病院」。西大路五条や嵯峨野線の丹波口駅からアクセスしやすい場所にあり、広大な敷地内には屋上ヘリポートを備えた2つの病棟とともに、200台超の駐車場や緑豊かな5つの「庭」が設けられるなど、快適な環境が整う。京都市内で長く診療を続けてきた2つの病院が統合され1965年から診療を開始した同院は、2025年に60周年を迎える。現在は多彩な診療科と548床という体制で高度急性期医療や救急医療、さらに周産期医療や災害対応にも注力し、市民生活の安心を支えている。「近年は新型コロナウイルス感染症の診療に注力する一方で新たな先進医療機器も活用しながら、患者さんの負担が少ない治療に努めています」と話す清水恒広院長は、20年以上にわたり同院で勤務し2025年4月から院長に就任。「市民の病院として、患者さんと同じ方向を向き、心のこもった医療を届けていきたいですね」と思いを語る。取材では新たに運用を始めた手術支援ロボットなどの設備や、院内のさまざまな部門で展開される患者支援について、詳しく紹介してもらった。(取材日2025年5月13日)
まもなく開業60周年を迎えられるそうですね。

ええ。当院の歴史を振り返りますと、1882年に開業した上京公立避病院という伝染病病院にさかのぼります。その後同院は市立京都病院となり、さらに京都市中央市民病院と合併して、1965年に誕生したのが当院です。このような背景もあり、当院では高度急性期医療に加えて感染症治療や救急、周産期や災害医療など民間病院では担いにくい分野も、政策医療として重点的に取り組んでいます。新型コロナウイルス感染症の時期には第二種感染症指定医療機関として早くから患者さんを受け入れ、その後も多数の患者さんを診療してきました。さまざまな苦労にも見舞われましたが、現在では院内全体の感染症対策がレベルアップし、大半の病棟で感染症のある患者さんを受け入れる体制が整っています。また60周年を迎える今、あらためて患者さんに寄り添う姿勢を大事にしながら、安全で質の高い医療を届けたいという意識を、多くの職員が持ってくれています。
新たな医療機器の導入に伴う診療の変化についてご紹介ください。

当院では10年以上前から手術支援ロボットを導入し、2020年には新たな機種に入れ替えながら、泌尿器科や消化器外科、呼吸器外科の手術で活用しています。ロボット支援手術では手術での傷口が小さく数も少ないですし、人間の手では難しい複雑な動作も可能ですので、患者さんのご負担はかなり軽くなっています。手術症例も増えてきたことから、2023年には、鉗子が1本のタイプの手術支援ロボットを新たに導入しました。さらに傷口が少なくて済みますので、このタイプに適した主に骨盤内臓器の手術で運用し、手術数を増やしているところです。また血管造影装置でも、エックス線を2方向から照射できる新機種を2024年に導入。被ばく量が抑えられ、一方で得られる画像の質は大幅に向上しています。このため、脳動脈瘤や頸部頸動脈狭窄症などの脳血管疾患では、開頭手術に比べ患者さんの負担が軽い血管内治療を選択できる場面も、少しずつ増えています。
がん診療では、多方面から患者支援を行っているとか。

手術、化学療法、放射線治療などを組み合わせて行うがん治療では、副反応や有害事象が出てしまうことも。つらい症状や精神的な苦しみを和らげるために、当院ではがんと診断された時点から緩和ケアを提供できるようにしていますし、早期から緩和ケアを併用して治療を続けるメリットに関しても、情報発信に取り組んでいます。また治療しながら働きたい患者さんには、就労支援を実施。放射線照射、外来化学療法のスケジュールなども、可能な範囲で仕事の都合に合わせるなど柔軟に対応しています。さらにがん治療では脱毛や皮膚の変化など、見た目の変化に悩む患者さんも多く、それに対するアピアランスケアについても新たな取り組みを始める準備を進めています。院内のがん医療連携センターやがん相談支援センター、緩和ケア部門などが連携して行うさまざまな患者支援は、がんを専門とする外部医療機関からも注目されています。
地域との連携に関して、変化した点はありますか?

開業医院や病院との連携の窓口になっているのは、患者支援センターの地域連携室です。以前は運営を外部に委託していましたが、業務のスムーズな遂行や院内各部署との円滑な連携をめざして自前での運営に切り替え、成果が得られています。さらに、これまで地域医療機関から患者さんをご紹介いただく際の受診予約は電話やファクスで受けていましたが、2025年6月にはウェブ上で24時間365日行えるシステムを導入。以前の方法では予約日時の確定までに時間がかかり、ご不便もあったと思うのですが、ウェブでは希望する診療科の空き枠を確認して即時に予約が取れ、紹介元の医療機関で予約票を発行して患者さんにその場で渡していただけるようになりました。なお、具体的な診療情報については後からファクスなどでお送りいただきます。ともかく診療の場で予約がすぐにお取りいただけますので、紹介受診の際のお手間は大幅に軽減していると思います。
最後に、地域の方々へのメッセージをお願いします。

2025年12月の開業60周年に向け、現在、若い職員がチームでプロジェクトを計画してくれています。2025年4月には、京都市内の企業のご協力でキッチンカーの出店販売やミニロボットの操作体験会を実施。患者さんやご家族、職員でにぎわい、笑顔のあふれる時間になりました。こういった和やかな雰囲気は日常の診療でも大事にしたいところです。当院は紹介受診重点医療機関であり、基本的には何かあればかかりつけ医の先生からご紹介を受け、治療が終われば戻っていただく病院です。だからこそ、不安を抱いて受診される患者さんとはわかりやすい言葉で穏やかに接することを職員全体で心がけています。病院入り口で「あいさつ運動」なども実施していますが、ちょっとした笑顔や会釈がやはり気持ちを和らげてくれますね。地域の暮らしを支える病院として、質が高く安全で心のこもった医療を提供する結果、患者さんも職員も笑顔でありたいと考えています。

清水 恒広 院長
1982年京都大学医学部を卒業後、同大学小児科学教室入局。関連病院で研鑽を積み、1992年には同大学大学院医学研究科博士課程修了。彦根市立病院、静岡市立静岡病院などを経て2001年京都市立病院感染症科部長に着任し、小児科でも診療を担当。院内感染症対策に加え、海外渡航者に向けたワクチン接種など感染症科の外来診療やHIV診療にも注力。2020年京都市立病院機構理事および同院副院長、2025年より現職。