医療法人 西福岡病院
(福岡県 福岡市西区)
渡邉 憲太朗 院長
最終更新日:2025/06/25


地域医療のハブとして高齢期医療に注力
福岡市西区の景勝地・生の松原にある「西福岡病院」は、結核療養所としてその歴史をスタートさせた経緯から、現在は呼吸器診療をはじめとするケアミックス型の総合病院として地域医療を支えている。特に高齢期の医療に力を注いでおり、一般外来に加え基幹病院からの高齢者を中心とした救急患者の受け入れ要請にも積極的に対応しているのだという。また婦人科診療にも焦点を当て、2025年4月から常勤医2人体制となり本格的な婦人科手術が可能となり、地域の医療ニーズの受け皿となっている。さまざまな診療科に対応する総合病院として地域住民のかかりつけ医という側面を持ちながらも、基幹病院とクリニックの先生方と緊密に連係・協力しながら橋渡しをする役割も担っている。「西福岡病院のすべての職員は『自分が病気になり患者の立場になったら、どのように診療・治療してもらいたいか』を常に考えるべきであり、地域の皆さまが気楽に安心して受診いただけるような病院をめざしていく」と語る渡邉憲太朗院長に、病院の歴史や地域で果たすべき役割、診療の特徴などについて詳しく話を聞いた。(取材日2025年3月7日/情報更新日2025年6月17日)
病院の歴史や理念について教えてください。

当院は結核療養所の「長垂療養所」として1955年に診療がスタートしました。今でこそ西福岡病院という名前になりましたが、結核診療に携わってきたという歴史を引き継ぎ、呼吸器疾患を中心に幅広い診療に取り組んでいます。現在は介護老人保健施設を併設するケアミックス型の総合病院として高齢期の医療を強化しながら、緩和ケアまで対応しているところです。地域のかかりつけ医という特徴を持ちつつ、急性期から慢性期まで患者さんのさまざまなニーズにお応えできる病院になってきました。そこで掲げている私たちの理念は「納得と安心の医療」です。地方の民間病院ですから、まずは地域の方々に安心して受診していただけることが一番大切だと思います。医療人としては当たり前ですが、重要なのは患者さんの訴えに耳を傾け、真摯に対応すること。ですから「自分が治療される立場になった時にどうしてもらいたいか」を常に考えるようにしています。
地域医療においては、どのような役割を担っていますか?

当院の医療施設の規模と地理的立地条件を考えると、大きく3つの役割があると思います。1つは、地域の皆さまが紹介状なしでも、いつでも気楽に健康相談と治療が受けられるかかりつけ医としての役割。2つめは地域の総合病院としての役割です。とりわけ入院治療を要する高齢の患者さんの診療は民間病院の重要な役割です。新型コロナウイルス感染症のまん延以来、救急医療に対する私どもの意識が大きく変わりました。規模の大きい公的な基幹病院の負担が少しでも軽くなるように、救急車で搬送される患者の受け入れ要請に積極的に応じ、地域医療を維持しなければなりません。3つめは他の医療機関との連携・協力体制の強化です。基幹病院、当院のような民間病院、そして地域の開業の先生方と常に緊密に情報を交換し、患者さんに遅滞なく最良の医療を提供しなければなりません。西福岡病院は、いわば、地域医療のハブとしての役割を担っています。
診療の中心でもある呼吸器診療はいかがでしょうか?

在籍医師の3人に1人は呼吸器を専門にしていますから、慢性閉塞性肺疾患や喘息などあらゆる呼吸器疾患に対応できるというのは特徴の1つです。また結核病床を有する病院です。結核患者は減少していますが、結核病床を維持することは当院の大事な役割と認識しています。高齢者は呼吸器疾患だけに限らず、心臓病や糖尿病などの生活習慣病を併発することが多いため、1つの専門領域では対応することが難しくなっています。病院の規模は大きいとはいえませんが、当院はさまざまな専門領域の医師が在籍し、かつ、小回りの利く民間病院であり、診療科の連携もスムーズです。私どものような民間病院に在籍する日本呼吸器学会呼吸器専門医は自分たちが診断・治療してよい疾患と、より高度な医療機器を備えた大規模基幹病院に任せるべき疾患を冷静に見極めなければなりません。バトンタッチする時期が遅れることのないように常に基幹病院と緊密に連係しています。
婦人科診療については今後も強化されていくそうですね。

婦人科疾患の症状で悩んでおられる女性は潜在的に多いと考えられ、婦人科は診療ニーズの高い領域です。都会のレディースクリニックに比べ、郊外においては総合病院であっても婦人科を標榜している病院は多くありません。また女性医師がいないということで受診を控えていたというケースもあるのではないでしょうか。当院では2022年以来、女性の婦人科医師が常勤しています。また2025年4月からもう1人婦人科医師が加わり、当院婦人科は2人の常勤婦人科医師を擁する充実した診療科になりました。今後は外来診療だけではなく、婦人科手術を含む入院診療が可能になりました。当院のような規模の民間病院で2人常勤体制で婦人科診療を行っている医療機関はそれほど多くはありません。今後はオンライン診療なども積極的に活用しながら地域の皆さまのご要望に対応していきたいと考えています。
最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

結核療養所からスタートしたという歴史的背景があり、呼吸器疾患の診療には引き続き尽力していきますが、私どもは何よりもまず地域の皆さまのかかりつけ医でもあります。皆さまのあらゆる健康相談や診療に対応できる体制を整え、さまざまな領域の専門知識を有する医師が責任をもって診療させていただきます。一方、地域の総合病院としての役割も大きなものがあります。救急車で搬送される患者さんの数が年々増加しています。とりわけ高齢者の救急医療は西福岡病院に課せられた大きな社会的役割であると認識しています。毎年行われる入職者へのオリエンテーションの際に、いつも新人職員に伝えていることがあります。「自分が西福岡病院に入院した時に、どのように扱ってもらいたいかをいつも考えながら仕事に励んでください」と。地域の皆さまが安心して受診いただけるような病院をめざしてこれからも努力してまいります。

渡邉 憲太朗 院長
1976年九州大学医学部卒業。1982年九州大学大学院修了。1983年九州大学医学部胸部疾患研修施設助手。1984年国立療養所福岡東病院医員。1986年米国コーネル大学留学。1988年福岡大学病院講師。1999年米国アリゾナ州メイヨークリニック留学。2005年福岡大学教授。2019年医療法人西福岡病院院長、福岡大学名誉教授。専門は呼吸器内科学。