社会医療法人財団白十字会 白十字病院
(福岡県 福岡市西区)
渕野 泰秀 病院長
最終更新日:2025/04/03


福岡市西部・糸島医療圏を支える中核病院
1982年に福岡市西区で診療を開始した「白十字病院」。急性期から慢性期まで幅広い患者に対応できる、福岡市西部・糸島の地域医療を担う中核病院として成長してきた。2021年の開院40年目の節目には466床あるケアミックス型だった病院を、急性期に特化した282床を持つ同院と回復期に集中し161床を持つ「白十字リハビリテーション病院」に分院し、再編成して機能を洗練。脳血管障害に対するカテーテル治療や消化器外科・泌尿器科領域におけるロボット支援下手術など高度な低侵襲治療に注力しているほか、福岡市西部から糸島市の救急医療をカバーしている。その一方、福岡市西区の地域医療支援病院として、在宅療養後方支援や健康な街づくりにも貢献。病院周辺を周回できる遊歩道にしたり、フィットネス広場を設置したり、さまざまな取り組みを進めているのも大きな特徴だ。「高度専門医療を提供するだけではなく、在宅療養や健康づくりを支えていく病院として前進していきたい」と話す渕野泰秀病院長に、地域医療におけるミッションから診療の特徴までじっくりと語ってもらった。(取材日2025年2月13日)
地域の中核病院として果たすべき役割について教えてください。

福岡市西部・糸島には幅広い診療科をそろえた病院が少なく、また救急患者を受け入れられる医療機関も限られていることから、地域医療の要として皆さんの健康を守ることが私たちの使命だと考えています。現在、福岡市西区、糸島市の人口は32万人に上り、さらに今後も人口は増加していくと予想されています。医療ニーズの高まりに応えるためには、75人の各科専門医師が在籍しているという人的リソースの活用、コメディカルスタッフを含めた院内連携による質の高い医療サービス提供、先端機器や設備の拡充が欠かせません。白十字病院は地域医療支援病院である立場から、病病連携、病診連携を充実させて円滑に行い、地域医療を支えることが使命です。その中で高度専門医療から在宅医療の後方支援まで、皆さんのさまざまな要望にお応えできる病院になっていくべきと実感しています。
「医療は人、医療は心」というスローガンを掲げられていますね。

当院の「心」として「医療は人、医療は心」という言葉を大事にしています。医療には知識と技術が大切ですが、人が行うものですから、心がこもっていなければならないし、温かみがなければならないと思っています。病院にはさまざまな部署があり、数多くの専門職がいます。その職能を発揮するために、タスクシフトとタスクシェアを積極的に推進しているところです。そして、各々が協働・連携して患者さんに医療を提供することが、より良いサービスにつながっていくと信じています。それは地域医療連携に関しても同じです。診療所、病院、救急病院、回復期病院、療養病院がそれぞれの役割、機能を生かしてうまく連携することができれば、地域において優れた医療サービスが完成されていくはずです。お互いを思いやり、カバーし合うことが大切なのだと思います。
注力されている診療について教えていただけますか?

当院の4つの柱として、高度専門医療、救急医療、在宅療養後方支援、健康な街づくりを挙げています。中核病院として求められる高度専門医療のために11の診療部門を設置していますが、中でも「脳卒中センター」と「心臓・弁膜症センター」、「救急センター」、「手術センター」に力を注いでいます。「脳卒中センター」は24時間365日、専門の医師が対応できる体制を整備。カテーテルを用いた血管内治療を推進し、早期の社会復帰を後押ししています。また「心臓・弁膜症センター」では心臓弁膜症に対し、小切開でありながら精緻な低侵襲心臓手術(MICS)を行っており、超高齢化社会で増加が危惧される脳や心臓の疾患に備えています。低侵襲治療としては手術支援ロボットも導入し、2024年5月から消化器外科や泌尿器科で活用しています。高齢者の中には手術自体が負担になってしまうケースもあり、低侵襲治療のニーズは高まっていくでしょう。
救急医療も大きな役割になっています。

福岡・糸島医療圏内に救急病院はあるものの、重症患者を受けられる施設は限られているため当院に求められる役割が大きくなっているのではないでしょうか。年間を通して多くの救急車を積極的に受け入れているところですが、それ以上に患者さんは増えている状況にあります。タイミングによっては救急車に応需できないこともあり、今後の救急体制づくりが課題です。それをクリアするためには病床に余裕をつくることが欠かせないのですが、当院の急性期治療だけで解決できるものではありません。いかにスムーズに回復期の病院につなぐか、在宅療養に戻すかという点も重要です。高度専門医療を提供することも非常に大事な部分ですが、同じように在宅で療養している患者さんの緊急時にも応えていかなければなりません。肺炎や骨折などで在宅療養が難しくなってしまった患者さんを積極的に受け入れることも、私たちの役割だと考えています。
最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

当院は地域医療を支えるとともに医療の側面から健康な街づくりにも取り組んでいます。地域にコミュニティ施設を作り、当院主催の介護教室や認知症の患者さんとの関わり方などの講座を開いているほか、クリスマス会をはじめ地域のコミュニティスペースとして活用しています。また病院の敷地の周りは1周650メートルの遊歩道になっていたり、施設内にフィットネス広場を設置したり、健康づくりをサポートしています。ですから治療だけではなく予防という側面からも当院の施設、設備を活用していただけるとうれしく思います。医療を提供するだけが病院の仕事ではありませんからね。院内においても病院DXやタスクシフト・シェアなど一人ひとりが専門職能を生かせる仕組みづくりを進めているので、地域の人だけではなく医療従事者からも選ばれる病院をめざしています。それが地域住民により良い医療を提供することにつながるはずですから。

渕野 泰秀 病院長
1985年福岡大学医学部卒業。福岡大学病院第一外科(現在の消化器外科)に入局後、佐賀医科大学医学部附属病院、福岡徳洲会病院を経て、2002年に白十字病院へ。2016年から現職。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医の資格を持つ。趣味はトライアスロン。