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医療法人社団大有会 井上病院

(兵庫県 神戸市兵庫区)

藤塚 宜功 院長

最終更新日:2022/09/22

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わかりやすい説明が信頼関係への第一歩

神戸高速南北線・湊川駅から山手幹線沿いに西へ向かうと、「井上病院」が見えてくる。療養病床56床を有し、地域に根差した慢性期病院として、20年以上診療を重ねてきた。現在は外来診療と入院治療を2つの柱に掲げ、「気がかりなことを最初に相談できる病院」、そして「家族を安心して任せられる病院」を実践している。2013年から院長を務める藤塚宜功先生は、急逝した前理事長の後を継ぐかたちで着任。当初は迷いもあったというが、信頼できるスタッフとともに今日の体制をつくり上げてきた。病院全体の診療を統括し日々多忙に過ごす藤塚院長だが、最も大事にしているのは患者、家族と信頼関係を築くこと。特に入院前には、必ず説明の時間を確保する。「医師にわかりやすくしっかりとした説明力があれば、患者さんやご家族にきちんと理解していただけますし、それが信頼関係へとつながるのです」という藤塚院長の誠実な姿勢は、医療を受ける側の安心感や満足度まで連なっていくだろう。取材では地域の病院ならではの役割を重視し、その中でより質の高い医療をめざす病院運営について、詳しく話を聞いた。
(取材日2022年7月21日)

最初に、こちらの歩みと現在の診療内容をご紹介ください。

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当院は2001年に先代の理事長である井上謙次郎先生が創設しました。井上先生は妻の父で、住民の方々の健康に寄り添う医療を提供すべく、介護との連携も含め法人を拡充しましたが、2013年に急逝されました。私は当時、関東の大学付属病院などで勤務していましたが、急きょこちらの院長に就任、今日に至っています。現在の診療内容ですが、当院の近隣でも高齢化が進行しています。そこで外来では内科や整形外科を中心に「どんな症状でもまずは診る」ようにして、当院で対応が難しい症状は早めに急性期病院へとつなげる、いわば地域医療でのゲートキーパーをめざしています。また入院に関しては、当院は医療療養型の病院であり、慢性期の中・長期的な医療を提供しています。近くにある川崎病院をはじめ近隣の病院とは密な連携関係があり、急性期の患者さんの治療依頼や退院された患者さんの受け入れなど、相互に協力しています。

外来診療の特徴を教えてください。

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内科の外来では幅広い症状に対応しています。私の専門である消化器内科では胃など上部消化管の内視鏡検査など専門性のある診療も可能で、ご高齢の方に加え、健康診断などで異常を指摘された働き盛り世代の患者さんも来られています。生活習慣病の入り口にいるような方では、すぐに薬物治療を始めるのではなくまず生活習慣の見直しをお勧めし、病気の進行をなるべく遅らせるように努めます。患者さんは自覚症状がない場合が多いので、今から改善に向けて取り組むことが今後どのように影響するのか、ご理解いただけるように説明しますし、管理栄養士が食事の指導なども行います。胃カメラの検査はもちろん、内視鏡検査では鼻からカメラを入れる経鼻内視鏡を導入し、苦痛の少ない検査を心がけています。ピロリ菌の検査や除菌治療も行っています。ほかには、ご高齢の患者さんからのご希望が多い整形外科の診察日を設けたり、ワクチン接種にも対応したりしています。

入院診療の特徴をお聞かせください。

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医療療養型の病院ですので、急性期病院で入院治療を終え、さらに医療的なケアが必要な高齢患者さんが主に入院されています。最近は肺炎の治療後で、経口摂取の難しい方が多いですね。このような場合、胃ろうからの経腸栄養か静脈から高カロリー輸液の点滴が行われますが、近年では胃ろうにネガティブな印象が強く、ご家族は高カロリーの点滴を希望されることが非常に増えています。高カロリー輸液での栄養維持には限界もありますが、当院では長期間治療が継続できるよう手を尽くしています。ただしこうした患者さんは寝たきりの方も多いので、理学療法士が筋力低下や関節拘縮を予防していくリハビリがとても重要になります。経口摂取や歩行が再開できた患者さんに対しては、言語聴覚士が嚥下のリハビリなども行って、施設などへの復帰をめざします。一方で、残念ながら食事が再開できない方も、ご希望に応じて最期までこちらで治療させていただきます。

診療や病院運営では、どのようなことを重視されていますか?

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「患者さんやご家族に、いかに病状や治療内容をご理解いただくか」。ここを非常に大事にしています。例えば入院患者さんでは、ご家族には前もって高カロリー輸液の点滴のデメリットや予想される経過までお伝えしておかないと、急変があった際に動揺されますし、トラブルにもなる可能性もあります。それから、説明の際には、平易な言葉とかみ砕いた表現を意識しています。医療の現場では、説明して一見ご理解いただけたようでも、後から「よくわからなかった」と言われることが多いです。ただこれは、患者さんやご家族の理解力が乏しいというより、説明する医療者の説明力が乏しいからだと私は考えています。ですので、入院前にはご家族と必ず30分から1時間ほどの面談の時間をとり、急性期病院での治療内容の振り返りや、当院での治療方針、使えるお薬などをじっくりとご説明し、会話の中で相互に関係性を構築しながらご信頼いただけるように努めています。

地域に根差す病院として、丁寧な対応を大事にされていますね。

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地域の方の身近な医療機関として、医療技術やホスピタリティーの向上に努めています。例えば高カロリー輸液の点滴では点滴経路からの感染がしばしば問題になりますが、当院では各部署が以前から自発的な動きをしてくれており、徹底した感染症対策で長期投与を支えています。食事ができない高齢患者さんの高カロリー輸液の点滴は今後も一定のニーズがあると思いますので、安全で質の高い診療を目標に今後も継続していきたいですね。新型コロナウイルス感染症に対しては、当院には抵抗力の低下した入院患者さんも多く、院内感染は必ず避けなければなりません。そのため、ご家族にはオンライン面会をお願いしており、発熱のある患者さんの検査や診察も建物外で行っています。これも地域の医療を少しでも支えたいという思いからですのでご理解いただければ幸いです。今後は外来のほか訪問診療なども拡充しながら、地域での役割を担っていきたいと考えています。

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藤塚 宜功 院長

1996年東邦大学医学部卒業。同大学医学部付属大森病院消化器内科にて診療経験を積み、2008年より同大学消化器内科で助教を務める。2010年より東海中央病院消化器内科にて勤務、その後義父の急逝を受け2013年から井上病院院長に就任、現在に至る。日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。

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