宗教法人 神戸アドベンチスト病院
(兵庫県 神戸市北区)
森 経春 院長
最終更新日:2025/01/22
ライフステージに寄り添った医療を提供
神戸市北区に位置し、六甲山の美しい自然に囲まれた「宗教法人 神戸アドベンチスト病院」。1973年の開院以来、キリスト教の精神に基づいた「全人的医療」を掲げ、単に身体的な癒やしだけではなく、心の痛みにふれる医療の提供をめざしてきた。特に全人的ケアを必要とする緩和ケアの分野においては、1992年にホスピスを創設し、これまで多くの人の人生に寄り添ってきた。また開院以来「お産の病院」としても知られ、早くから和痛分娩も取り入れ、現在は体外受精などの不妊治療も行っている。また疾病を早くから予防するための健康づくりに対しても積極的に取り組んでいる。「人生のあらゆる状況とステージにおいて、地域の皆さまに貢献できる病院でありたい」と語る森経春院長に、同病院が担う役割や、地域医療への思い、将来の展望などさまざまな話を聞いた。(取材日2024年12月20日)
病院の成り立ち、地域での役割を教えてください。
当院は1973年に開院し、昨年50周年を迎えました。キリスト教プロテスタント教会の一派を母体とした医療機関となります。当時、神戸市北区は新興住宅地で医療機関が少なかったことから地域よりお声がけをいただき開院に至りました。単なる身体的な癒しだけではなく、「全人的癒しをめざして」をモットーに掲げています。開院当初の診療科は4つでしたが、現在は13の診療科と、緩和ケア病床21床を含む116の病床を備えています。開院当初からの産婦人科、次にホスピス医療が特徴的ですが、最近は救急医療や高齢化社会を見据えて在宅医療にも力を注ぐなど、時代の流れに合わせて発展してきました。予防医学から急性期医療に至るまで、そして誕生から終末期に至るまで、人生のあらゆる状況とステージにおいて、地域に貢献できればと願っております。
急性期病院としての役割も担っていらっしゃいますね。
神戸市二次救急としての役割に加えて、緊急心臓カテーテル治療を担う循環器救急輪番を担当しております。心筋梗塞のカテーテル治療や、心房細動のカテーテルアブレーション治療に早くから積極的な姿勢で取り組み、現在も数多く対応しています。加えて、睡眠時無呼吸症候群は不整脈など循環器疾患と関係が深いため、当院では睡眠時無呼吸症候群に特化した診療を行い、睡眠中の脳波の動きなどを細かに診る終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行っています。ちなみに睡眠時無呼吸症候群は日曜診療も行っているので、働き世代の患者さまでも通院しやすいかと思います。できる限り早い段階から疾病の予防につなげていきたいですね。今後は、近隣の病院が統合・移転を控えているということで、医療空白になるエリアをつくらないよう、当院が北神エリアの救急医療を担うべく尽力していきます。
「お産の病院」としても地域に貢献されていますね。
2代目の院長が産婦人科の医師だったこともあり、これまで多くの出産を手がけてきました。おかげさまで当院は「お産の病院」として地域に親しまれています。お産の形式は、和痛分娩も早い段階から取り入れてきました。妊婦さんやご家族には、自然分娩と和痛分娩それぞれの分娩形態における長所と短所をご理解いただいた上で、ご希望に沿ったお産ができるようにしています。近隣の済生会兵庫県病院は専門性の高い分娩対応を、当院は地域密着の通常分娩や和痛分娩に対応と、すみ分けをしています。また妊娠・出産以外でも、がんなどの腫瘍を診る婦人科、不妊治療、女性特有の心身にまつわる疾患の診療に対応しています。例えば更年期には微小血管狭心症が起こりやすいなど、女性特有の状況に循環器疾患が連動することも。さまざまなステージにおいて女性をサポートしていけるよう力を入れています。
早い時期にホスピスを設けられたとお聞きしています。
1992年にホスピス病棟が当院に開設されました。ホスピスは病気による苦痛を和らげることだけではなく、患者さまやそのご家族も含めて最期の時を「最もその人らしく」過ごせるようにスタッフがサポートしていくことを目的としています。そのため当院のホスピスでは、自分の歩んできた人生を振り返り、思いを言葉で残す精神的なケアを取り入れています。常勤の牧師であるチャプレンが患者さまの人生を書き取って記録に残すというような取り組みをしていますね。またボランティア犬の訪問やコンサートなどボランティアによる活動も積極的に取り入れています。最期をどう迎えたいかは一人ひとり異なります。それぞれの価値観を探りながら、医師、看護師、理学療法士、ソーシャルワーカー、チャプレン、管理栄養士などの多職種が連携。一つのチームとなって患者さま中心の医療を提供すべく取り組んでいます。
今後の展望と地域の方々へのメッセージをお願いします。
今後のさらなる高齢化を見据え、当院は医療と介護をつなぐハブとしての役割も果たしていく必要があると考えます。院内には地域包括ケア病棟を設け、急性期を経た患者さまの回復期ケアや、高齢者施設とのシームレスな連携などに今取り組んでいます。一方、「病気予防こそ究極の医療である」との信念のもと積極的な健康づくりを提唱。一般の方向けに、健康で生き生きした生活をより長く保つための知識と実践方法を学べる「健康寿命アカデミー」を開催しています。一年を通じて多様なプログラムを提供しており、毎年多くの方が参加してくださっています。また当院を支えるスタッフに関しては、院内の職員の教育に加えて、関連の高校や大学から学生を受け入れるなど、次世代の育成にも力を入れて取り組んでいます。今後は、2027年から2028年にかけて建て替えを予定しています。これからも地域の皆さまに貢献できる存在をめざして尽力していきます。
森 経春 院長
富山県出身。1985年広島大学医学部卒業。金沢大学医学部第1内科入局。富山市民病院、富山県立中央病院での臨床研修を経て、1986年心臓血管研究所付属病院へ。1988年神戸アドベンチスト病院内科。1997年UCLA研究員。2006年小倉記念病院循環器科。2015年より現職。日本内科学会認定総合内科専門医。日本循環器学会循環器専門医。