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日本赤十字社 京都第一赤十字病院

(京都府 京都市東山区)

大辻 英吾 病院長

最終更新日:2024/11/07

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急性期の充実に力を注ぎ、地域に還元する

京都市東山区にある「京都第一赤十字病院」は、1934年に「日本赤十字社京都支部病院」として開設され、約90年にわたり京都市の高度急性期医療を支えてきた病院である。救命救急センター、総合周産期母子医療センター、地域がん診療連携拠点病院として、これらの診療を大きな3本柱とし、透析やリウマチ患者など合併症のある患者の受け入れや、災害医療にも精力的に取り組み、地域はもとより広域での医療支援に力を尽くす。また、緩和ケアを含むがん医療や地域医療連携体制の見直し、かかりつけ医サポート事業なども積極的に行い、地域医療にも注力している。2024年4月からは新しく大辻英吾病院長が着任。長年、京都府立医科大学で消化器外科学の教授を務め、医療安全にも携わってきた大辻病院長は「地域で頼られる病院であるために、臨床レベルの向上や学術活動の充実はもとより、心の通った教育で医療従事者の育成にも努めていきたい」と話す。今回は同病院の診療の特徴や今後めざす病院についてなど、たっぷりと話を聞いた。(取材日2021年3月10日/再取材日2024年10月1日)

地域における病院の位置づけと役割について教えてください。

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「京都第一赤十字病院」は、京都府の三次救急医療機関としての役割を担う病院で、病床数602床を有し、内科系・外科系ともに多数の診療科を展開する病院です。1934年の開設以来、地域医療はもちろんですが、1997年には救命救急センターと総合周産期母子医療センターを開設、2007年からは地域がん診療連携拠点病院の指定を受け、高度な急性期医療を提供してきました。救急においては24時間体制で治療にあたり、「断らない救急」をモットーに救急車やドクターヘリを京都府内でも多数受け入れています。また周産期医療においても、早産や多胎、合併症のある妊婦さんの分娩、NICU(新生児集中治療室)での新生児受け入れを積極的に行ってまいりました。さらに、周産期医療における基幹病院としての役割も担い、京都府下の空床状況の把握を受け持ち、ハイリスクな妊婦さんの搬送先の確保にも努めております。

御院の特色と特に力を入れている診療分野を教えてください。

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一つには、救急です。当院では3次医療を担っていることからも、重症や複合疾患のため他院では対応が難しいと判断された患者さんが数多く運ばれてきます。「医療の最後の砦」的な存在として、あらゆる疾患に対応できるよう検査や手術などの能力上達、マンパワーの向上にも力を入れています。血管造影検査、心臓血管手術、緊急内視鏡手術など、夜間や休日も対応できる技術力を備えることはもちろん、現在は3人在籍する救急救命士については今後さらに増員していく予定です。脳卒中、心疾患、外傷などはもとより、透析やリウマチなど合併症がある患者さんや、腎不全、呼吸器不全、妊婦さんの脳出血といった難しい症例まで幅広くカバーしているのも、当院の特色。それだけの数の疾患に迅速に対応するにはチームの力が欠かせませんが、診療科の垣根なく、長年災害派遣などに寄与してきた当院だからこそできることだといえるでしょう。

がん診療にも力を入れておられます。

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化学療法や放射線治療など、さまざまながん治療を手がける中、特に低侵襲な手術に注力しています。開腹の必要がない内視鏡を使った粘膜下層剥離術(ESD)はじめ、ロボット支援手術にも注力し、2024年10月からロボット専用手術室を2部屋増設いたしました。それに伴い、消化器外科、泌尿器科、産婦人科の分野における専門家の充実にも取り組み、中でも消化器外科では所属する13人の医師のうち10人が日本消化器外科学会消化器外科専門医となっています。高齢者や複数疾患のある患者も安心して受けられる、安全で低侵襲な手術の追求に力を注ぐ一方で、緩和ケアの必要性も重要視してきました。多職種から構成される「緩和ケアチーム」を発足し、緩和ケア病棟をスタートさせるとともに、就労支援、生活支援、レスパイトケアなどを提供できる体制を整備。がん医療分野の総合力を高めるべく、がん患者さんのQOL改善にも努めています。

地域連携にも取り組んでいるとお聞きしました。

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近年は生活様式が多様に変化していることもあって、患者さんのニーズにお応えするためには地域全体での連携が重要になってきています。当院でも早期から回復期における病病・病診連携のネットワーク構築に取り組み、2024年からスムーズな検査・治療の予約ができるシステムを導入し、当院と京都府立医科大学附属病院、京都第二赤十字病院、地域の連携するクリニックとで運営を開始しました。検査結果や術後の状態なども共有できるので、患者さんを地域一体となって見守ることができます。今後は地域包括ケアの充実はもちろん、長期化・広域化している災害に対しても、地域に貢献できるシステムへつなげていきたいと考えています。またこういった取り組みについて患者さんやご家族に知っていただくことも重要です。8月には京都第一赤十字病院フェスティバルを開催するなど、地域に開かれた病院と、当院を身近に感じていただくイベントにも取り組んでいます。

今後のビジョンと、読者へのメッセージをお願いします。

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私はこれまで京都府立医科大学で教授として、医療推進の一環として後進の育成に力を注いできました。そこで伝えてきたことは、「医療人である前に一人の社会人であり、良い社会人として常日頃から人としてどうあるべきか考え、行動することが大切」ということです。患者さんの立場で当院に求めていることを考えた場合には、やはり「安全性」が重要課題ではないかと考えます。だからこそ、安全に基づいた高度先進医療の推進、急性期医療の充実を図っていきたいと思っています。院内には「ご意見箱」を設置し、患者さんの声を丁寧に拾い上げ、理想とする病院に一歩一歩近づけていきたいと考えています。加えて働き方改革にも取り組み、やりがいを感じられる職場にすることで、患者さんにとっても良い医療環境を生み出していければと思っています。京都の皆さまに信頼され愛される病院となれるよう、これからも努力を重ねていきたいと思います。

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大辻 英吾 病院長

1984年京都府立医科大学卒業、1990年同大学大学院修了。その後、米国ワシントン大学留学、京都府立医科大学大学院医学研究科消化器外科学講師、教授などを経て、2024年より現職。消化器外科の中でも胃がんを専門として研鑽を積み、医療安全管理部長も務めた。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、医学博士。趣味はゴルフと配信ドラマの鑑賞。

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