医療法人薫風会 佐野病院
(兵庫県 神戸市垂水区)
佐野 寧 院長
最終更新日:2026/01/28


進化を重ね高い専門性と地域医療の両立を
1888年に神戸中央区で開院し、130年以上の歴史を持つ「佐野病院」。戦禍で病院を失い診療所として再出発するなどの変遷を経て、1970年に広い施設用地を確保するため現在の場所に移転。以来、長きにわたり地域貢献を続ける民間病院だ。2006年に入職し、翌年4代目院長兼理事長に就任した佐野寧先生は、循環器病専門病院やがん専門病院で研鑽を積み、専門の大腸がん治療では厚生労働省科学研究所の班長として活動した経歴も持つ。院長就任後は、自らの専門領域を生かした消化器部門、消化器がん部門に加え、婦人科の切らない筋腫治療部門を設けた。2011年からは通称「佐野塾」として、消化器内視鏡の診断・治療のトレーニングによる後進育成に注力している。一方で、院内に「低侵襲内視鏡診断研究所」を立ち上げ、技術開発や臨床応用などの研究にも注力している。今後は自由診療も取り入れ、さらなる進展と革新をめざすという同院。曽祖父時代からの地域医療を受け継ぎ、広い視野と専門性で新たな領域にもチャレンジする佐野院長に、同院の歴史や診療の特徴、人材育成への取り組みや今後の展望など幅広く話を聞いた。(取材日2025年12月19日)
病院の成り立ちと特色について教えてください。

私の曽祖父である佐野誉が、現在の東京大学医学部の前身である東京医学学校で学び、先進の医療を広める使命のもと、1888年に設立した病院が当院のルーツです。その後、移転や時代の変遷を重ねながら、130年以上にわたり地域医療に貢献してきました。私は2006年に入職し、翌年、4代目院長に就任。入職直前まで東京の国立がん研究センターに勤務し、大腸がんを専門に厚生労働省研究班の班長を務めた経験を生かし、「神戸で先進のがん医療を提供する」という使命を胸に診療に取り組んできました。現在は、消化器部門、消化器がん部門、婦人科の切らない筋腫治療部門の3本柱を軸に、多くの症例を重ねています。大学病院と同レベルの診療と治療を提供できる体制が当院の強みだと自負しています。近年は、日本製の手術支援ロボットを導入し、直腸がんと結腸がんの腹腔鏡手術の精度向上に役立てています。今後は婦人科領域での活用も視野に入れています。
3本柱となっている各部門について詳しく教えてください。

消化器部門においては、内視鏡検査を数多く実施しています。また、消化器がん部門においても、手術支援ロボットの導入により腹腔鏡手術の数を着実に伸ばしています。婦人科の切らない筋腫治療部門では、腹部を切らない子宮筋腫手術を提供。膣から内視鏡を挿入し電気メスで筋腫を切る手術で、体に大きな傷を残さず翌日退院も可能です。担当する井上滋夫先生は、この領域のエキスパートです。「子宮全摘しかないと言われた」という患者さんなどが全国から来られています。さらに「井上先生の技術を学びたい」という志を持つ中平理恵先生が着任し、婦人科は2人体制へ。外来診療やがん検診から腹腔鏡治療まで、診療の幅を一層拡充しています。中平先生は形成外科の医師として美容医療に携わってきた経験も有しており、その知見を生かした自由診療も開始する予定です。
自由診療ではどのようなメニューに対応されていくのですか?

中平先生は、出産後に損傷を受けた膣の形成手術など、婦人科にも精通していなければアプローチしにくい領域に形成手術で対応してこられました。当院では、レーザーを用いた施術やボツリヌス毒素製剤注射などを順次取り入れていく予定です。また、私がスポーツ医学について専門的に学んだ経験があることから、院内にスポーツジムを開設し、メディカルダイエットや美容目的のパーソナルトレーニングを展開していきたいと考えています。病院には管理栄養士や理学療法士、医師や看護師が常駐していますから、万が一の際にも迅速な対応が可能です。整形外科の理学療法は、保険診療の時間制限により十分に行えないケースもありますが、自費でも利用できる施設を設けることで、リハビリテーションの継続が可能となります。病院の機能や役割は多様ですが、当院は検診や美容を通じて、健康な方も「楽しい」と感じられる場でありたいと思います。
ドクターの教育体制の充実も図られているそうですね。

2011年に開始した消化器内視鏡診断・治療トレーニングは、通称「佐野塾」と呼ばれており、現在11期生を迎え、トレーニングを終えた医師は約150人にのぼります。内視鏡を扱う医師の教育は大学病院や市中病院でも求められており、各病院に必ずしも指導できるエキスパートがいるとも限りません。教育内容の均一化が求められる一方で、教授や現場の医師は多忙で教育に十分な時間を割きにくいのが現状です。そこで、「佐野塾」では、内視鏡に携わる医師の基礎教育を2ヵ月に1度、年に6回開催。体系的な教育を継続的に提供しています。現在では、初期の受講者ががん専門病院に勤務するほか、全国各地で内視鏡の教育にも携わっています。近隣の病院からも受講者が来られますね。この経験を踏まえ、院外でも消化器内視鏡領域における教育トレーニングの標準化プロジェクトに携わっています。
最後に、今後の展望についてお聞かせください。

当院は、これまでの歴史の中で培ってきた地域医療を大切にしながら、高齢者の胃炎や感染症などのフォロー、拠点病院での治療後を支える受け皿としての役割を担っていきたいと考えています。また、がん治療後には緩和ケアが必要となるケースも多く、この分野は引き続き重点的に取り組んでいきたい領域です。その上で、低侵襲ながん治療を含む3本の柱は維持していきたいと考えています。一方で、高齢化や少子化の進行に加え、新型コロナウイルス感染症の流行を経た現在の医療は、10年前の想定から大きく変化しています。病院があらゆる医療を一律に担う時代は、すでに過ぎつつあるのではないでしょうか。これからは「病気にならないこと」がより重要になり、検診や予防医学による健康維持、エイジングケアの視点も欠かせません。そうした分野にも積極的に取り組みながら、地域の人たちが楽しく集える、アットホームな病院であり続けたいと思います。

佐野 寧 院長
1991年関西医科大学卒業後、兵庫県立姫路循環器病センターや秋田赤十字病院、国立がんセンター東病院などで研鑽を積む。専門の大腸がん治療では、厚生労働科学研究班の班長を務め、2006年佐野病院に入職、2007年より現職。技術開発や臨床応用を目的に「低侵襲内視鏡診断治療研究所」を設立し、低侵襲治療を追究する。内視鏡分野において複数の専門書を共著として執筆・刊行。日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。





