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医療法人公仁会 明石仁十病院

(兵庫県 明石市)

小澤 一之 理事長

最終更新日:2023/11/07

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亜急性・慢性期の医療をパッケージで提供

1964年から60年近くにわたりこの地域での診療を続ける「明石仁十病院」。東西に長い明石市の西寄りにあり、隣接する播磨町や稲美町、加古川市から訪れる患者も多い。地域の医療機関として各時代のニーズに応じた医療を実践する同院では、10年ほど前から「医療や介護を切れ目なく提供できる体制づくり」を進めてきた。亜急性や慢性期を過ごす患者には、外来と入院、異なる診療科、医療保険と介護保険、各種介護サービスなどさまざまな組織やスタッフが関与するが「そのセクショナリズムは医療側の都合でしかなく、患者さんやご家族の負担にもなっています」と小澤一之理事長。そこで同院では、医療側からも介護側からもアクセスできる電子カルテを導入し、職種や部門を越えてコミュニケーションを取れる雰囲気づくりにも注力。医療水準のレベルアップにも取り組んだ結果、「高度急性期病院も当院を信頼して患者さんを送り出してくれるようになりました」という。最近ではやや遠方の介護施設や患者家族からの相談も増え、新しい課題とも向き合う。(取材日2023年7月28日)

こちらの歩みや地域における役割についてご紹介ください。

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当院は1964年に現在の場所で開院し、私が5代目の院長・理事長になります。以前から主に亜急性期・慢性期における外来診療や入院治療、また小規模ですが在宅医療も行っていました。現在は149床のうち回復期リハビリテーション病棟が20床、医療療養病棟が100床で、高度急性期病院での治療を終えた患者さんを受け入れ、長期療養や在宅復帰につながる医療を提供しています。また2014年には在宅療養支援病院の施設基準を取得し、訪問診療や訪問看護・訪問リハビリなどを行うほか、介護部門として通所リハビリ、居宅介護支援事業所や訪問介護なども設けています。さらに2020年には在宅医療支援センター「ANHoC(アンホック)」を設立。亜急性期・慢性期の患者さんやご家族が必要とする医療や介護を、当法人の外来、在宅、入院をパッケージで切れ目なく提供できる体制づくりを進め、亜急性期・慢性期医療の課題解消に取り組んでいます。

亜急性、慢性期の課題とはどういうことですか?

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患者さんが急性期の症状と向き合う期間は、必ずしも長くありません。それよりも、病気と付き合いながら生活を続ける期間のほうがずっと長いのですね。高度急性期病院での入院日数が短縮化されていることもあり、私たちが担うべき役割も大きくなっています。ただ、このフェーズの医療・介護では複雑な縦割りが生じていて、患者さんやご家族の不便さにつながっていました。例えば医療と介護は異なる保険制度に基づくため、同じ事業所内であっても医療と介護でそれぞれに患者さんの情報を管理する必要があり、横の連携を阻害する要因になっています。特に訪問診療に訪問看護や各種介護サービスを組み合わせる必要がある在宅分野でその縦割りの弊害が目立ちやすいようです。患者さんやご家族はそれぞれの事業所に同じような説明を強いられるような場面がある一方で、医療・介護側も横の情報共有が不十分となりがちで、質の低下につながりやすいのが現状です。

では、こちらではどのように医療や介護を提供しているのですか?

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1つは電子カルテの共有です。設定と運用を工夫して、施設、部門、あるいは医療と介護を問わず全部門から同時にアクセスできるようにしました。このような使い方は珍しいと思います。モバイル端末でもアクセスできるクラウド型の電子カルテとなっていますが、地域に広く散って活動する在宅部門と病院本体の連動がスムースになりました。用語の問題も大切で、例えば医師があえて専門用語を減らす取り組みなどもあります。2024年には改装工事を経て在宅系各部門を病院内に集約化する予定で、リアルでもスタッフ間のコミュニケーションが増えるよう進めています。こういった地道な取り組みで診療科や部門、保険制度の垣根を取り払い、患者さんが被る不便さや不自由さを解消したい。「ここであれば必要な医療・介護サービスをパッケージでスムーズに提供してもらえる」という安心感につながるスタイルを作り上げていくことが、私たちのめざすところです。

高度急性期病院との連携にも力を入れています。

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私もこちらへ入職するまでは高度急性期医療を提供して、亜急性期・慢性期病院へ送り出す側でした。ですから、治療を頑張った患者さんを信頼できる環境へ引き継ぐ重要性は痛感しています。高度急性期病院と亜急性期・慢性期病院にミスマッチが大きいと、必要な医療が十分に継続されず短期間で高度急性期病院へ再入院してしまう、といったケースも出てきます。このため当院では、当然の話ではありますが医療の質そのものも重視しています。医師などスタッフを増員して対応できる診療科の幅を広げることもそうですし、最近で言えば感染症対策もそうかもしれません。近年、手洗いの重要性が広く認識されましたが、当院ではそれ以前からWHOが推奨する手指衛生に取り組み院内の薬剤耐性菌の検出率がごく低値で保たれるなど成果を上げていました。他にも多種多様な取り組みを重ね、高度急性期病院側との連携も一段と深まりました。

地域の方へのメッセージと、今後の展望をお聞かせください。

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ある診療科やサービスに特化するのではなく幅広くパッケージで、というスタイルは、例えばキーワードで検索しウェブで情報を集めるのが得意な方にはそのメリットが伝わりにくいかもしれません。ただ、現実には一つの疾病治療に対応するだけでは不十分なケースもあるものです。当院では脳神経や整形外科、呼吸器、消化器、糖尿病、泌尿器、耳鼻咽喉と幅広く専門の医師が連携して対応しており、かつ、多くの職種が同時に情報を共有しワンチームで対応できるところに強みがあります。特に患者さん側の状況により外来・入院・在宅と、場面や場所が変わったとしても対応し続けられる点を強調したいです。最近ではトータルな支援を必要とする患者さんやそのご家族、ケアマネジャーさんなどからのご相談が増えています。やや遠方からの相談も増えてきており新しい課題も感じていますが、常に質の高いサービスを提供し、地域で信頼される病院でありたいですね。

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小澤 一之 理事長

2002年京都大学医学部を卒業後、同附属病院耳鼻咽喉科や明石医療センター内科などで診療に従事。2012年より明石仁十病院で勤務し2019年に院長に就任、2021年より理事長を兼任。病院運営とともに耳鼻咽喉科と内科の診療も担当し、専門は摂食嚥下障害。既存のセクショナリズムを解消し、患者を中心に据えた亜急性・慢性期医療の実現に注力する。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医。

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