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医療法人康雄会 西病院

(兵庫県 神戸市灘区)

西 昂 理事長

最終更新日:2020/10/21

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予防から介護まで一生をサポートする

神戸市灘区にある「西病院」は、開院より60年以上にわたって、地域医療において大きな役割を果たしている病院だ。兵庫県の救急告示医療機関として24時間救急受付をしている他、地域住民へ向けた質の高い医療の提供に努めている同院だが、阪神・淡路大震災の際には病院のほとんどが倒壊するほどの甚大な被害を受けたという。情報や交通も遮断された状況の中でも、診療を続けたという西昂理事長が感じた人命の重さ。その思いを胸に、現在は医療だけでなく福祉社会への参画にも努める。「行き場のない人をつくらない」ために日々奮闘している西理事長が思い描く、医療の在り方や未来について話を聞かせてもらった。(取材日2020年10月2日)

最初に貴院の成り立ちについて、お聞かせください。

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当院は1954年に外科系の診療所として、私の父が「西外科病院」を開院したことから始まりました。そこから消化器外科病院として私がバトンを受け継ぎ、地域の皆さまに先進的な医療サービスを提供すべく日々努めてまいりました。ところが阪神・淡路大震災時に被災し、病院は75%以上が損壊、医療機器もすべて破損してしまいました。未曾有の事態に陥り、甚大な被害を受けた街並み、多くの傷ついた人々を目にした時の感情は、一生忘れることができないほどのものでした。目の前に広がる悪夢のような光景の中、必死に動きながらも、それまで自分がめざしていた病院ではできることが限られてしまうことを痛感し、これまでとは発想を変え、方針を転換することを決断しました。現在は従来からの高度医療技術の実践に努めることに加え、予防から介護まで一生をサポートできる医療福祉サービスを提供すべく尽力しています。

貴院の特徴を教えてください。

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「すばる医療・福祉グループ」の一員として、三田市にある特別養護老人ホームを始めとする5つの介護施設、訪問看護ステーション、リハビリテーション病院、人間ドック専門クリニック、美容形成・内科クリニックと連携しながら診療していることです。被災し、病院が全壊した際に一番大変だと感じたのは、入院患者さまの安全を確保することでした。病院が機能しなくなったからといって、入院しているすべての方々が、安心できる場所にいつでも簡単に身を寄せられるわけではありません。実際に、道や情報が遮断された中で、患者さまを守る難しさを体感しました。私たちは医療機関として、一人でも多くの人々の命、健康を守っていくことが使命だと考えています。そこで、有事の際に一人でも多くの方々の命や健康を守るために、助け合える場所を複数持ち、常にグループ内で共助できるような体制を整えています。

地域の中で果たす役割についてはどのようにお考えですか?

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高齢化社会が進んでいる中で、医療資源をどう使うかは、すべての人にとって大きな課題だと考えています。しかし、医療の仕組みは常に変化するため、どのように病院を利用すればいいか非常にわかりにくくなっているようにも感じます。そこで、われわれのような地域の病院は、近隣の診療所と病院設備を共有する病診連携はもちろん、公的病院をはじめとする、高度急性期病院や長期療養型病院ともしっかりと連携していくことが大切であると考えています。例えば、緊急時は命を救うためにも高度医療が必要となります。それぞれの病院が専門性を持って医療を提供していますので、そこに確実につないでいくことが大切です。そして、緊急時を脱すれば、術後の管理やリハビリテーションなども含めて、日常に戻ることを支えていくための対応が必要になる。病院と病院、病院と診療所といった具合に、医療機関の架け橋になることもわれわれの重要な役割だと考えています。

先生がめざす医療とはどのようなものですか?

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「行くところがない人」をつくらないことですね。人は生きていれば誰でも年をとります。年をとれば、体調を崩しやすくなる。それは生きている以上仕方のないことなので、大切なのは「その時に安心できる」ということじゃないかと思います。病気になっても安心して診てもらえる。一人で暮らすことが難しくなれば、助けてくれる場所がある。必要な手術を受けることができる。リハビリテーションを通じて機能回復につなげ、日常生活に戻ることができる。入院ではなく家で過ごしたければ、家で療養することができる。そういった「安心」を提供することが医療機関にとって大切なことじゃないかと思います。高度な医療を提供することはもちろん必要。でもそれだけではなく、患者さんが困っていることはなんだろう? と考え続けなくてはいけません。

最後に、今後の展望や地域の人へのメッセージをお願いします。

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震災で甚大な被害を受けたこの街も美しく整い、活気が戻ってきました。生まれ変わった街の中で、私たちが願うのは、変わらずに地域の皆さまの健康に寄与していくことです。検診で病気を予防し、発病してしまったら適切な治療を受け、リハビリテーションを経て安心できる場所へ帰る。そのすべての段階で、皆さまに安心できる医療を提供することがわれわれの義務だと考えています。西病院としてはもちろんのこと、グループ内でも常に助け合いながら、「皆さんにとって良い医療、介護サービスとはなんだろう?」ということを追求し続けたいと思います。今後も、この街とともに歩んできた歴史を裏切ることなく、地域社会に貢献できるよう努力していきます。

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西 昂 理事長

1971年東京医科大学卒業。神戸大学医学部附属病院第一外科勤務を経て、同院の前身である西外科胃腸科病院副院長に就任。1986年に西病院院長となる。現在は、医療法人康雄会理事長とすばる医療・福祉グループ会長を兼任。全日本病院協会常任理事も務めている。日本外科学会外科専門医。

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