医療法人朗源会 おおくま病院
(兵庫県 尼崎市)
谷口 英治 院長
最終更新日:2025/10/31


二次救急にも対応する地域のかかりつけ病院
1941年に大阪市で外科医院として開設、戦後に兵庫県尼崎市に移転し、地域密着型の医療を提供し続けてきた「大隈病院」。2024年11月には阪神本線・尼崎駅からすぐの場所に移転し、「おおくま病院」と改称。地域包括ケア病床99床、療養病棟48床を備え、急性疾患から慢性疾患まで、幅広く診る医療体制を整えた。在宅療養支援病院として在宅医療の推進にも力を注ぐ同院だが、これまで培った急性期医療のノウハウを生かし、積極的な治療にも取り組んでいる。居心地の良いホテルライクの院内、入院透析のスタート、充実したリハビリテーション、病院給食など、患者に寄り添う医療の提供が、同院の大きな特徴だ。移転後は杭瀬にクリニックを新設し、新病院とシャトルバスでつなぐなど、「患者を置き去りにしない」取り組みにも注力。「病気を治すだけでなく、患者さんの心も癒す」の病院理念を掲げ、新たなエリアにおいても地域に愛される病院をめざす。そんな同院を率いるのは、消化器外科・外科を専門とする谷口英治院長。穏やかで優しい語り口が印象的な谷口院長に、同院の特徴や地域での役割、今後の展望について話を聞いた。(取材日2025年9月6日)
病院開設から新築移転までの沿革をお聞かせください。

1941年に初代・大隈義朗先生が大阪市内に「大隅外科」を開設。戦後、杭瀬の地に移り小さな診療所から再開。その後、大隈病院となり入院施設を設けるなど少しずつ増築を繰り返しながら、70年間地域を支える病院として愛されてきました。私が入職した2023年当初から、近隣の方々に非常に親しまれている病院だということを実感しています。以前は急性期病院として、がんの手術なども行っていましたが、国から地域包括ケアシステムの推進が打ち出されたことから、地域包括ケア病院へとかじを切りました。2024年11月には、病院施設の老朽化に伴い新築移転し、現在に至ります。ただ、杭瀬の町にはお年寄りが多く、移転によって通院が困難となることが予想されたために旧病院跡地近くに「おおくまクリニック」を新設して外来を開始。さらには、当院との間にシャトルバスを運行し、必要な治療やCT検査、MRI検査を受けやすい体制を整えました。
新病院になって変わったこと、逆に変わらないことは何でしょう?

当院の病棟構成は地域包括ケア病棟、療養型病棟合わせて147床となっています。移転後も基本的な診療のスタンスは変わらず、「病気を治すだけでなく、患者さんの心も癒す」という理念のもと質の高い医療の提供に努めています。急性期病院で高度な医療を受けたけれど、まだ帰宅は困難だという患者さんに対し、リハビリテーションと治療を提供する受け皿としての役割と、二次救急医療機関として急性期疾患に対応する2つの役割を担います。変化した点としては、入院透析ができる透析室の設置が挙げられます。透析については、同じ法人内に透析専門のクリニックがあり、通院できる方はそちらで治療を受け、通院が難しい方や車いすでの移動が大変な方には、当院に入院して透析を受けていただくことができます。また、全面ガラス張りで眺めの良いリハビリテーション室や天井の高いロビーなど、患者さんにリラックスして治療を受けていただける環境も整えました。
注力されている診療科について教えてください。

消化器内科を含めた総合内科では、できる限りなんでも診ることを心がけています。より高度な治療が必要な場合は、兵庫県立尼崎総合医療センターと連携してすぐに相談できる体制を整備。整形外科においては局所麻酔でできる手術を院内で行っており、同医療センターでの手術を含め、整形外科疾患の術後リハビリテーションにも力を入れています。また、形成外科の眼瞼下垂の手術にも外部から専門の先生に来ていただき対応しています。先ほどもお話ししましたが、開設当初から急性期医療に注力してきた病院ですので、地域包括ケア機能を担う病院でありながら、積極的に医療介入する点が大きな特徴です。また、移転とともに新しく導入したCTと、開放的なオープン型MRIは、開業医の先生方との共同利用というかたちにしています。患者さんは当院での初診料も必要なく、手続きが簡便なので、患者さんにとっても開業医の先生方にとってもメリットがあります。
こちらの病院の特徴や地域との関わりについて教えてください。

病院給食は、当院の特徴の一つです。この規模の病院としては多い十数人の管理栄養士が在籍しており、患者さん一人ひとりに好みや感想を聞いて、それぞれに合わせ工夫した病院食を院内で調理し提供しています。「おおくま御前」という特別献立や行事食もあり、検食では職員の評判も良く、私も機会があれば食べてみたいと思っています(笑)。また、新しいエリアでも地域に根づいた医療の提供をめざしており、新型コロナウイルスの感染拡大によって中断していた「おおくま健康教室」を再開しました。近隣の方々に集まっていただき、年に2~3回、健康に関するテーマで気楽にお話をさせていただいています。また、病院内のラウンジでは、ロビーコンサートを開催しています。そのご縁で、同院から尼崎の合奏団の方々のお手伝いに伺うこともあり、地域の方々との交流を深めています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

私は前職で外科医として救急や夜間の手術に携わってきました。そのため当院に着任した当初は、慢性期・回復期の病院ということで、寝たきりの患者さんを診ることが中心になると想像していました。ところが実際には、最期を看取るだけではなく、可能な限りの治療を積極的に行う方針で、「地域包括ケア病棟としてはかなり急性期寄りの病院」であることがわかりました。その分、医師も看護師もとても忙しく働いています。スタッフは、一人ひとりの患者さんを大切に、おごらず謙虚な心で、相手の立場に立った医療を提供しています。それは、大隈健英理事長をはじめ、先代の功勲を受けて引き継がれてきた当院の文化です。これからも、その伝統を守りながら、大規模病院の受け皿としての機能と、お年寄りの多いこの地域だからこそ、ちょっとした体調不良にも対応する「かかりつけ医」としての機能をバランス良くミックスしながら、地域貢献に尽力してまいります。

谷口 英治 院長
1985年信州大学医学部卒業後、大阪大学医学第一外科に入局。大阪大学では内視鏡外科学講座に所属して腹腔鏡下手術を中心とした低侵襲性治療の臨床と研究に従事。2001年大阪中央病院外科医長、大手前病院外科部長、同病院副院長を歴任。2023年に「大隈病院」に入職。2024年11月より現職。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会専門医、日本消化器病学会消化器病専門医。





