医療法人社団高邦会 福岡中央病院
(福岡県 福岡市中央区)
内藤 正俊 病院長
最終更新日:2024/01/17
地域でつくる“ワンチーム”の医療をめざす
2019年4月、医療法人高邦会は、それまで60年以上にわたって福岡市の中心地において地域医療を支えて来た福岡逓信病院を引き継ぎ、「福岡中央病院」として新たな医療体制の構築に取り組んでいる。整形外科、消化器内科、循環器内科、小児科、眼科など幅広い診療科目はもちろん、2020年4月には脳神経センターを開設。認知症、てんかん、パーキンソン病といった難病にも常勤医師8人という体制で対応している。内藤病院長は「2025年にはすぐ隣に移転し、現在の6階建てから12階建てに生まれ変わります。患者さんにも喜んでいただけるような設備を考えており、今から心踊る毎日なんですよ」と笑顔で語る。他にも鮮明な画像で診断精度の向上に寄与する3.0テスラのMRIも導入し、がんやヘルニアなど幅広い治療に活躍。と同時に福岡の中心地にありながら病診連携をはじめとした地域医療との連携を俯瞰的な目線で考える内藤病院長に、同病院の強みや診療にあたって大切にしている点など、幅広く話を聞いた。
(取材日2021年11月19日/情報更新日2024年1月5日)
現在の体制に至るまでの流れ、患者層などを教えてください。
「安心・信頼・連携の医療」をモットーに、福岡市中央区を中心とした地域医療を1951年から68年間、前身の福岡逓信病院より担っており、新たに2019年4月に福岡中央病院となりました。今年で5年目ですが、禁煙や睡眠時無呼吸症候群などの専門的な外来はもちろん、2020年4月に開設した脳神経センターなどが周辺に認知され始め、来院者数もかなり増えてきました。当院は福岡の中心部を天神とともに作りあげる薬院エリアにあります。福岡有数のビジネス街でありマンションなどが立ち並ぶ生活エリアでもあるため、ビジネスパーソンから高齢者まで幅広い患者さんがいらっしゃいます。お仕事での肩こりや腰痛、ヘルニアなど整形外科の疾患、また「健康診断で引っかかったんですが……」という相談も多いです。薬院大通駅からは徒歩4分ほど、各地域へとつなぐバスも多く走りアクセスも良いため、仕事帰りなどに寄ってくださる方も増えました。
貴院の強みはどこにあるとお考えでしょうか?
一つは睡眠時無呼吸症候群、認知症などの専門的な外来を配置していることでしょう。地域のクリニックからのご紹介が多いのもこれらの疾患です。循環器内科などもあり、3.0テスラという精度の高いMRIで得た情報をもとに、高い水準での診断と治療、そして必要があれば手術も行っています。現在は低侵襲、つまり患者さんの体の傷を小さくし、予後を過ごしやすくするための治療が中心となっています。当院でも消化器系がんに対する腹腔鏡下手術を行っています。また整形外科も拡充を続けており、脊椎と関節の専門医師を含めた5人体制で、脊椎の難治性疾患や関節の高度機能障害に対する手術を含めた、多様な運動器疾患の治療を行っています。整形外科も近隣のクリニックからのご紹介も多いです。移転したあかつきには、今よりももっと広い場所で、患者さんが楽しみながらリハビリテーションができるような場所にしたいと計画しています。
脳神経センターも開設されたそうですね。
脳神経センターでは、認知症、多発性硬化症、慢性炎症脱髄性多発神経炎、神経免疫疾患、パーキンソン病、脳卒中、神経難病などの診断と治療を専門としています。センター長には九州大学名誉教授でもある吉良潤一先生をお招きし、脳神経内科の専⾨医師8人と専⾨スタッフ、医療機器をそろえました。精神科や麻酔科医師とも連携し、九州地区を代表する脳神経疾患の治療センターになっていると自負しております。多くの病院では、脳神経内科がない、もしくはあっても医師が少ないという状況であるためか、福岡県内だけではなく他県からお越しになる患者さんもたくさんいらっしゃいます。これは脳神経センターだけではなくどの部門にも言えることですが、前述したように高性能なMRIを導入していることもあり、検査から治療、必要であれば手術、リハビリまでを一貫して行える点も、当院の大きな特徴であると考えます。
患者さんに対し、心がけている点は何でしょうか?
現在はインフォームドコンセント、つまり患者さんの病気への理解と治療への同意が大前提です。当院でももちろん、この考えが通底にあります。患者さんの声に耳を傾け、どんな病気であっても正直に、隠さずに真実を伝えるという意識は、どの医師にも共通しているでしょう。とはいえ、どのような言い回しで伝えるかという配慮も、医師には必要です。昨今、がんは2人に1人がかかる病気とまでいわれるようになりましたが、一方で、転移前に早期発見・治療ができれば寛解状態までもっていくことをめざせるケースもかなり増えました。これには治療結果に高い期待が持てる新しい薬が作られたり、前述したような低侵襲の手術によるものも大きいですね。それでもやはりがんの告知ではショックを受ける方が多いのです。精神面のケアも含め、どのような治療・手術にしていくかを患者さんとともに考えていくことが、今後の医療には必須になってくるのだと感じています。
今後の展望や、読者へのメッセージをお願いします。
「福岡中央病院なら何でも対応してくれる」という体制をめざしています。低侵襲な手術によって入院期間が短くなるメリットが生まれたことに伴い、退院後の通院はご自宅に近いクリニックなどへスムーズにバトンタッチするという流れも、並列で考えていかねばなりません。そのためにも福岡大学病院、九州大学病院などの三次救急医療機関に加え、周辺のクリニックやメディカルソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどといった各機関との連携が不可欠です。在宅医療などを含め、患者さんが当院を去られた後にも治療やリハビリを続けていきやすい環境を整えていく。これがこれからの“ワンチームの医療”なのだと考えています。今後も伝統を大切にしながら「生命の尊厳」、「生命の平等」の理念のもと、患者さんの立場に立った医療を実践していきます。健康診断のほか、腰痛などの軽い症状、何か気になる点などがあればぜひ、気軽に当院に足をお運びください。
内藤 正俊 病院長
1977年に鹿児島大学医学部を卒業後、九州大学医学部整形外科医局に入局。1992年に福岡大学医学部へ入職し、2007年から福岡大学病院、2017年から福岡山王病院でそれぞれ病院長を勤め、2020年4月から現職。医療行政に関わる会議などを通じてマクロ的な医療の姿を学ぶ一方、患者への負担が少ない低侵襲の治療にも注力。変形性股関節症を専門とし、「正確な診断、最適な治療」をモットーに研鑽を積んでいる。