医療法人社団 勲章会 原泌尿器科病院
(兵庫県 神戸市中央区)
井上 貴昭 副院長
最終更新日:2025/01/16


結石治療と透析を強みに、地域医療を支える
1971年に開業した「原泌尿器科病院」は、42床の一般病床と54床の透析専用病床を有する神戸市の泌尿器科・腎臓内科を専門とする病院だ。結石治療と透析療法に特化し、患者のQOL(生活の質)を考慮した低侵襲な治療を提供することをモットーとしている。同院が力を入れているのは、前立腺肥大症に対する経尿道的水蒸気治療、体外衝撃波結石破砕術を用いた結石治療、54床のベッドが用意された透析治療や専門のスタッフによる栄養指導・服薬指導など。井上貴昭副院長は国内にとどまらずアジア諸国でも尿路内視鏡治療のインストラクターとして活動し、同院での海外からの留学生受け入れも積極的に行う国際派ドクター。今後の目標として、日本国内での尿路内視鏡の専門家育成を掲げる井上副院長に、同院での取り組みについて聞いた。(取材日2024年12月16日)
まずは、こちらの病院の特徴について教えてください。

当院は一般病床42床のほか透析専用の54床を有する泌尿器科の専門病院です。尿路結石症、排尿障害、性感染症などのほか、がん、前立腺肥大症、尿道狭窄症に対する内視鏡手術、緊急性を要する膀胱内出血や睾丸回転症の治療など、良性・悪性を問わずさまざまな泌尿器疾患に対応しています。また、腎臓病や慢性腎不全ではドクターはもとより薬剤師や管理栄養士ら多職種が連携して生活改善の指導も行っています。中でも私が専門とする尿路結石症の受診数は増加傾向にあり、年齢層も赤ちゃんから高齢者までと幅広く、近年は女性の患者さんも増えています。「患者さんとともに病気について考え、信念を持って真摯に医療を行うこと」を基本理念に、スタッフ一丸となって診療に取り組むととともに、先進機器の導入から送迎サービスまで、常に「質の高い医療サービス」の提供をめざした取り組みを行っています。
病院の強みはどういったところにありますか?

当院に在籍する6人のドクターはいずれも尿路内視鏡治療を専門とし、低侵襲の治療を提供しています。尿路結石症では多くの症例数を誇り、また、前立腺肥大症に対する「経尿道的水蒸気治療」も早期に導入し、実績を積み上げてきたことは当院の強みです。この経尿道的水蒸気治療は、尿路からカメラを挿入し、前立腺に内側から針を刺して103℃の水蒸気を放出し、肥大した組織の壊死・退縮を図る新しい治療法です。これまで1時間~4時間ほどかかっていた前立腺肥大症の手術が、この経尿道的水蒸気治療だと平均9分程度で終了し、1泊2日の入院でご帰宅いただけます。1~3ヵ月ほどかけて前立腺組織のタンパク変性を起こさせ壊死・退縮をめざす手法のため即効性はありませんが、合併症のリスクも少なく、高齢者のQOL、つまり生活の質向上に一役買う手術だと考えています。
診療で重視していること、心がけていることは何ですか?

当院は開腹手術が必要な悪性疾患を扱う病院ではないため、治療の目的のほとんどが「患者さんの生活の質を上げること」となります。例えば、結石が詰まって痛いという患者さんの痛みを取り除くことは大切ですが、結石を取る過程においても患者さんが苦しまないように、取った後も楽に過ごせるように努めています。それを実現するためには技術や工夫も重要ですが、研究を重ねながら患者さんから直接フィードバックをいただき、改善に向けて取り組まねばなりません。たくさん来られる患者さんを流れ作業で治療するのではなく、より良い医療が提供できるようその先を見据えて取り組んでいます。加えて、新しい医療機器をできるだけ早く導入し、先進の医療を提供することも大切です。泌尿器にフォーカスした機器にだけ予算を集中させることができるのは、腎臓と泌尿器に特化した当院ならではの強みだと考えます。
今後の展望を教えてください。

泌尿器科領域はとても広いため、キャリアを重ねるにつれより細分化されたサブスペシャリティーの教育に力を入れるべきだと考えています。当院に在籍する医師はすべて尿路内視鏡を専門としていますが、実はこの分野の専門家はまだまだ人材不足です。しかし世界的にもすでに確立されている分野ですので、今後は尿路内視鏡を専門とする後進の育成にも注力したいですね。現在、私は国内にとどまらずアジア諸国でも尿路内視鏡のインストラクターとして活動しており、当院では海外からの留学生を積極的に受け入れています。逆に海外に出ていけるような医師の教育にも取り組んでいきたいなと考えています。なお2025年11月には当院主催で、アジアの著名な先生方を招いて、尿路内視鏡治療の国際シンポジウムを開催する予定です。
読者へのメッセージをお願いいたします。

心筋梗塞、群発性頭痛とともに「三大激痛」に数えられる尿路結石症は、治療薬がない疾患です。激痛に七転八倒するような病気ですから、もし尿に異常がなかったとしても、人間ドックや職場の健康診断で尿潜血陽性が出た、尿路結石症の疑いがあると言われたら、尿路結石症が専門領域の泌尿器科を受診してください。まずは泌尿器科できっちりと診断を受けてから安心感を持って経過観察していただきたいですね。現在は診療科が細分化されており、患者さんご自身でも勉強いただかねばなりません。というのも、どこの医療機関でも一定の良い治療が受けられるというわけではないからです。しっかり調べて、ご自身の健康はご自身で守る必要性があります。尿路結石症や泌尿器科疾患に関しては、原泌尿器科病院にお任せください。しっかり診断し、当院では対応していない手術を要する疾患など必要があれば信頼できる病院または先生にご紹介させていただきます。

井上 貴昭 副院長
2003年関西医科大学卒業後、同大学の関連病院の泌尿器科で研鑽を積む。がん治療や腹腔鏡を用いた手術など多くの手術を行う中で、内視鏡を用いた手術に可能性を感じ研鑽を重ねる。2019年4月から現職。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。腰痛対策として2022年から筋トレに取り組み、2024年9月のボディコンテストにてフィジークマスターズ(40歳以上)部門2位、フィジーク新人(20~40代)部門6位を獲得。