福本 亮 理事長

姫路市南条にある「小国病院」は、1904年の開院以来100年以上にわたって命の営みに携わってきた病院だ。高い出生率を誇る姫路市内で、多くの分娩を担う同院の特徴は、何よりも患者ファーストのその姿勢。姫路では実施する施設が少ないという無痛分娩や専門スタッフが行う胎児スクリーニングも患者に安心を与えるための取り組みの一つだ。理事長を務める福本亮先生は「女性の人生においてすべてのタイミングでサポートできる病院にしたい」と話す。長い歴史におごることなく、婦人科疾患への対応、産前・産後のサポート、検診に至るまで、あらゆる年代の女性の味方でいるべく進化を続ける、同院の特徴や思いを福本理事長にじっくり聞かせてもらった。（取材日2021年12月6日）

当院は、1904年に兵庫県福崎町山崎で開院したのが始まりです。1917年には姫路に移動し、以来100年以上にわたって姫路でお産に関わってまいりました。1992年には規模拡充のため現在の地に移り、現在は、病床数39床、産科・婦人科・内科・形成外科の病院として地域の女性の健康に貢献するべく尽力しております。おかげさまで、地域の皆さまには「出産といえば小国病院」と、温かい声を数多く頂けるようになり、生まれたお子さんが母となり、また当院での分娩を選択されることも多くなっております。出産という人生の大きな節目に当院を選んでいただけること、この姫路地域で命を紡いでいくことに携われることを、心より誇りに思っています。

全国でも高い出産率を維持する姫路市において、当院では2021年1月から2021年12月の間に971件の分娩があり、姫路市の分娩の多くを担っております。1人でも多くの女性の味方でありたいと、社会的ハイリスク、外国の人も積極的に受け入れており、複数の医師で安定した医療提供ができる体制を整えていますので、分娩予約を必要としていません。妊娠や出産は予想外のことが起こります。その点、当院は病院ですので、いつでもお困りのことがあれば対応いたしますので、心にとめておいていただければと思います。また産婦人科を専門とする複数の技師が在籍しているため、精密な胎児超音波スクリーニングも行っています。さまざまなバースプランにあわせて、希望があれば無痛分娩にも対応しており、2020年4月から2021年3月までの1年間で301件の無痛分娩を行いました。

当院は産科としてのイメージが強い病院ではありますが、悪性腫瘍を含めたすべての婦人科疾患に対応しています。検診にも特に力を入れており、全国でもまだ実施している医療機関が少ない乳がんと子宮がんの同日検診を行っています。昨年2020年4月から2021年3月末まで、子宮がん検診4182件、乳がん検診1099件実施いたしました。治療の必要があれば投薬治療はもちろん、腹腔鏡・子宮鏡手術にも対応しております。2020年4月から2021年3月末までは、腹腔鏡手術32件、子宮鏡手術39件を実施いたしました。さらに、中播磨、西播磨地区には産婦人科病院の数が少ないため、婦人科救急に対応しているのも当院の特徴です。昨今は高齢の方の骨盤脱の相談も増えています。今後も出産だけでなく、すべての年代の女性の健康を支える病院でありたいと考えています。

現在は新型コロナウイルス感染症流行の状況を踏まえ、一時的に中止しているのですが、診察中や入院中にお子さまをお預かりする託児サービスをご用意しております。核家族が増える中で、2人目、3人目の出産のハードルは上がっています。また、子育て中のお母さん方の健康管理は後回しになりがちなものです。女性のための病院であれば、そういった部分からサポートすることが大切だと思いますので、産前・産後のサポート含めて今後も取り組んでいきたいと思います。また、完璧にとはいきませんが、英語、中国語、ベトナム語、韓国語での受診にも対応しています。体調がすぐれない中で言葉の壁は大きなものです。受診することで少しでも気持ちが軽くなるよう、今後も言葉の面でもいろいろと対応策を考えていきたいですね。

女性の健康は、家庭の健康だと思います。にもかかわらず、多くの女性たちが日々の不調に目をつぶらざるを得ないのではないでしょうか？　私たちはこの地で積み重ねてきた歴史と経験をもとに、皆さんの健康を少しでも支えたいと考えています。妊娠・出産だけでなく、生理や更年期の相談、婦人科検診・治療など幅広い悩みに寄り添い、命を紡いでいくお手伝いをさせていただければうれしいです。また、形成外科にはレーザーを導入し、しみやあざ、入れ墨の除去術にも対応しています。皆さんが身も心も明るく、美しく、そして健康に日々を過ごすためにできることを、これからも考えていきたいと思います。新型コロナウイルス感染症流行が落ち着けば託児も再開し、若い人に向けた子宮がんワクチンや妊娠出産に関する教室も開催したいと計画も始めています。どうぞ今後とも変わらぬご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。