医療法人 昭生病院
(兵庫県 神戸市灘区)
和田 義孝 院長
最終更新日:2023/11/14
診療内容を広げ地域や患者に寄り添う病院へ
神戸大学や鶴甲団地に隣接し、六甲山麓の緑に抱かれた「昭生病院」。天気のよい日には最上階の病室から、遠く紀伊水道まで眺望できる。昭和初期から循環器の専門病院として歴史を重ねてきた同院は現在、ケアミックス型の病床構成で地域に密着した医療の提供をめざしている。内科疾患や循環器疾患、糖尿病では検査・診断を含めた初期治療や、慢性期管理に幅広く対応。2次救急の受け入れも行う。また和田義孝院長が専門とする泌尿器・腎疾患では一般的な治療に加え急性期の処置にも対応するほか、人工透析にも注力。通院透析はもちろん、合併症をもつ患者や難症例での入院透析も行えることが強みだという。「患者さんに寄り添うケア」を大切にする同院では訪問看護も実施しており、将来的には訪問介護の再開も検討している。「入院と在宅のいずれかにこだわるのではなく、各患者さんに寄り添い、病状や生活に応じた治療や療養を提供していきたいですね」と話す和田院長に、同院の歩みや現在の診療内容、地域との関わりについても詳しく聞いた。(取材日2023年8月25日)
かつては循環器の専門病院であったと伺いました。
当院は、昭和初期に王子公園の西側で、当時は珍しかった循環器の専門病院として診療を開始しました。当時は、循環器疾患の患者さんがかなり遠方からも来られていて、現在まで通院してくださっている方もいますよ。1983年に病院機能を現在の場所へ移転してからは医療ニーズの変遷に対応を重ね、現在は一般病床20床、障害者病床34床、医療療養病床49床というケアミックス型の編成になっています。入院透析を行っていることもあり、阪神間の急性期病院や介護・福祉施設と連携しながら、入院患者さんをお引き受けしています。また、外来では平日には午前も午後も診療を行っていて、曜日によって異なりますが内科、外科、循環器、消化器、糖尿病、循環器疾患の検査や初期治療、慢性期の管理など、地域の方に向けた医療の提供に取り組んでいます。訪問看護も実施しており、将来的には急性期から在宅まで対応できる、地域のかかりつけ病院をめざしています。
地域の病院ならではの診療や取り組みはありますか?
当院の東側に広がる鶴甲団地には現在クリニックがなく、地域内の医療機関は当院のみです。ですから、風邪や腹痛などの日常的な症状があったり、生活習慣病が気になるときに気軽に頼っていただけるよう、内科をはじめ幅広い診療科で初期診療を行っています。同時に、病院として専門的な検査設備を備えていますので、病気の発見や早期の確定診断にもつなげていきたいですね。通院患者さんに多い循環器や糖尿病では診断や薬物治療が中心で、進行したり外科的な治療が必要になれば近隣の急性期病院にご紹介しますが、透析が必要であれば当院で引き続きサポートさせていただけます。当院の周囲には高低差がありますので、現在は六甲道駅や六甲駅、また鶴甲団地内から送迎車を運行しています。また、鶴甲団地で地域の方に向けた健康セミナーや地域医療セミナーを定期的に実施して、病気の治療や予防、食生活などに関する情報提供にも力を入れています。
人工透析や腎・泌尿器疾患では専門的な対応も可能です。
血液透析を実施しており、外来では阪神間の高度急性期病院で透析導入をされた後、通院透析が必要な灘区の患者さんが多いですね。もちろん当院でも透析導入は可能ですし、灘区内でしたら送迎を実施しています。また、合併症や褥瘡があったり人工呼吸器などの医療的な補助が必要で、他院では受け入れが難しい患者さんについても、当院では入院透析でできる限り対応させてもらっています。透析室には大きな窓があって豊かな緑が目に入りますので、非常に良い環境で過ごしていただけると思います。それから腎・泌尿器疾患については、他疾患で通院中の患者さんでの前立腺肥大症や排尿障害が中心ですが、外部の病院からのご依頼で尿道損傷の処置を行う機会は多いですし、尿管狭窄においては尿管ステント、あるいは腎臓や膀胱を直接体外をつなぐ腎ろうや膀胱ろうの設置や管理も対応可能です。こういった専門的な処置が院内で完結できるのは、大きなメリットですね。
診療や療養において大事にしていることは?
当院では以前から「真心・謙虚」をモットーに掲げており、人の尊厳を大事にしながら、思いやりのある医療看護やケアを提供したいと考えています。同院が現在の場所に移転したのは、「循環器疾患のある患者さんに、緑豊かな環境の良い場所で療養してほしい」という思いがあったから、と聞いています。世間の医療ニーズや当院の診療内容は当時から大きく変化していますが、患者さんに寄り添う姿勢は当時も今も変わりません。実際、当院にはホスピス病棟はないものの、がんなどの緩和ケアにも力を入れていて、患者さんにはホスピスで過ごすのと同等にご満足いただけているようです。今後は在宅部門もより充実させたいと考えていますが、在宅療養と入院治療のどちらかを強く推奨するということではなく、個々の患者さんに適した療養の方法というのを考え、提供できる体制を整えていきたいですね。
今後の展望と、地域の方へのメッセージをお願いします。
年配の方には「循環器の病院」というイメージもある当院ですが、現在は地域の方に向けた一般的な疾患の外来診療、糖尿病など生活習慣病の管理や泌尿器科領域に力を入れていますし、人工透析では合併症などの難症例にも対応しています。また病院ですから、エックス線検査やCT、超音波検査など初期の診断に必要な検査は一通り行えますし、胃や大腸の内視鏡検査や、内視鏡を奥まで入れずに検査ができる大腸CT、精度の高い骨密度検査も実施しています。泌尿器科ではさらに造影検査や膀胱鏡も行いながら、病気の早期発見や早期の確定診断をめざします。阪神間では高度急性期病院は多いのですが、亜急性期や回復期、あるいは長期療養が必要な患者さんにとっては、地域で安心して過すための医療環境も重要です。地域の方や近隣の医療機関に「昭生病院が近くにあって良かった」と思ってもらえるような病院づくりを、今後も進めていきたいと考えています。
和田 義孝 院長
1994年神戸大学医学部卒業。同泌尿器科入局。市中病院での研修を経て1997年より同大学院へ進み、1998年には米国ヴァージニア大学へ留学、泌尿器がんの遺伝子治療を研究。2001年に大学院を修了後、洲本市のクリニックで人工透析の診療経験を積む。その後神戸市や姫路市での病院勤務を経て2015年より昭生病院の4代目院長に就任。ライフワークとしてがんの先進的な治療にも取り組む。