医療法人 西福岡病院
(福岡県 福岡市西区)
渡邉 憲太朗 病院長
最終更新日:2023/01/27


地域ニーズに合わせさまざまな領域をカバー
1955年に結核療養所として開院された「西福岡病院」。福岡市西区の景勝の地である生の松原に位置し、豊かな自然環境の中で約70年にわたって地域医療を実践してきた。現在でも総病床数238床のうち45床は結核病棟で、福岡市内の結核患者の受け皿となっている。そうした歴史から現在は呼吸器診療をベースにしたケアミックス型の医療を提供し、地域の人々、とりわけ高齢者のかかりつけ医としての顔を持ちながら急性期医療にも取り組む。病診連携、病病連携にも注力し、地域のハブとしての役割を担っている。病院長の渡邉憲太朗先生は「地域のニーズに合わせてさまざまな領域をカバーしていくというのが、当院がめざすところ。高齢者医療など高度医療を提供する基幹病院では光が届かないところにスポットを当て、私たちにしかできない医療を見つけていきたい」と話している。そんな渡邉病院長に同院の成り立ちをはじめ、特徴でもある呼吸器診療、新たに注力している婦人科診療などについて詳しく話を聞いた。(取材日2022年11月15日)
まずは病院の歴史や地域での役割についてお聞かせください。

1955年長垂療養所としてスタートした西福岡病院は介護老人保健施設を併設するケアミックス型の病院です。結核治療に携わってきた歴史を引き継ぎ、今でも患者さんの約4割が呼吸器疾患の治療のために入院されますが、呼吸器疾患のみならず、急性期から慢性期までさまざまな疾患をお持ちの患者さんに対応する診療体制を構築し、緩和病棟も設置しています。高齢の患者さんが多く、急性期の治療が終わり、引き続き入院加療が必要という患者さんも数多く受け入れています。一方、地域のかかりつけ医という側面もあり、消化器疾患、循環器疾患、糖尿病をはじめとした生活習慣病などで通院されている患者さんもたくさんいらっしゃいます。先進的な医療が必要な方は大学病院をはじめとする基幹病院に紹介し、急性期治療が終わった後は私どもの病院へ、あるいは近隣のクリニックへとお返ししていく。そういう役割も求められているのではないでしょうか。
伝統でもある呼吸器診療について教えてください。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、結核、非結核性抗酸菌症、間質性肺炎などあらゆる呼吸器疾患の診断・治療を行っています。治療に難渋するCOPDや喘息など、難治性呼吸器疾患に対する臨床治験も積極的に行っています。肺がんを心配して来院される患者さんも少なくありません。CTを撮り、肺がんの可能性が高いと判断されれば、その後の詳細な検査は大学病院などより高次の医療機関で行うことを提案しています。日本人の結核罹患率は年々低下し、今や人口10万人あたり10人を切るまでになりましたが、西福岡病院に結核で入院する患者さんに占める外国人の割合が多くなりました。仕事や留学のために来日した時に実施される健診で結核が発見され入院するケースが多く、特に若年齢層の結核患者のほとんどが外国人です。英語圏以外の出身者も多いので、病棟にはポケットサイズの自動翻訳機を備えています。
婦人科診療にも注力されていると伺いました。

2022年から婦人科に常勤の女性医師が入職しました。これまでも婦人科診療は行っていたのですが、非常勤の先生が受け持っていました。患者さんの半分は女性ですし、婦人科ならではの悩みを抱えた方もたくさんおられるはずですので、今後力を入れていきたいと思っています。高齢者の方が多いため、不正出血などの症状をお持ちの方をはじめ、クリニックなどでは診療が難しい体が不自由な方などを積極的に受け入れていきたいと考えています。都心部のレディースクリニックには女性医師が多いのですが、郊外にそのようなクリニックが少ないので、婦人科を受診しづらいというお話も聞いています。そういう方たちの受け皿になっていければうれしいですね。ただし常勤医師は1人だけですから、手術や先端医療は難しいかもしれませんが、皆さんのご相談に応えながら、地域医療に貢献していきたいと思います。子宮頸がんの予防ワクチンも積極的にご案内しています。
地域連携や健診も強化されているそうですね。

当院は地域に根差した病院であり、他の医療機関や施設と協力しながら、一貫した治療が提供できるように病病連携、病診連携に取り組んでいます。地域連携室の役割は極めて重要であり、基幹病院のみならず近隣のクリニックの先生とも密に交流しています。私どもの病院は前にも申し上げましたが、かかりつけ医という側面もありますので、入院治療後もそのまま通院いただく場合もあります。健診部門も備えていますので、企業や個人の定期健診から病気の早期発見・治療にもつなげていく役割を果たしています。私が毎年新人研修の度に職員に伝えていることなのですが、自分が西福岡病院に入院することになったら、どういう治療・看護・介護をしてもらいたいかを常に考えながら仕事に励んでほしいと願っています。患者さんは将来の自分を映す鏡です。職員一同、患者さんの気持ちに真摯に向き合い、細かなところにまで配慮が行き届くように日々努力してまいります。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

私は呼吸器内科を専門とする医師ですが、当院は呼吸器領域に限らず地域の皆さまのニーズに合ったさまざまな領域をカバーする病院でなければなりません。とりわけ高齢者医療はきわめて重要なテーマです。当院は第一線の基幹病院のような先進的医療機器を備えた医療を提供することはできませんが、基幹病院で扱うことが難しい、いわば光が届かない部分に特に気を配り、当院でなければできないこまやかな医療・ケアを提供するよう心がけます。また可能な限りご自宅で過ごしていただくという観点から、従来の外来と病棟という枠組みに加え、訪問診療やオンライン診療にも力を注ぐ必要があります。通院が難しくなった高齢者の方にとって、訪問診療はご自宅を訪問することでより細かな行き届いた診療を提供できるという大きなメリットがあります。なによりも地域の皆さんの信頼を得ることが肝要なことであり、今一度医療の原点に立ち戻り診療に従事したいと思います。

渡邉 憲太朗 病院長
1976年九州大学医学部卒業。1982年九州大学大学院修了。1983年九州大学医学部胸部疾患研修施設助手。1984年国立療養所福岡東病院医員。1986年米国コーネル大学留学。1988年福岡大学病院講師。1999年米国アリゾナ州メイヨークリニック・スコッツデール留学。2005年福岡大学教授。2019年医療法人西福岡病院病院長、福岡大学名誉教授。専門は呼吸器内科学。