社会医療法人社団 正峰会 神戸大山病院
(兵庫県 神戸市兵庫区)
福田 幾夫 病院長
最終更新日:2024/11/28
地域に根差した中核病院
地域の医療機関、介護施設などと連携し、総合的に多角的な医療サービスを提供している「神戸大山病院」は、神戸市を中心に24時間365日体制で急性期医療病院としての役割を果たしながら、セカンドオピニオン、地域支援などさまざまなニーズに対応している。急性期病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、緩和ケア病棟があるケアミックス型病院で、病期に応じた医療を提供。開院当初から「断らない医療」を合言葉に、入院治療から在宅医療まで、医療・介護・福祉すべてを統合した地域包括ケアシステムを構築し、地域の患者のニーズに幅広く応え続けている。現在は末梢血管を中心とした専門治療を行う血管外科と連携しながら行われる人工透析などに注力する同院の福田幾夫病院長に話を聞いた。(取材日2024年10月16日)
まずは、貴院の成り立ちや歴史、地域での役割を教えてください。
1993年に正峰会グループの理事長・大山先生が、地元の方々が安心して暮らせる医療・介護体制の必要性を感じ、生まれ育った故郷に貢献したいとの思いから、現在の大山記念病院を開院したのが法人としてのスタートです。当院は2013年に同法人内の旧佑康病院を継承し、2019年には新病院へ移転。現在は地域の急性期病院としての役割に加え、回復期、生活期まで一貫してシームレスな医療サービスを提供し続けることを使命とし、身体機能の改善だけでなく、日常の生活や社会復帰のための訓練としての重点的なリハビリの提供に努めています。また、急性期疾患を繰り返す方や一定の治療が終了した方たちの受け皿として、在宅・社会復帰への支援を行い、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けていくために包括的にアプローチします。
特に力を入れているという血管外科について教えてください。
当院の血管外科では主に末梢血管を中心に取り扱っており、足の静脈が太くなりこぶ状に浮き出て、炎症・むくみ・皮膚の変色などを引き起こす下肢静脈瘤、足の血管が詰まり血流が悪くなる閉塞性動脈硬化症などの治療にも力を入れています。特に下肢静脈瘤は長時間の立ち仕事を行っている女性、また妊娠を契機に起こることもある病気です。当院の血管外科に在籍する女性医師は、非常にこまやかな気遣いをしながら手術および術後のケアに携わってくれています。また糖尿病、動脈硬化、高コレステロール、高血圧などの方は、足の血の流れが悪くなった状態になると、小さな足の傷が広がり皮膚に潰瘍ができてしまうといったリスクが高まります。それらを予防、あるいは起こった後の対応として「フットケア」にも取り組んでいるのが特色です。なお当院では乳腺外科も開設しており、乳がんや子宮がんなど各手術後に起こるリンパ浮腫の治療も行っています。
透析外科と血管外科が連携して治療にあたっているそうですね。
人工透析が必要かつ合併症がある方は、病気が進行しないよう心臓や血管の定期検査を行っています。また透析に必要なシャントのトラブルも少なくありませんので、超音波でシャントの血管を定期的に検査しているのが当院の特長です。技師が非常に細かく評価しており、血流の低下や血栓などが見つかった場合は早期に血管内治療を行い、カテーテルで血管の狭いところの拡張や血栓で詰まっているところの除去を図ったりしています。場合によっては血管外科がシャントを作り直すのですが、さまざまな手法での手術が可能ですので、できる限り患者さんの負担が少ないような形で対応しています。他院でシャントの血管のトラブルがあった際も、当院であれば入院しながら透析ができ、シャントが問題なく使えるようになるまでの透析も可能です。患者さんの多くは近隣にお住まいの方ですので、巡回バスの送迎も行っています。
麻酔科・ペインクリニックについてはいかがですか。
痛みの治療は飲み薬で対応するのが基本ですが、腎機能の低下などの副作用や胃をはじめとした消化器への負担が懸念されます。水痘ウイルスに感染後、ウイルスが長い間潜んでいて、神経に沿って出てくる帯状疱疹は非常に強い神経痛が出るのですが、強い薬であるがゆえ副作用のリスクがあります。そこで神経の根元に麻酔薬を打ち、神経を麻痺させることによって痛みのコントロールを図ることをしています。また神経ブロック注射についても温熱で神経を押さえて痛みのコントロールを図るという新しい医療機器も導入しました。腰の変形が起こっていて飲み薬では痛みが和らぎにくいという患者さんにも対応できます。また当院には末期のがん患者さんの最期の治療を担当する病院として緩和ケア病棟もありますから、さまざまなお薬を組み合わせながら、がん患者さんの痛みを緩和するための治療をご提供しています。
今後の展望と地域の方々へのメッセージをお願いします。
高齢化社会では、急性期医療だけでなく介護やケアを中心とした医療が重要になると考えています。当院は高度急性期病院よりも長いスパンで、しかし救急も含めレベルの高い専門医療を提供していますし、当法人の有す介護施設などとの連携もスムーズです。高齢者は複合的に疾患をお持ちの方もおられますので、各診療科の医師や多職種が連携しながら医療とケアをトータルで行い、治療・手術やリハビリを終えた後は安心してご自宅や施設にお戻りいただけるよう、職員一丸となってサポートをしていきます。また当法人内の施設の方々の急性期医療をしっかりと担っていくのも当院の使命の一つです。当病院は地域の皆さんに喜んでいただける医療を提供するという姿勢で臨んでいます。当院の特徴は、保険診療を提供する“一般的な病院”です。何かお困り事や治療上の悩み事などありましたら、お気軽に門戸をたたいてください。
福田 幾夫 病院長
1979年千葉大学医学部卒業。筑波メディカルセンター病院の立ち上げに参加後、弘前大学医学部外科学第一講座(現・胸部心臓血管外科学講座)教授、同大医学部附属病院副病院長、ドイツ・フライブルグ大学、同エルランゲン大学客員教授、吹田徳洲会病院心臓血管センター長、弘前大学名誉教授。大阪大学心臓血管外科招聘教授、吉川病院地域医療推進センター顧問などを経て、神戸大山病院血管外科部長に就任。2024年より現職。